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降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


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19/59

19

聚義庁の中で、最初に音を立てたのは、人ではなかった。

灯の芯が、わずかに崩れたのである。

火が一瞬だけ低くなり、

すぐに、元の高さに戻った。

それだけのことだった。

だが、その一瞬に、

この場にいる全員の呼吸が、同じ深さになった。

呉用は、その変化を見逃さなかった。

彼は宋江を見た。

宋江は、まだ何も言わない。

だが、沈黙の質が変わっていた。

それは、閉じた沈黙ではなかった。

開かれる直前の沈黙であった。

李逵が、耐えきれずに顔を上げた。

「兄貴――」

その声は、以前より低かった。

怒りでもなく、焦りでもない。

確認する声だった。

宋江は、すぐには答えなかった。

李逵は、それ以上、何も言わなかった。

彼は知っていた。

兄が沈黙しているときは、

まだ、言葉が“到着していない”のだと。

魯智深が、目を開けた。

ゆっくりと。

その目は、宋江ではなく、

天井の梁を見ていた。

かつて、ここには無数の傷が刻まれていた。

剣の先が触れた跡。

槍が立てかけられた跡。

酒壺がぶつかった跡。

今も傷はある。

だが、それは古い傷であった。

新しい傷が、ない。

魯智深は、それを見ていた。

武松が、外へ目を向けた。

扉は開いている。

誰も閉めなかった。

閉める理由がなかった。

ここは、逃げる場所ではないからだ。

同時に――

まだ、出ていく場所でもなかった。

林冲は、柱に触れていた。

その手は、力を入れていない。

ただ、そこにあるものを確かめるように触れていた。

この柱は、倒れていない。

梁山泊は、倒れていない。

だが――

立っている理由が、まだ、言葉になっていなかった。

そのとき、

宋江の指が、動いた。

ほんのわずかに。

机の上に置かれた手の、

人差し指が、木の表面をなぞった。

音は出なかった。

だが、それは、確かな動きだった。

呉用が、顔を上げた。

彼は知っていた。

これは、合図ではない。

合図よりも前のものだ。

“戻ってきた”のだ。

この男の中に、

かつて、この山を一つにしていたものが。

だが、それは以前と同じ形ではなかった。

以前の宋江は、

皆の中心にいた。

今の宋江は――

中心ではなかった。

中心を、見ている者であった。

違いは、誰にも説明できなかった。

だが、その違いが、

この梁山泊の未来を決めることだけは、

誰もが感じていた。

外で風が止んだ。

木々が、音をやめた。

山が、聞いていた。

ここにいる百八の星が、

再び動き出すのかどうかを。

宋江は、まだ口を開かない。

だが、

沈黙は、もはや空白ではなかった。

それは――

言葉が生まれる直前の、重さを持っていた。

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