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悪役令嬢を降りますので、後は好きにやってください  作者: 雲乃琳雨


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2/20

2、ゲームイベント

 屋敷に帰ったカロリーナは、手を広げてメイドのサラに命令する。


「今日は、薔薇風呂よ!」

「かしこまりました」


 湯船に薔薇の花を浮かべて、お風呂に入る。


(は~、幸せ。これよこれ、令嬢生活万歳!)


「お嬢様、今日はご機嫌ですね」

「そうよ!」


 サラは長く仕えているメイドで、よく気が利くのでカロリーナのお気に入りだ。お姉さんといった感じで見守ってくれていた。

 お風呂から出て、夕食まで時間がある。ふかふかのベッドでゴロンと横になり、婚約破棄計画を練る。


 カロリと王子が婚約したのは、子供の頃。カロリがわがままを言って、父のウルトラCで婚約を取り付けた。父は人柄がよくて、陛下からの信頼も厚い。王子も陛下に言われるまま従う性格だが、カロリが王子妃にふさわしくないのは分かっている。勉強もしないし、マナーもなってない、気も短くて暴言吐きまくり。カロリはダンスが得意だがそれは、王子と踊る時の見た目を気にしているから。まあ運動神経がいいから、階段でよけられたんだけど。


(ダンスが得意なだけの女に、王子も見切りをつけてるはず)


 王子は、学園では女生徒全員を家名呼びして、公平に扱っている。これはゲームと同じで、婚約者を代えることを検討しているからよね。そろそろ潮時だと思っている王子にとって、こちらからの婚約破棄は願ったり叶ったりのはずだわ。


 サラがノックをして、入ってくる。


「お嬢様、お食事の時間です。旦那様もお戻りですよ」

「分かったわ」


 食事の部屋で座って待つと、公爵があわてて入ってきた。


「リーナ! 王子から聞いたよ。濡れ衣を着せられたって?」

(王子が話したんだ……。父は、財務大臣なので王宮勤めだ)


 それを聞いて、サラも口を押さえて驚いた。公爵は席に着く。


「それなら大丈夫よ」

「どうしたんだ? 機嫌がいいじゃないか。いつもなら怒って八つ当たりしているのに」

「お父様に、もっといい報告ができそうだから」(婚約破棄のね。フフフ)

「そうか、あはは」(嫌な予感しかしない)


 二人は食事を始めた。



 朝起きてカロリーナは、鏡を見る。


(赤い髪なんて罰ゲームだわ。めちゃくちゃ目立つし。名前もカロリーだし、懐かしい響き……)

(素顔はそこまできつくないわよね。鋭いのは、アイラインのせいもあったのね、髪の設定が縦ロールじゃなくて良かった)


 サラが部屋に入ってくる。


「今日のメイクは、自然な感じにして、髪もまとめてちょうだい」

「かしこまりました」


 サラは、髪を1本の編み込みにすると、白い小花の飾りをランダムに挿して、清楚な感じにした。

 登校すると、取り巻き兼友人の侯爵令嬢と伯爵令嬢二人がすぐに寄ってきた。


「あら、カロリーナ様、今日はメイクを変えました?」

「髪型も大人っぽくて素敵ですわ」

「ふふ、ありがとう」


 教室でも、他の生徒がカロリーナのことを話していた。


「カロリーナ様って、なんか静かになった感じしますね」

「いつもいるだけで、騒々しいですけどね」

「一時的でしょうか?」


 それを聞きながら、カロリーナは満足そうだった。


(このまま、自然にイメージチェンジね。悪役令嬢の中に普通の人が入ったら、それはもう普通の人なのよ! ヒロインもしかり)



 昼休みの食堂。カロリーナはトレーにランチを載せて、友達二人と席をさがしていた。そこに突然、


「キャー!!」


 ヒロインは大きな声で叫びながら、カロリーナの横で転び、無残にもトレーのランチをぶちまけた。カロリーナは普通に、びくっ!! っと驚いた。


「ひどいです。カロリーナ様! 足を引っ掛けるなんて」

(これもイベントか……)


 ここが前世なら、雑巾を持ってきて片付けたのだが、令嬢はそんなことはしない。イベントに付き合う気もない。


「ごめんあそばせ」


 カロリーナはそう言うと、さっさと行ってしまった。友達も慌てて追いかける。


「どうしたんだ。すごい声がしたぞ」


 王子が登場した。ヒロインは喜んで、王子に泣きついた。


「カロリーナ様に、足を引っかけられたんです! なのに知らんぷりして、行ってしまいました! うっ、うっ」


 ヒロインは涙を浮かべる。カロリーナは何もなかったかのように、サンドイッチをおいしそうに食べていた。友達は、ハラハラしながら現場の方、特に王子を気にしている。


「誰かその場を目撃した者はいるのか?」


 王子の問いに誰も答えなかった。王子は離れた所にいる男子生徒を見ると、その生徒はうなずいた。

 掃除の者がやってきて、ヒロインに服を拭くためのフキンを渡すと、その場を片付け始めた。幸い、他の者に被害がなかった。


「令嬢は、また新しい食事を持ってくるがいい」

「ありがとうございます。王子様」


 ヒロインは、またカウンターへと戻っていったが、カロリーナの方を気にしていた。


(あの女、なんで自分の仕事をしないのよ。出会いイベントは、ゲーム通りだったのに!

 その後は全く何も起こらなかったから、自分でイベントを起こすしかなかった。そうしないと王子と仲良くなれないでしょ!

 悪役令嬢ならちゃんと仕事しなさいよね。バグかしら。でも、今回も王子が来たから良かった♡)



 それから数日後。カロリーナが専攻授業に行くために、一人で中庭の回廊を歩いていた。突然、何かが上から落ちてきて、ガシャン!! と音がした。見ると植木鉢が割れていた。


「!」


 カロリーナはとっさに上の階を見たが、3階に逃げる影のようなものしか見えなかった。

 音に、他の生徒が集まってくる。


(これって、命危なくない? ただの脅し?)


 あわてて教師がやって来て、犯人を調べることになった。


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