表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
降誕・新・水滸伝・続篇  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/59

14 降誕・新・水滸伝

雨の橋


少年、宋江は、十二歳ほどになっていた。


その日、空は重く曇っていた。

村へ戻る道の橋で、

一人の老婆が立ち止まっていた。

川は雨で増水し、

橋の板は濡れて滑る。

老婆は震えながら言った。

「渡れぬ……」


宋江は何も言わず近づいた。

「手を貸します。」

少年は老婆の荷を背負い、

ゆっくり橋を渡った。

ただそれだけであった。

しかしその瞬間、

空の雲の隙間で

一つの星がわずかに光った。


ただ

少年の行いを見ていた。

村人は言った。

「宋江は優しい子だ。」

だが宋江は答えた。

「困っていたからです。」

それだけであった。


冬の米

冬の年。

村は貧しかった。

雪が降り続き、

米が足りない。

宋江の家にも

多くはなかった。


その夜、

宋江は静かに米袋を抱えた。

そして村外れの家へ行った。

病気の母と

小さな子がいる家である。

宋江は戸口に米を置き、

何も言わず帰った。

翌朝、村は騒いだ。

「誰が米を置いたのだ?」

誰も知らない。

宋江も言わない。


その夜、

天魁星が静かに動いた。

星は思った。

「この者は名を求めない。」


少年を見守ることにした。


けんか

ある日、

村の子供たちが争っていた。

石を投げ、

怒鳴り合っている。

宋江は間に入った。

「やめよ。」

だが一人の少年が怒鳴る。

「関係ない!」

石が飛んだ。


宋江の額に当たり、

血が流れた。

しかし宋江は怒らない。

ただ言った。

「怪我をするだけだ。」


その言葉に

子供たちは静かになった。

争いは止んだ。

夜。

星がまた光った。


初めて強く確信した。

「この者は、人を集める。」

武ではない。

怒りでもない。


ただ、人をまとめる力。

それこそが

百八星の首座に必要な器であった。


石碑の前

数年後。

宋江は再び山道を歩いた。

幼い頃に見た

あの石碑の場所である。

不思議と

その場所を覚えていた。

石碑はまだそこにあった。

苔に覆われた石。

宋江は静かに触れた。

その瞬間。

石の奥で

微かな光が動いた。


及時雨

山東の地。

春の終わりであった。

しかしその年、雨は降らなかった。

田は乾き、

川は細くなり、

畑の苗は黄色くなっていた。

村人たちは空を見上げた。

だが空は高く、

雲は流れていくだけであった。

そのころ、若者となった

宋江

は役所で働き始めていた。

書役として

人の訴えを書き記す仕事である。


ある日、

一人の農夫が役所へ来た。

顔はやつれ、

衣は破れている。

男は地に額をつけた。

「お願いです。」

「税を待ってください。」

「このままでは、家族が死んでしまう。」


役人たちは顔をしかめた。

「決まりは決まりだ。」

「税は納めねばならぬ。」

農夫は泣いた。


その姿を、

宋江は黙って見ていた。

やがて宋江は静かに立った。

「いくらですか。」

役人が言う。

「三両。」

宋江は懐から金を出した。

それは

彼が長く貯めた金であった。

宋江は農夫に渡した。

「これで納めなさい。」

農夫は震えた。

「ですが……」

宋江は首を振る。

「命の方が重い。」

それだけ言った。

農夫は泣きながら帰っていった。


その日の夕方。

村で話が広がった。

「宋江が助けてくれた。」

「困った時に現れる。」

「まるで雨のようだ。」


その時、

一人の老人が言った。

「そうだ。」

「宋江は雨のような男だ。」

「乾いた時に降る雨。」

人々は頷いた。

そして誰かが言った。

「及時雨だ。」


その言葉は

静かに広がった。

乾いた地に

ちょうど降る雨。

それが

宋江の名となった。

その夜。

宋江は一人で空を見ていた。

雲が流れていた。

その奥で

一つの星が静かに輝いていた。

星は

人々の声を聞いていた。

そして静かに思った。

「名は人が与える。」

「だが義は、この者の中にある。」


その光は確かに宋江の上にあった。

遠い天界。

白玉の宮で

玉皇上帝

は静かに言った。

「首座は目覚め始めた。」


人々は知っていた。

困った時には

宋江がいる。

その日から、

彼の名はこう呼ばれた。

及時雨 宋江。


遠い天界。

大元の石碑。

百八の刻印の中で

一つの文字が静かに光った。


天魁星。

その横に

新しい名が刻まれる。

地上の人々が呼び始めた名である。

及時雨

宋江。


三清は何も言わない。

ただ

地上の小さな善を

静かに見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ