13 降誕・新・水滸伝
天命刻印録
少年と石碑
山東の小さな村。
田と川に囲まれた静かな土地であった。
そこに一人の少年がいた。
名を
宋江。
まだ十にも満たぬ年である。
その日、宋江は一人で山道を歩いていた。
村の子供たちは川へ遊びに行ったが、
宋江は別の道を選んだ。
なぜその道を選んだのか。
本人にも分からない。
ただ、
「そちらへ行くべきだ」と
心のどこかで感じたのである。
道はやがて細くなり、
草が深くなった。
その奥に
一つの石があった。
それは大きな石碑であった。
人の背よりも高い。
長い年月を経て、
苔が表面を覆っている。
しかし
中央だけは不思議と苔がなく、
古い文字が刻まれていた。
宋江は近づいた。
石は冷たい。
だが
恐ろしさはなかった。
むしろ
懐かしい気がした。
少年は指で文字をなぞった。
文字はよく読めない。
ただ
一つだけ、
かすかに形が分かるものがあった。
「魁」
宋江は首を傾げた。
その瞬間。
石碑の奥で
かすかな光が揺れた。
石碑に刻まれた
天魁星の神の魂が
わずかに目を開いた。
少年は何も知らない。
ただ
石碑の前に立っていた。
風が吹いた。
竹が鳴る。
その時、
宋江は誰かに見られている気がした。
振り返る。
だが誰もいない。
天魁星の神魂が、この少年の守護神になる事を静かに決めた。
「この者を守る。」
宋江は石碑をもう一度見た。
そして小さく言った。
「不思議な石だ。」
それだけ言うと
少年は山道を戻っていった。
その背を
誰も見送らない。
だが
天は知っていた。
百八星の首座は
すでに
一人の少年を
選んでいたことを。




