フェティシズム・ファンタズム〜VS恋テロ女〜
極まった性癖は、『能力』として顕現することはあまり知られていない。
性癖能力者たちが、己の存在を秘するからである。
なぜか。
性癖は、余人から知られると、恥ずかしいからだ。余人に知らせるものではないからだ。というか、己の性癖を認識し、言語化できて余人に発信できる時点で、性癖能力者として半分開眼している。
閑話休題。
ゆえに、性癖能力者たちは、日夜隠れながらバトルを繰り広げている。
なぜなら──恥ずかしいからだ。
◆
「わたしの性癖は──恋そのもの。むしろ、恋において、肉体は不要。ゆえにわたしは、恋を抽出するために、邪魔な器は除去するの」
「うわーーーー!恋から始まる性癖にしては危険思想っ!!!!」
俺が、同い年の性癖能力者と、お休みの日におしゃれして待ち合わせして街を探索していたら、例のごとく変な奴に絡まれることになった。
思わず、危険思想すぎたから大声を出してしまったが、今ならまだ特に関わらずに逃げ出せるかもしれない。
不審者に、近づかないはこの街の鉄則だ。
「私は、あなたを否定する!なぜなら!私の能力は!顔のいい男×顔のいい男のケンカップルだから!」
「絡みにいくな!」
言ってるそばからなんだよお前は。
「単なる脂肪の塊よね。大きい必要ないし」
「おっぱいは夢と希望!!!!夢と希望はでかいほうがいいだろうが!!!!!俺の性癖能力は巨乳だ!!!!!!!!!!!」
しまった!!!!!!釣られてしまった!!!
「ふーん、いいね。あ、男の方は論外だから、死ぬ価値もないし、どっか行って」
恋テロリストは、俺を即座にゴミ判定したらしく、BL女にロックオンした。
毎回のことだが、俺の能力はだいたい女性陣から蛇蝎のごとく嫌われる。
「わたしの興味は、恋、だけ。物質は恋において邪道。つまり、肉体も一緒よ。争いがない、平和で、恋しかない世界を私は作りたいの。その点、そこの男は、論外ね。なに、性癖:巨乳って」
「そいつの性癖ついては同意しかないわ。私だけにしておけばいいのに…………いや、私だけのほうが不快ね、やっぱなし。それはともかく。聞き捨てならないことがある──。肉体がないと、恋の意味はない。というか、恋だけって、どういう状況よ」
「それを説明することはできない」
「まあ、そうだわな」
性癖能力者にとって、性癖とは能力そのものを指す。性癖をさらすのはとても恥ずかしいことであるのと同時に、能力を、弱点を、知られることにほかならない。
敵対者に性癖を知られることは、致命的な結果を導きうるのだ。
「わたしの性癖能力:恋に恥なんてないし、弱点もないわ。わたしの能力は──恋そのもの」
「さっきから説明になってない」
「恋すれば、わかる。そう、わたしが手から出た粉を相手にふりかければ、恋が生まれるの。要するにほれ薬ね。たとえば、こうして」
恋テロリストは、手を振り回した。言われてみれば、なんか白っぽくなってきたような……。
「出来上がった粉をこのように」
通りすがりの2人組に振りかけ出した。
『ぜーんぜんぜん!全裸露出してやりたいぜんらねえ……!まって♡』
『いーんいんいん!陰部露出こそ最高いんぶねえ!なあに♡』
『お前ってそんなにかわいかったか♡♡♡♡♡♡?』
『もう……ばか♡♡♡♡♡♡』
「このように」
なるほどね。
俺は恋愛に一家言あるBL能力女に問うてみた。
「おじさんコンビに恋が芽生えたみたいだけど、お前としてはどうなん」
「おじさんかどうかは、ともかくとしてね。街なかでそもそも全裸露出野郎と、陰部のみ露出してる野郎は、恋の有無以前よ」
とりあえず、地獄絵図が生まれていることはよくわかった。
「そしてわたしは恋に物質は不要論者。今、生まれた恋を抽出するために──二人の脳を破壊するの」
おもむろに取り出したシャベル。この女、物理的に脳破壊するつもりか。
普通に危険なので、俺の能力で女の動きを制限した。空からとてつもない質量が降ってくる。
「やめて!変態!なによこの重み!」
まな板ではこうはできまい。巨乳の力だ。
BL女には本気でゴミを見る目で睨まれる。俺は悪くないだろう、これについては。能力をむしろいい方に活用してるんだぞ。
そういうことじゃないと言わんばかりに、BL女は俺の手の甲をつねりつつ。
「というか、そもそもあなたが引き起こしてる恋って、結局ほれ薬っていう物質依存じゃないの?」
「…………。そそそそそそそそんんんんななななわけけけけけけけあーーーー脳破壊っ!じらいっ!!!!!」
恋テロリストは爆散した。
性癖能力バトルの最期は、だいたい爆発するのだ。
「えー…………なにこれ。自己矛盾したってことかしら」
「恋だけに儚かったんだろ」
「おもんないわね」
俺はひどく傷ついたので……………我が恋人の胸を見て落ち着いた。
「本気で死になさい」
BL能力系カノジョは辛辣だった。




