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悪役令嬢を降りますので、後は好きにやってください  作者: 雲乃琳雨


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6/20

6、普通の学園生活

 カロリーナは、お茶会もパーティも全部断って、学園生活に専念していた。以前のカロリーナがいなくなれば、社交界も学園も静かなものだ。


 周りを観察していると、ヒロインはおとなしく王子に接していた。前の図々しさはないが、媚びているのは分かる。生徒会に入ろうとするのを副会長のセレナ・ナイゼル公爵令嬢に阻止されたらしい。生徒会は、役員以外もお手伝いで入れるのだ。


(ヒロインなりに、自力で頑張っているようね)


 今の段階で、王子の婚約者有力候補は、紫色の髪のキレイなお姉さんキャラ、セレナと、薄緑色のエリ足の長いショートカットで、細い目にメガネの知的キャラ、生徒会会計のユフィア・マーカス侯爵令嬢だ。この二人は、ゲームのライバルキャラだ。


 2年生の階の廊下で、先日のテストの結果が貼り出されていた。カロリーナは、なんと学年2位になってしまう! 1位は同じクラスのマリオン・デサ子爵令息。真面目なガリ勉だ。


(あわわ、目立ってしまった。貴族の学力どうなってんの?) 


 学園の授業は、前世の中高合わせた感じで緩かった。ここより上の学校は、平民のアカデミーしかない。学者になる人が通うところなので、貴族はそんなに勉強しなくてもいいということのようだ。カロリーナは前世でもそこそこで、特別優秀な方ではなかった。その証拠に、1位と2位の差は20点以上ある。1位は、5科目で498点だ。

 カロリーナの横に立ち、声をかける者がいた。


「すごいですね。いきなり」


 見ると、ベンだった。すでに王子の側近として働き、生徒会でも手伝いをしている。間近で声をかけられると、まじまじと顔を見てしまう。これがツーショットスチルか。


「え、分かります? 私のこと」(気が付いた人、二人目だわ)

「ええ」(監視してましたから)


(この人、ポイント高い! 同じ社畜の香りがするわ。話が合いそう)


 カロリーナは顔が赤くなる。ベンはそれを見て、きょとんとする。


「失礼しますわ!」


 慌てて去るカロリーナを見て、顎に手を当てる。


「意外とかわいいかも」



 カロリーナは教室の席に着いた。


(ふー、あぶない。攻略対象はやっぱり、他の人と違って顔もいいのよね。関われないのは惜しい!)


 心の中で、片手を握って悔しがる。ベンのライバル担当は、なんとセレナだ。生徒会つながりだからかな。それ以外の担当は冊子には書いてなかったから分からない。セレナは王子狙いでダブついてるから、ベンは空いてるのかしらね?



 昼休み、カロリーナは昼食を終えて一人で中庭を歩いていた。王子は渡り廊下からその姿を見て、ベンに問いかけた。


「あの女生徒は誰だ?」

(冗談? ではないよな)「お声をかけてみては」


 ベンはしれっと言う。王子は、言われた通りカロリーナの前に現れた。にこやかに手を挙げて、声をかけた。


「やあ君、名前はなんて言うんだい?」


(は? 冗談?)


 カロリーナは固まった。


(この人は、こういった冗談を言う人ではない。そして、気が付く人でもないが、どうしよう)


 面倒なので、カロリーナは逃げることにした。カロリーナは運動神経のおかげで、かなりの俊足だ。しかし、王子も追いかけてきた!


(うそ、追いかけてきた! しつこい! マイナスポイントだよ、この人!!)


 外の誰もいないところで減速して、手をつかまれる。王子の方が早いに決まっているのであきらめた。


「なぜ逃げるんだい?」

(そりゃ、逃げますよ。そうならないために婚約破棄したでしょ。でも、これもイベントかもな)


 毒づいても仕方ないので、観念して名を名乗る。


「私は、カロリーナです」(この人、思ったより女好きなのかな?)←違います。


 王子は、より良い相手を見つけるために行動しているのだが、はたから見ればただのナンパヤローにしか見えなかった……。王子は黄色い目を見て、カロリーナだと認識すると、顔を真っ赤にして焦った。


「化粧を変えたのか。後、髪も」

「そうです。では」


 カロリーナは手短に答えると、気まずすぎて急いで立ち去った。


(それで、あのいとこが話しかけていたのか)


 王子は、舞踏会で見かけた令嬢だと思って追いかけたのだ。



 カロリーナは校舎内に戻った。落ち着いて考える。


(この状況でなければ、捕まえて言うセリフも、ゲームなら萌えなポイントよね。こっちから見ると滑稽すぎた……。

 そのせいで、ゲームイベントを楽しめないのは、あ~、なんだか残念だわ。捕まえてごらん、アハハハの追いかけっこイベントよね。きっと)



 放課後の生徒会室には、王子とベンの二人がいた。王子は椅子に座って、机の上で肘をつき両手を重ねて顔を近づけ、昼休みのことを考えていた。目は据わっている。ジロリとベンを見た。


「お前は知っていたのか?」

「あ、分かりましたか? あの赤い髪がいないので探しますよね、普通」(王子はカロリーナ嬢のことは気にも留めてなかったようだな)


「成績が急に上がっていたが」


 二人は人物像の把握のため、各学年の成績をチェックしている。


「それは、どうも不本意だったようですよ」

「成績が上がってか? やっぱり分からん奴だ」

「まだ、目立ちたくないみたいですね。気持ちは分かります。

 でも、その時になぜか、私の好感度が上がったみたいです。赤くなっていたので」


「何だと⁉」

「あなたの好感度は下がりましたよね」(その様子だと、多分)


 ベンは昼に何が起こったのかは知らないが、カロリーナだと分かったなら、大体のことは察する。


「俺はどんな風に見える?」

「ただの、女好きですかね? いろんな女生徒とランチしてますから」


 ベンは上を見ながら、考えて答える。

 ガクッ。王子の頭が下がった。今日のセリフを考えれば、それは否定できない。


「私は、今のカロリー嬢、好きですね」

「なに!? 俺の婚約者だぞ」


 とっさに口に出た。


「元ね。あなたと女性を取り合う気はありませんよ。絶対、負けるでしょ」

「そんなつもりで言ったんじゃない!」


 王子は慌てて取り繕った。仕事の続きで、書類を書き始める。


「……」(そういえば、気になって話しかけたのカロリー嬢が初めてじゃないかな)


 ベンは、書類を棚に片付けながら思った。


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