1 降誕・新・水滸伝
絶後の零 ― 三柱の対峙
そこは、三つの宇宙の根源が正面から組み合い、削り合った場所。
その衝撃の果て、すべてが極限の静止へ導かれた。
絶後の零。
そこには、もはや「空気」すら存在しない。
三清の気が激突し、互いの輪郭を規定し合った結果、空間はその重圧に耐えかねて、一滴の不純物も許さない透明な塊へと変じた。
それまで園の端にたゆたっていた迷いのような霧は、流れ去ったのではない。三柱の放つ聖なる圧に圧し潰され、真空の彼方へと弾き飛ばされたのだ。
あとに残されたのは、あまりに鋭利で、あまりに冷徹な、削ぎ落とされた虚無。
鏡面化した時間の断面。
足元の雲海は、もはや雲であることをやめた。荒れ狂っていた水は、三つの重力が完全に均衡した刹那、一万年の静止へと凍りついた。
それは白銀の鏡というより、硬質な透明な板。一寸の凹凸もなく、光を反射することさえ拒むほどに滑らかで、触れれば魂ごと断ち切られるような、冷たい不動が続いている。
肺を刺す透明な重み。
そこにあるのは、清涼感ではない。吸い込めば、肺胞のひとつひとつが天理の重圧に貫かれ、個としての己が霧散していくような、如何なるものの生存をも許さぬほどの純粋。
吐き出す息さえもが、その場の静謐を乱す「汚れ」として、即座に無へと解体されてゆく。




