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悪役令嬢を降りますので、後は好きにやってください  作者: 雲乃琳雨


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9/20

9、王子の誕生日舞踏会

 舞踏会当日。久々の舞踏会だ。カロリーナは、鏡の前に座って豊かな赤い髪をなでた。


(私この髪、結構好きだわ)


 今日は、久しぶりにカツラなしで出かける。存在感を出さなきゃね。カロリーナは、サラに命令する。


「今日は、盛り髪にしてちょうだい!」

「かしこまりました!」


(せっかくだから、もらったブローチを着けていこう。キレイなので気に入っている♡)



 王宮の舞踏会の会場。今日の舞踏会は、王子と同世代の、未婚の男女を中心に招待されていた。その中でもカロリーナは、ひときわ目立つ豪華な装いをしていた。


「久しぶりに、カロリーナ嬢を見ましたね」

「まあ、派手さは健在ね!」


 王子が手を振りながら、階段を下りて入場した。王子の挨拶が済むと、カロリーナは中央に出て、王子に手を出した。会場は、ざわめく。カロリーナは、王子もユニコーンのブローチを着けているのに、気が付いた。


(あれ? 贈ったブローチを着けてる。なんで?)


 カロリーナは、思わず少し赤くなった。

 王子も、カロリーナがブローチを着けていたのを見て、満足そうに微笑んだ。王子はカロリーナの手を取り、ファーストダンスを踊った。


(カロリーナは、ダンスも上手だったな)


 以前は、強引で派手な動きをしたがったので、気が付かなかった。今日は、とても踊りやすかった。その様子をヒロインが、激しく怒りながら見ていた。


(悪役令嬢と踊るなんてどういうこと⁉)


 自分の近くにベンがいることに気が付く。これは、コルタス令嬢対策のために、王子が後ろに立たせたのだった。仕込みは万端だ。


「ねえ、ベン様、なぜ二人が踊っているのかしら? 婚約破棄したのに」

「ファーストダンスは、特別な意味があると捉えられるので、他のご令嬢に公平になるように、関係のないカロリーナ嬢にお願いしたんですよ」


 音楽が止むと、二人の優雅なダンスに、会場からは拍手が起こった。踊った後二人は何事もなかったように、無表情でさっと離れた。


「ほらね。ルナマリア嬢、私と踊りませんか?」

「あら、私、用がありますの! 失礼」


 ヒロインは王子の元へ急いで行くが、王子はすでにセレナにダンスを申し込んでいた。それから、ユフィア。その後は、アグネス・カシム伯爵令嬢。彼女もライバルキャラだ。性格は一番普通の女の子で、ヒロインに近い。瞳はオレンジ、髪はクリーム色のツインテールで、綿菓子のように大きく一巻きにしていた。


(あの髪の中は、どうなっているのかしら?)


 カロリーナは端にあるテーブルの近くで、飲み物を飲みながらその様子を見ていた。


「姉さま、僕と踊りませんか?」

「?」


 カロリーナは、突然声をかけられて振り返ると、自分より背が低い、銀髪のおかっぱで、青い目の美しい少年がいた。レオン・トリエン公爵令息は、宰相の息子で母方のいとこだ。


 うちの母は宰相の妹で、父とは大恋愛だった。なんせ向こうは公爵家の次席、うちは貧乏だったから超反対されたそうだ。性格のいい二人は気が合った。


「レオ!! 久しぶり! いいわよ。踊りましょ」


 二人は、手を取ってダンススペースに歩いて行った。レオンも弟キャラの攻略対象だ。アリスと同じ1年生で生徒会の書記なので、朝の生徒会の風紀チェックではたまに見かけたが、あいさつする程度で、今は交流がなかった。レオンから声をかけられて、カロリーナは上機嫌だった。


「お父様に、姉さまには関わらないように言われてました」

「あはは、そうなの」(素行が悪かったからね。伯父様ならそう言うでしょうね)

「ボクは気にしません。よくしてもらってたから」


(カロリのことを、一人でも良く思ってくれる人がいて良かった)


 カロリーナは、ほっとした。小さくて、天使なレオンは、カロリーナのお気に入りだった。お菓子を一緒に食べたり、遊んだり。


「姉さまは変わったようなので、それがすごく気になって。それで、声をかけたんです」

「ギク。いろいろあったのよ」

「ふーん」


 レオンは、納得していない返事をした。


(レオになら話してもいいかな)


 普通、前世の話をしたらおかしいと思われるが、レオは学年首席で頭がいいから、話が分かると思う。ちなみに3年生の2位はユフィア、3位が王子だ。

 ダンスが終わる。


「あなたも、他の令嬢と踊らないとね」

「ボクは、小さいから誘われない」


 レオンは斜め下を向いて、小声でぼそりと言う。


「そうなの⁉ こんなにかわいいのに!」


 カロリーナはぎゅーっと、レオンをハグした。


「じゃあ、今日はずっと踊りましょう!!」

「はい!」


 レオンは喜んで、返事をした。二人は、次の曲を踊り始める。


「身長なんかすぐ伸びるわよ!」


 カロリーナの言葉に、レオンは照れて嬉しそうにした。その様子を、他の令嬢たちが見ていた。


「カロリーナ様は、ずっとレオン様と踊ってますね」

「意外と面倒見がいいんですね」


 その横で、ユフィアが踊る二人を鋭い目つきで見ていた。ヒロインは、やっと王子と踊ることができた。


(確かに不思議な魅力がある。性格が悪くなければ、候補にはなっただろう)

「この後も踊りませんこと?」


 踊りながらヒロインが提案する。


「今日は、祝いに来た令嬢とできるだけたくさん踊る」


 王子はしれっと答えた。2回踊るのは特別を意味するので、王子は誰とも2回は踊っていなかった。ヒロインと別れた後も、誘われるままに踊った。王子は、カロリーナの方に目をやる。くるくる踊る二人は、アハハと楽しそうに笑っていた。


(あいつは、ずっとレオと踊っているな。あの二人もいとこ同士だったな)


 カロリーナは、アリスとシュタインが踊ってるのを見た。二人も楽しそうだ。二人は、すでに婚約が決まっている。

 王子と踊ったライバルキャラは、四人だった。


(これでライバル達のルートは、決まりかしら?)



 舞踏会が終わり、参加者が会場を後にする。カロリーナとレオンも、手をつないで外に出た。月明かりに照らされた外階段を、二人で下りる。


「今日は、すごく楽しかった。今度また、一緒に出掛けましょう。おいしいスイーツの店とか」

「はい!」

(さすが攻略対象! 笑顔の破壊力半端ない)


 カロリーナは、レオンのかわいさにメロメロになっていた。


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