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悪役令嬢を降りますので、後は好きにやってください  作者: 雲乃琳雨


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10/20

10、デートイベント

 学園では、ヒロインが王子に近寄ろうとして、生徒会のライバル達に阻止されていた。進展しないことにイライラし始めたのだろう。他の場所で、アグネスも積極的に王子に話しかけている。カロリーナは、その様子を眺めていた。こちらは、いたって平和だった。



(今日の休日は、レオと街でデートだ!)


 街娘風スタイルにする。レオンとの交流が復活したことを、公爵も喜んでいた。


 レオンのお忍び用の馬車が迎えに来た。カロリーナは、レオンの手を取り馬車に乗り込んだ。今日は二人だけでお出かけだ。レオンも平民の装いだが、剣帯していた。

 馬車の中で、レオンに前世の話をした。ゲームのことは言わなかった。


「レオは聞きたがっていたから、話したけど……」

「なるほど! そういうことだったんですね。別の人生の記憶があるなら納得です」


(レオに話して良かった! 誰かに言うとスッキリするものね)


 カロリーナは、胸に手を乗せて安心した。気持ちのつかえがとれたようだ。


「28歳で、社畜ってなんですか?」

「社畜は例えね。労働動物のように、働かされた従業員のことよ」

「大変だったんですね。姉さま」

「そうなの。レオなら分かってくれると思った!」


 お互いに目を潤ませた。

 街に着き、馬車を降りてしばらく歩いて行く。予約したスイーツ店に入った。中は、女性たちでにぎわっていた。二人で違うものを頼んで、お互いに食べ合いっこした。


 レオンとカロリーナが会わなくなったのは、カロリーナの母が亡くなった後、王子と婚約した頃だった。二人は、これまでのお互いのことをたくさん話した。昔に戻ったみたいで楽しかった。


 食べ終わったので、店を出た。


「次はどこに行こうかしら。その辺を歩いてみる?」

「はい」


 レオンはニコッと答える。二人で歩道を歩いていると、前から来た街の若者三人組に声をかけられた。


「君、かわいいね。名前なんて言うの」

「え⁉」(ナンパ⁉)


 ナンパされるのは想定外だった。今日はお付きの者がいないので、カロリーナは非常に困る。レオンと一緒に走って逃げようか、と考えていると手を掴まれそうになった! レオンが剣を抜いて、相手に切っ先を向ける。


「この人に触れることは許さない」

「え⁉」

「ちょっと、そこまでやる⁉」


 若者たちは、弱腰で慌てる。


「おい! 何をやっている」


 突然声がすると、エドワードが現れた。男たちは、走って逃げていく。


「あら、エドじゃない」(助かったわ)

「カロリーナ、大丈夫かい?」

「ええ、レオが追い払ってくれたから」


 エドワードは、二人の間に入ってカロリーナの肩に手をかけて連れて行こうとする。


(?)

「ちょうど良かった話もあるし、危ないから家まで送るよ」

「いえ、まだこれから行くところがあるから。失礼するわ」

「待って、なかなか会えなかっただろ。ここで会えて良かった。少し話せるかな」


 あれからエドワードも出禁なので、手紙を送ってきていた。カロリーナが返事を書かなくても何通も届き、内容がだんだん恋愛の話になっていった。


『君のことを分かっているのは、ボクだけだ。結婚しよう』


 とか。それからは読まずに捨てた。

 カロリーナは、エドワードの手を払いのけて、きっぱりと言う。


「お金や結婚の話は無理よ。あなたの家の借金を返せるほど、うちには余裕はないの。他を当たってちょうだい」(余裕があっても、お金目当ての男と結婚しませんけど)

「待って、そうじゃないよ」


 焦って顔がこわばるエドワード。無視されたレオンが、静かに声をかける。


「姉さま、この人は?」

「ああ、父方のいとこよ。エドワード、こちら母方のいとこのレオンよ」

(公爵家の跡取りで宰相の息子⁉ こいつが……)


 エドワードは固まり、それからは何も言わなかった。宰相の息子の前で、さすがに連れていくわけにはいかない。二人はエドワードの横を黙って通り過ぎた。レオンは振り返って、エドワードの背中に冷たい視線を向けた。だいぶ離れてから、


「あの男は、姉さまと結婚するつもりなの?」

「私と結婚して、借金を何とかしたいみたいだけど。お父様は怒って、全員、生涯出禁にしたわよ」

「母親の浪費が移ったんだね。他の二人はマシなのに」


 長男、次男は他の家に婿養子に入って、実家を援助していた。カロリーナは、顎に指を当てて考えていた。


(レオはやっぱり、エドのことを知っていたのね。浪費が移ったってことは、エドもそうなの? レオはうちや男爵家のことを調べていたのか。さすが!)


 カロリーナは、レオンに笑顔を向ける。


「レオ、さっきはとても堂々としてて、頼もしかったわ! ありがとう」

「剣の腕は、学年一だと思っています」


 レオンは下を見て、赤くなりながらもじっとして答える。


「キャー、カッコイイ!!」(レオの意外な一面ね。あの場面は、神スチルよね♡)


「お店を見ながら、ランチの店も探しましょ」

「はい」


 今日も楽しい一日になった。


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