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声劇台本

【声劇】モラトリアム・ヒーロー

作者: 緑野タニシ

声劇台本


登場人物

ヒーロー「ハイパーマスク」…悪の組織を滅ぼして世界を救ったヒーロー(女)

怪人ブラックカマキリ…悪の組織の生き残り、現在求職中(男)

ナレーター(性別不問)

ヒ「これで…終わりだ!!悪の組織、ブラックカンパニー!!」


ナレ「…世界征服を企む悪の秘密結社『ブラックカンパニー』との長きに渡る戦いは終わった。


だが、組織を構成していた怪人達はまだこの街のどこかで身を潜めている。

奴らがいる限り、本当の平和は訪れない!

この世界の平和は、正義のヒーロー「ハイパーマスク」が守る!!」


ヒ「はっ!?あそこにいるのは…ブラックカンパニーの構成員、『怪人ブラックカマキリ』!!

こんな平和な昼下がりの公園で何をしているかは知らないが……変身!!」


怪「…ん?…ギェエエ!!お、お前は!!」


ヒ「悪は許さない!覚悟しろ!!」


怪「ま、待つでゲス!アッシは何もしてないでやんす!」


ヒ「問答無用!オラッ、オラッ…くらえ!」


怪「ふぐぇ!あいたっ!…ちょ、やめ…やめるでゲス!!この野蛮人!!!」


ヒ「な…なんだと…!貴様ヒーローに向かって!」


怪「だからアッシは何もしてないでやんす!大体お前が組織を壊滅させたんでゲスよ!忘れたんでゲスか!」


ヒ「なっ…じゃあこんなところで怪人が何やってんだ!」


怪「見りゃわかるでゲス!バイトの休憩でゲス!!」


ヒ「バ…バイトォ!?」


怪「そうでゲス、ほらあそこの工事現場でゲス。アッシだけじゃなくて怪人メタルマンモスと怪人コバルトクラゲもいるでやんすよ」


ヒ「え!?…あぁほんとだ……あいつら…普通にドカタのおっちゃん達と働いてる。い、いや!どうせ何か企んでるんだろ!私は騙されないぞ!」


怪「だから組織はお前が潰したんでゲス!今更悪党やってても食っていけないでやんす!…ってもう、お前なんかに関わってたから休憩時間終わっちまったでやんす!鬱陶しいからあっち行けでゲス!」


ヒ「ちょ、おい!……行っちゃった。…っていやいや!あんなのアイツらの作戦に決まってる!ヒーローとして、ここはアイツら見張っておかなくては!」



ーーーーーー



ヒ(酔っ払いながら)「結局アイツら何もせず普通に仕事してやがった…本当にブラックカンパニーは滅びたのか(モヤモヤした様子で)………ま、まあ…これでやっと平和な世の中になったわけだな!悪はこの私!ハイパーマスクの手によって滅びたのだ!はーっはっはっはっは!!」


怪「お客さん!店ん中で大声だしちゃ困るでやんす!他のお客さんに迷惑でゲス!」


ヒ「あ、ヒック…すいませ…ってお前!ブラックカマキリ!?」


怪「ん?あー…またお前でゲスか…今度は何しにきたでやんすか、暇なんでゲスか?」


ヒ「う、うるさいな!てかお前、こんな居酒屋で何してんだ!悪はヒック…許さねえぞ!」


怪「見りゃわかるでゲス、バイトでやんすよ」


ヒ「バイトってお前、工事のやつは…」


怪「掛け持ちでやってるんでやんす、バイトだけで食い繋ぐには一個じゃ足りないでやんすよ。なあハイパーマスク、ヒーローを名乗るならアッシらにちょっかいかけてないで、政治家に景気を良くするように掛け合ってほしいでやんすけどね」


ヒ「ぐっ…そんなもん私の管轄外だ!…もう!店員ならさっさと注文聞いてくれ!」


怪「はいはいでやんす。ていうか、ちょっと飲み過ぎじゃないでゲスか?…何か嫌なことでもあったんでゲスか?」


ヒ「嫌なことォ〜?ハッ、そんなもんあるわけないだろう、ずっと戦ってきた悪の組織に私は勝って平和を取り戻したんだ、こんなに嬉しいことはない!」


怪「その割には荒っぽい飲み方でゲスが…さては失恋したでやんすね?」


ヒ「んなわけねえだろ虫ケラが…ヒックやっぱり最後にお前だけでも倒してやろうか?」


怪「虫ケラって…アッシはもう悪の組織の一員じゃないでゲス、今は"普通"のフリーターでやんす、もうお前の敵はいないでゲスよ」


ヒ「っ……この野郎!!」


怪「ぶぎぇぇぇ!!何するでゲスか!?」


ヒ「クソっ!クソが!!怪人のくせに!」


怪「や、やめるでゲス!お店で暴れないでほしいでやんす!」


ヒ「お前なんかに!お前なんかに私の何がわかるんだ!私はこれから何と戦えばいいんだよ!!これから誰が私を必要としてくれるんだよ!!くっそおおお変身!!!」


怪「い、痛い!いでででで!ちょ、それは必殺のやつ!死ぬ!死ぬでゲエエエエス!!!」



ーーーーーーーー



ヒ「うー…気持ちわる…あったまいってええぇ……って、あれカマキリ…何してんだこんなとこで…居酒屋のバイトじゃないのか?」


怪「求人雑誌を読んでるでゲス、居酒屋はクビになったでやんす」


ヒ「え!?あー…えっと…ごめ(言いかけて止める)……いやいや、何でお前が!暴れたのは私だろ…」


怪「バイトじゃこんなもんでゲスよ」


ヒ「う…お前、クビにした奴らが憎くないのか?」


怪「この程度の失敗くらいどうってことないでゲス、アッシらは何回も仕事の失敗をしてるでやんすからね、どっかの誰かさんが、悪の秘密結社ブラックカンパニーの作戦を何度も邪魔してくれたおかげで…(プルルルル)あ、ごめんでゲス、電話が……(地声)あ、はいもしもし〜」


ヒ「え」


怪「あ、お世話になっております、はい鎌田です〜…はい…あ、はい…あ、そうですか…はい、いえ、この度はありがとうございました。はい、あ、失礼致します…」


ヒ「…え、何今の…いや、何というか色々と」


怪「ん?何って面接を受けた会社から不採用の連絡でゲス」


ヒ「は?何お前就活してんの?」


怪「当たり前でゲス。このご時世にバイトだけで安定した生活はできないでやんす」


ヒ「…お前、いや、お前ら怪人…今はみんなそんな感じなのか?」


怪「そうでゲスよ、要領の良い怪人サイエンス梟はとっくに大手企業に就職したし、アッシのようにまだまだ求職中の奴もいれば、幹部だったネコミミサキュバスのように、開き直って水商売で上手いことやってる奴もいるでやんす」


ヒ「あのバカで単細胞な怪人脳筋ライオンは…?」


怪「実家のみかん農家を継いで元気にやってるみたいでやんす」


ヒ「…それじゃあ、もう私は…どうしたらいいんだよ」


怪「…そういやお前、今何してるんでゲスか?」


ヒ「……ヒーロー」


怪「……(察し)えーと、警備員とか向いてるんじゃないでゲスかね?」


ヒ「い、今更普通の仕事なんて…」


怪「でも、今どうやってメシを食べてるんでやんすか?」


ヒ「お…親の仕送りで…」


怪「お前…年齢は?」


ヒ「…27」


怪「……(呆れ気味な感じ)」


ヒ「……(気まずそうに)」


怪「……まあ、他人の人生だからとやかく言うつもりはないでやんすが…」


ヒ「うん…何も言わないで」


怪「……(気まずそうに)」


ヒ「……(気まずそうに)」


怪「……キェーッケケケケケケ!!!」


ヒ「うわあ!?何だァいきなり!」


怪「いいザマでやんす!あのハイパーマスクがこんな情けないニートに成り下がるとは!」


ヒ「なっ…てめえ」


怪「こんな社会のお荷物相手なら、どっかの会社に入ってそこを新しいブラックカンパニーとして再結成する計画も簡単に上手く行くでやんすね!!」


ヒ「…え?」


怪「キェーッケケケケケケ!アッシを止めたくば、貴様もどうにかして同じ会社か系列会社やら取引先やらに就職して、どうにかして関わりを持つしかないなあ?」


ヒ「……お前」


怪「というわけでこんなところで油を売ってられないでゲス!計画を成功させるために、アッシは忙しいでやんす!!さらばでゲエエエス!!」



ーーーーーーーー



怪「さて、とうとう最終面接まで残ったでゲス…(地声)間違えた、最終面接まで残ったぞ…くそぅ、やっぱりあの変な喋り方が癖づいてるな」


ヒ「そんなんでダークカンパニー再結成なんて、見通しが甘いんじゃないのか?」


怪「なっ!?お前、ハイパーマスク!?何でここに!?」


ヒ「何でって…お前、私の前で堂々と計画を話してたじゃないか」


怪「お…ふっ、へへ…マジか、はははは」


ヒ「ふふふ…はははは!私は何と言ってもスーパーヒーロー、ハイパーマスクだ!悪の組織を倒し、人類を守った私に、最終面接まで残るくらい、造作もないわ!!」


怪「ちょ、静かにするでゲス!悪目立ちするでやんすよ!」


ヒ「え、ああごめん、てかあんたも喋り方」


怪「ああ、ごめん…(咳払い)あー、あー…うん、よし」


ヒ「…ありがとな」


怪「……受かってから言いなよ、あ、次…お前の番!」


ヒ「(ド緊張した様子で)ひゃ、ひゃい!し、失礼します!!よ、よろ、よろしくお願いしましゅ!!」


怪「あいつ…よくここまで残ったな」

2022年6月29日 作

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