6、普通の学園生活
カロリーナは、お茶会もパーティも全部断って、学園生活に専念していた。以前のカロリーナがいなくなれば、社交界も学園も静かなものだ。
周りを観察していると、ヒロインはおとなしく王子に接していた。前の図々しさはないが、媚びているのは分かる。生徒会に入ろうとするのを副会長のセレナ・ナイゼル公爵令嬢に阻止されたらしい。生徒会は、役員以外もお手伝いで入れるのだ。
(ヒロインなりに、自力で頑張っているようね)
今の段階で、王子の婚約者有力候補は、紫色の髪のキレイなお姉さんキャラ、セレナと、薄緑色のエリ足の長いショートカットで、細い目にメガネの知的キャラ、生徒会会計のユフィア・マーカス侯爵令嬢だ。この二人は、ゲームのライバルキャラだ。
2年生の階の廊下で、先日のテストの結果が貼り出されていた。カロリーナは、なんと学年2位になってしまう!。1位は同じクラスのマリオン・デサ子爵令息。真面目なガリ勉だ。
(あわわ、目立ってしまった汗)貴族の学力どうなってんの?
学園の授業は、前世の中高合わせた感じで緩かった。ここより上の学校は、平民のアカデミーしかない。学者になる人が通うところなので、貴族はそんなに勉強しなくてもいいということのようだ。カロリーナは前世でもそこそこで、特別優秀な方ではなかった。その証拠に、1位と2位の差は20点以上ある。1位は、5科目で498点だ。
カロリーナの横に立ち、声をかける者がいた。
「すごいですね。いきなり」
見ると、ベンだった。すでに王子の側近として働き、生徒会でも手伝いをしている。間近で声をかけられると、まじまじと顔を見てしまう。これがツーショットスチルか。
「え、分かります? 私の事」気が付いた人、二人目だわ。
「ええ」(監視してましたから)
(この人、ポンイント高い! 同じ社畜の香りがするわ。話が合いそう)
カロリーナは顔が赤くなる。ベンはそれを見て、きょとんとする。
「失礼しますわ!」
慌てて去る、カロリーナを見て、顎に手を当てる。
「意外とかわいいかも」
カロリーナは教室の席に着いた。
(ふー、あぶない。攻略対象はやっぱり、他の人と違って顔もいいのよね。関われないのは惜しい!)
心の中で、片手を握って悔しがる。ベンのライバル担当は、なんとセレナだ。生徒会つながりだからかな。それ以外の担当は冊子には書いてなかったから分からない。セレナは王子狙いでダブついてるから、ベンは空いてるのかしらね?
昼休み、カロリーナは昼食を終えて一人で中庭を歩いていた。王子は渡り廊下からその姿を見て、ベンに問いかけた。
「あの女生徒は誰だ?」
(冗談? ではないよな)「お声をかけてみては」
ベンはしれっと言う。王子は、言われた通りカロリーナの前に現れた。にこやかに手を挙げて、声をかけた。
「やあ君、名前はなんて言うんだい?」
(は? 冗談?)
カロリーナは固まった。
(この人は、こういった冗談を言う人ではない。そして、気が付く人でもない)が、どうしよう。
面倒なので、カロリーナは逃げることにした。カロリーナは運動神経のお陰で、かなりの俊足だ。しかし、王子も追いかけてきた!
(うそ、追いかけてきた! しつこい!)マイナスポイントだよ、この人!!
外の誰もいないところで減速して、手をつかまれる。王子の方が早いに決まっているのであきらめた。
「なぜ逃げるんだい?」
(そりゃ、逃げますよ。そうならないために婚約破棄したでしょ。でも、これもイベントかもな)
毒づいても仕方ないので、観念して名を名乗る。
「私は、カロリーナです」(この人、思ったより女好きなのかな?)←違います
王子は、より良い相手を見つけるために行動しているのだが、はたから見ればただのナンパヤローにしか見えなかった…。王子は黄色い目を見て、カロリーナだと認識すると、顔を真っ赤にして焦った。
「化粧を変えたのか汗。後、髪も」
「そうです。では、」
カロリーナは手短に答えると、気まずすぎて急いで立ち去った。
(それで、あのいとこが話しかけていたのか)
王子は、舞踏会で見かけた令嬢だと思って追いかけたのだ。
カロリーナは校舎内に戻った。落ち着いて考える。
(この状況でなければ、捕まえて言うセリフも、ゲームなら萌えなポイントよね)こっちから見ると滑稽しぎた…(そのせいで、ゲームイベントを楽しめないのは、あ~、なんだか残念だわ)捕まえてごらん、アハハハの追いかっけこイベントよね。きっと笑
放課後の生徒会室には、王子とベンの二人がいた。王子は椅子に座って、机の上で肘をつき両手を重ねて顔を近づけ、昼休みのことを考えいた。目は座っている。ジロリとベンを見た。
「お前は知っていたのか?」
「あ、分かりましたか? あの赤い髪がいないので探しますよね」ふつう(王子はカロリーナ嬢の事は気にも留めてなかったようだな汗)
「成績が急に上がっていたが」
二人は人物像の把握のため、各学年の成績をチェックしている。
「それは、どうも不本意だったようですよ」
「成績が上がってか?」やっぱり分からん奴だ。
「まだ、目立ちたくないみたいですね」気持ちは分かります。「でもその時になぜか、私の好感度が上がったみたいです」赤くなっていたので
「何だと!?」
「あなたの好感度は下がりましたよね」その様子だと、多分
ベンは昼に何が起こったのかは知らないが、カロリーナだと分かったなら、大体のことは察する。
「俺はどんな風に見える?」
「ただの、女好きですかね?」いろんな女生徒とランチしてますから。
ベンは上を見ながら、考えて答える。
ガクッ。王子の頭が下がった。今日のセリフを考えれば、それは否定できない。
「私は、今のカロリー嬢、好きですね」
「なに!? 俺の婚約者だぞ」とっさに口に出る。
「元ね。あなたと女性を取り合う気はありませんよ」絶対、負けるでしょ。
「そんなつもりで言ったんじゃない!」
王子は慌てて取り繕った。仕事の続きで、書類を書き始める。
「…」(そういえば、気になって話しかけたのカロリー嬢が初めてじゃないかな)
ベンは、書類を棚に片付けながら思った。