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悪役令嬢を降りますので、後は好きにやってください  作者: 雲乃琳雨


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5/20

5、婚約の裏側

 翌日からカロリーナに、各家からプレゼントや、釣書、求婚の手紙が届く。釣書は公爵が返却した。


「さすが、腐っても公爵令嬢だわ」(権力の力、恐るべし……!)


 カロリーナは、手紙やプレゼントのカードに目を通すとサラに命令する。


「プレゼントは全部送り返してちょうだい。今後は誰からも受け取らないで」

「かしこまりました」


(さてと、勉強を頑張るか。別に勉強は得意じゃないけど、この世界のことを知るのは楽しいわね)



 突然、叔母夫婦が公爵邸にやってきた。叔母も赤い髪で、いつも騒々しい。客観的に見て、自分もこんな感じなのかと、カロリーナは思った。カロリーナも呼ばれたので、応接室で公爵の隣に座った。


「王子と婚約破棄になったから、うちのエドが、カロリーナと結婚してもよくってよ!」

(してもって、何よ)


 カロリーナは、叔母の言い方にカチンとくる。叔父はこげ茶色のくせっ毛に口ひげ、いつも叔母の横で汗をかいて、愛想笑いをしている。公爵は、頭が痛そうに言う。


「カロリーナの相手は今決める気はないし、エドと結婚することは()()()()()。お前にあらかじめ言っておく、この公爵家は、カロリーナの代で爵位返上する」

「!」


 カロリーナも初めて聞いたので驚いた。


「なんですって! そんなの許さないわよ、お兄様!! なら、うちのエドが後を継ぐわ。いいでしょ?」


 叔母は怒りで震えながらテーブルに手を突いて、身を乗り出した。


「黙れ! お前は家を出た身だ。しかも家を傾けたのは、母とお前の贅沢のせいだ。それを忘れたのか⁉」


 父が若い頃、祖母と叔母の贅沢で、公爵家は食べる物が買えなくなるほど困窮していた。それを立て直したのが父だ。

 贅沢ができなくなったことに怒った祖母は、祖父と離婚して実家の伯爵家に戻る。その後、伯爵家は破産して、祖母は行方不明になった。一説には、家の宝石類を盗んで国外に逃亡したのでは? ということだった。祖母強……。


 祖母が家を出てから、幼い弟と妹を養子に出した。叔母も男爵家に嫁いだが、男爵家も傾き始める。祖母と叔母の二人がいなくなって、公爵家はすぐに持ち直すことができた。その腕を買われて、父は王宮で財務の仕事に就いた、ということだ。


「これは王室との取り決めだ。この件に口を出すということは、牢屋に入るということだ。以後、男爵家の者はこの家の出入りを禁止する。男爵家が潰れても、お前たち二人だけの面倒は見る。私達二人に何かあれば、その時点で爵位は返上される。帰れ」


 叔母夫婦は、公爵が本気なのが分かって、青ざめて帰って行った。応接室に、公爵とカロリーナは二人で残っていた。


「お父様、そのお話、初めて聞きました」

「今のお前なら話してもいいだろう。王子との婚約は、爵位返上を条件に取り付けたのだ」

(なるほど!)


 この国の公爵家枠は5家あるのだが、1家は破産して空席になっている。うちは今だに4家の末席なのに、どんなウルトラCを使ったのかと思えば、そういうことだったのか。公爵領は良い土地だし、場所もいい。王家は、ゆくゆくはそれが手に入るのだ。婚約破棄はこちらから言いだしたから、その条件が残って破棄できたのかも。


「今でもうちには、それほど余裕があるわけではない。お前さえ暮らしていけたら、後は良いと思ったんだ」

(お父様の潔さ、あっぱれだわ!)「私、お父様の子供で良かった」


 カロリーナは公爵の手に、自分の手を乗せた。自分が、王家にも守られているのが分かる。


「そうかい」


 公爵はうれしそうに笑った。カロリーナは、公爵にハグをすると応接室を出た。


(あれだけお父様が怒ったのだから、エドはなしね。まあ、叔母さんとは絶対合わないだろうし、一緒に暮らすのもあり得ないわ)


 祖母も赤い髪で、贅沢は赤い髪の呪いじゃないかと使用人の間では噂されている。そして、祖母や叔母の話を聞いても、カロリーナは何とも思わなかった。わし、ヤバい。

 カロリーナも贅沢をしていたが、そこは父の管理下なので予算の範囲内だ。前世の記憶が戻ってからは、溜め込んだいらないものは全部売り払って、貯金した。


(私は、赤い髪の呪いから、逃れられたわよね?)


 祖父が言うには、祖母は元々贅沢をしていた人ではなかった。ただ、公爵家に嫁ぐことが出来た自信から、そのように振る舞うようになったらしい。父に言わせると、元々そういう人間だったのだろうということだ。祖父は父に爵位を譲ると、今も相変わらず領地経営をしている。

 ちなみに、養子に出した二人は、当初から幸せに暮らしているので、父に感謝していた。二人とも今は結婚して、子供もいる。


(うらやましいけど、今は、まずは勉強よ。カロリの成績は底辺だから、挽回せねば)


 カロリーナは、こぶしを握って気合を入れた。これで当分は静かだろう。


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