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3、婚約破棄と断罪イベント

後日、カロリーナは生徒会室に呼ばれて、調査の結果を聞いた。私的な事なので今回も、王子とベンの三人しかいない。ベンが大まかに報告書を読み上げた。


植木鉢は学校の物で、あの時間3階は人通りがなく、目撃者はいなかった。犯人は結局、分からなかった。

あの道は近道で誰もが授業の移動で良く通る。ちなみにその時間、ヒロインにはアリバイがあった。


この国にはちょっとした魔法はあるが、魔法薬や髪の色を短時間変えるとかしかないので、これ以上調べるのは難しい。


(このままだと狙われ続ける…)


カロリーナは報告を聞くと、ふんぞり返って腕を組み、横柄な態度で考えた。王子の前でそんな姿を見せたことがなかったので、素の姿に二人は驚く。王子が引き続き説明する。


「階段の件は目撃者がいた。騒ぎになったのを聞いて、その生徒は後で報告に来た。お前が下にいたのを見たと証言した」

「そう」


カロリーナは当然のことなので、興味がなさそうに返事をした。


「その事から、お前に監視を付けることにした。食堂の件は、その者から令嬢が勝手に転んだと証言がとれた」


王子が食堂で見ていた男子生徒だ。王子は、いつもと違って関心のない態度に困惑した。


(本当に関心がなさそうだ。人格が変わって、俺に興味を示さなくなったのはなぜだ? 他に好きな男でもできたのか?)


(王子が黙っているので、どうせろくでもないことを考えてるわね)あたり。(監視はともかく、思ったより味方してくれるわよね。前も思ったけど、ゲームの強制力が強くないってこと?)

「!」


カロリーナは急に続編の事を思い出した。妹二人が、パッケージを見せてくれた。


『このゲームは、キャラクターが人気だから続編が出たのよ。タイトルは、「ルミナージュ貴族学園 5人のライバルがヒロインで、ヒロインが悪役令嬢編」!』

『なんと悪役令嬢が逆転して、しかもライバルキャラでもプレイできるの!』



(もしかしてこの世界は二つのミックス? それなら、私もヒロインという事?)

(とりあえず、はっきり言っても良さそうね)


「婚約破棄してください」直球。

(は!?)


二人は驚く。


「平和な学園生活を送りたいのです」(ゲーム的にも王子の婚約者という立場が、原因だと思う)

「分かった、検討しよう」


王子はあっさり、折れた。


(やったー。今までの行いの悪さが功を奏したわね!♪)



カロリーナが帰った後、


「自分から言うなんて驚きましたね。一時的かもしれませんので、撤回される前に婚約破棄されてはどうでしょうか」

「そうだな。カロリーナが何を考えているか分からないが、事件が起こり続けるのは厄介だ。婚約を解消するとしよう」



その日の夕方、アルファイン公爵邸に帰宅した公爵と、王子が一緒にやってきた。カロリーナと侍従たちが玄関ホールで出迎える。

公爵がカロリーナの肩に手を置いた。


「お前がたびたび嫌がらせや、危険な目にあった話は聞いた。お前に何かあってからでは遅いからな。お互いが望んでいることでもあり、王子とお前の婚約破棄が決まった。陛下からも承認された。後日舞踏会で正式に発表されることになる」


それを聞いて、侍従たちは驚いた。


「ありがとうございます」グッジョブ


カロリーナの好意的な反応にも目を丸くした。それを見て王子は、


(侍従達も、カロリーナの変わりように驚いているな)

「王子がお前に話があるそうだ。応接室にお通ししろ」


侍女に命令する。応接室でカロリーナと王子は向かい合って座った。


「話が早くて助かりました♡」

「ああ、明日の放課後、学園で先に私的に発表することにした」

「それなら、その場で私も話をしてもよろしいでしょうか?」


王子は怪訝な顔をする。


「何を話す気だ?」

「私が、王子との婚約に全く未練がないという事を知らしめます。そうすれば、もうこのようなことは起きないでしょう」

「いいだろう」(願ってもない事だ。自分がふさわしくないと、やっと気がづいたのか)フフン



翌日、放課後に王子から私的な発表があることが掲示板に貼り出された。場所は講堂で、自由に聞きに行く事が出来る。それを見てみんな思い思いに話す。


「なんでしょう」

「気になりますね」

「もちろん見に行きましょう」



放課後の講堂は一杯になった。壇上の中央に王子が立ち、脇にベンとカロリーナが立っていた。王子が演台に手を着いて話始めた。


「私的な話に集まってもらい、感謝する。その前に、私の婚約者に起こった一連の出来事について説明する」

「なんだその話か」


観衆から、期待外れな声がする。


「コルタス男爵令嬢いたら、前に」

「はい!」


ヒロインは喜んで前に出て来た。


(これって、断罪イベントじゃないの!?)ウキウキ


「2件は彼女が関わっている。階段の件は、目撃者がいた」

(なんですって!?)


ヒロインはギョッとする。


「カロリーナ嬢は下にいた。食堂の件は、カロリーナ嬢を私が監視させていたが、男爵令嬢の足を引っかけてはいなかった」


どよっ。観衆に動揺が走る。


「それって、濡れ衣だったって事?」

「あの子、どういうつもり?」


ヒロインは青ざめる。


(なんでこんなことが起こるのよ! 私はヒロインなのに!)くっ 

「申し訳ありません! 私の勘違いでした。カロリーナ様には、お詫び申し上げます。どうぞお許しください」


ヒロインは膝をついて、頭を下げた。それを、カロリーナは一瞥する。


「よくってよ」

(ほっ)


王子が続けて話す。


「植木鉢が落ちてきた件は、」


ヒロインはビクッとする。


(このまま話す気?)

「犯人は見つからなかったが、危険行為は許さない。引き続き捜査していく。情報を持っている者は生徒会または、職員に話してほしい。

そして、ここから私的な報告になる。私とカロリーナ公爵令嬢の婚約は破棄されて白紙に戻った。後日王宮で正式発表がある」


どよっ!!


さっきよりも大きなどよめきが起こる。会場が騒然となった。


「学園で問題が起こるので、婚約破棄をすることになった。婚約者は今後、私自身が決める。決まったら即発表すると、ここに宣言する」


それを聞いてヒロインはほくそ笑む。


(やったわ!、やった甲斐があった♡)


王子はカロリーナに目配せする。カロリーナは前に出た。


「私からもお話があります。婚約破棄については自分から申し出ました。私は王子の婚約者になることに、もう興味がありません。これからは、私に遠慮することなく王子との親交を深めてください」


「きゃ~」

「私たちにもチャンスがあるのかしら!」


女生徒たちの間で、ひかえめに黄色い歓声があがる。これに対して、ヒロインは観衆の方を見て嫌な顔をした。


(あんたたちにチャンスがあるわけないでしょ)


「カロリーナ様、ずい分変わったわね」

「カッコいいわ」


カロリーナに対する印象も変わっていた。カロリーナは壇上から降りると、後ろを見ているヒロインの前に膝をついた。ヒロインは観衆の声に気を取られて、気が付いていない。耳元で、


「あなたが何もしなかったら、あなたで決まりだったかもね」

「!」


ライバルが5人ではなく、その他大勢に。こんな断罪も悪くない。でも、


「あなたにもまだチャンスはあるわ」(あなたが退場したら面白くないものね)


カロリーナは、立ち上がると颯爽と立ち去った。


(これで、悪役令嬢を見事に降りきったわ!)どやっ笑


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