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1、ゲームスタート

カロリーナは、校内の赤い絨毯が敷かれた見晴らしのいい中央階段の下に差し掛かった。階段の途中から落ちてくる、美しいピンクの髪に水色の瞳のヒロインを見て思い出した。


前世の私は、丸メガネ、黒髪を一つ結びにして、グレーのスーツ姿、社畜28才。ブラック企業で働いて、やっと退職できたと片手ガッツポーズで喜んだ途端、階段の踊り場の端でつまずいて、そのまま転落した前世の記憶がよみがえった。それ以降の記憶がないので、その場で亡くなったんだと思う。浮かれ過ぎたわし…


前世の私には、双子の妹がいた。二人とも大学生のオタクで茶髪、片方がショートカット、片方がおかっぱ頭。今いるのは、その妹たちが夢中になっていた乙女ゲームの世界。そして私は、赤い髪に鋭い黄色の瞳の悪役令嬢、カロリーナ・アルファイン公爵令嬢だ。

退職したらやるつもりで、ゲーム付属の冊子だけは読んでいた。


カロリーナはそこまで思い出すと、階段から落ちてきたヒロインをひょいとよけて、声をかけた。


「大丈…」夫

「きゃああ、助けて! カロリーナ様に突き落とされたんです!」


ヒロインは、通りすがりの生徒に助けを求める。


(なんですと? 私、下にいましたよ)ヒロインは大丈夫そう…


これは恐らくイベントの一つ。ゲームの内容は、冊子以外のことは知らない。わし、詰んだ…


「どうしたのだ」

(うわ、出た)


攻略対象その1、出来るクールな王子ジークアス・ヒルタン登場。この国の王太子で、悪役令嬢カロリーナの婚約者だ。アイボリーのスーツ制服に、3年生の緑色のクラバット。美しい金髪に緑の瞳と冷たい視線、イケメンアイドルばりの輝くオーラ。


(ま、まぶしい。目が… )


カロリーナは目を細める。

攻略対象その2,王子の脇にいる執事、ベン・クライン侯爵令息。茶髪で長めの髪、地味担当だが学年首席。王子の同級生でもある。

カロリーナは2年生、ヒロインは、この春入学したばかりの1年生だ。元平民だったが、容姿の麗しさから、男爵家の養女となった。


「カロリーナ様に突き落とされたんです」

「そうなのか?」


ヒロインが目を潤ませて、王子に訴えかける。王子の方は目を細めて、カロリーナに鋭い視線を向ける。


「いやわし、」じゃなくて「私は、…」もはや何といえば正解なのか分からない。このゲームは断罪された後どうなるんだっけ。

「はあ」


カロリーナは、少し下を向いて固まっている。その様子に、王子は額に手を置き、目をつむってため息をついた。


「話はあとで聞く。コルタス令嬢を医務室に連れていけ、その後大事を取って帰宅するがいい」

「途中から落ちたので、医務室だけで大丈夫です♡。王子、連れて行ってください」

「そうか、分かった連れて行こう」


王子は迷惑そうな顔をするが、断っても面倒なので連れていくことにした。


「アルファイン令嬢は放課後、生徒会室に来るように」


(とりあえず、話は聞いてもらえそうで良かった)


王子の腕を借りて、ヒロインは大喜びだった。カロリーナも、早々にその場を立ち去った。


(私には、カロリの記憶もあるから、学園生活に不自由はない。放課後までに状況を整理しなければ)



カロリーナは授業そっちのけで、頭をフル回転させてノートにメモをし始めた。授業を聞いていないのはいつもの事だったが、教師はその姿を見て、(カロリーナさんが、まじめに授業を受けている…)と勘違いしていた。


乙女ゲーム自体、全くの未経験だけど、ゲーム転生マンガは読んでいたので、おおまかな知識はある。

このゲームのタイトルは、「ルミナージュ貴族学園 ヒロインと5人のライバル達」だ。

冊子の情報では、ヒロインが入学してゲームがスタート。悪役令嬢の他にも攻略対象には、それぞれライバルキャラがいる。

妹たちとの話を思い出す。


『ライバルキャラがいるのが面白いんだよね』

『悪役の断罪はどうなるの?』わし、聞いてた。でかした!。

『悪役令嬢は、どのルートでも卒業式で婚約破棄。その後の話はないよ。みんなの前で赤っ恥かくだけ』

『ラストは、元婚約者が迷惑をかけたので、王子からヒロインに謝罪と、パートナーと二人に祝福場面があるの』


カロリの記憶では、幼いころに母親が死んで、父もカロリには甘くわがままに育った。今の段階では、暴言は吐くが、他人に嫌がらせまではしていない。それは助かった。素行は、日ごろからうるさく文句ばかり。王子大好きで追い掛け回す。

確か入学式の日、王子に道案内を頼んだヒロインに、馴れ馴れしいと激怒していた。


『私が王子の婚約者のカロリーナ・アルファイン公爵令嬢よ! あなた王子に話しかけるなんて無礼よ!』

『王子様だったなんて知りませんでした! 失礼しました』謝るヒロイン。

『新入生にその態度は、よくないアルファイン公爵令嬢。君、案内するよ。名前は?』

『ルナマリア・コルタスです。いいのでしょうか』

『かまわないよ』キラリ


二人は、カロリを置いて行ってしまった。フルネームを名乗ってたから、これが出会いイベントだろう。恥ずかしい!笑

印象マイナススタート。それを省けば、公爵令嬢の生活は社畜に比べてはるかに天国だ。


(まさかリアルで体験するとは思わなかったけど、これを満喫するほかないわね)


赤っ恥は避けたいから、早々に婚約破棄してもらった方がよくない? 攻略対象を外せば、何とか結婚できるだろうし、もし無理なら、領地経営で自分の代だけならなんとかなるだろう。よし、これで決まり! 


(放課後さえクリアしたら、今日は終わりだわ)



放課後の生徒会室。生徒会長の王子と、ベンだけがいた。カロリーナは立って待つ。


「? 座ってくれ」


普段カロリーナは勝手に座るので、二人とも違和感を感じた。カロリーナがソファに座ると、王子も向かい側に座る。ベンは王子の後ろに立った。


「さて、階段の件を話してくれ」

「私は、下からコルタス令嬢が落ちるのを見ていました。こっちにめがけてきたので、よけました。もしかしたら、ぶつかって私を巻き込もうとしたのかも」

「?」


あのカロリーナが、簡潔に説明して分析までした。王子とベンは顔を見合わせる。あきらかにいつもと様子が違う。


「お前、何か変だぞ。いつもなら喚き散らしているのに」私はやってない!とか、相手に悪態をつくとか

「そういうの、やめました。帰っていいでしょうか?」

「ああ」


カロリーナは生徒会室を出て、右手を握った。


(よし、これで今日はクリア)


王子は、カロリーナの様子を思い返す。休み時間に見た時と変わって落ち着いていたし、表情も冷めていた。


「お前どう思う?」

「話におかしなところはないですね。むしろ、正しいような気がします。コルタス令嬢の行動の方が不可解でしたし」あの後ベタベタ付きまとっていましたね。 


ベンは顎に手を当てて、考えながら話していた。


「カロリーナ嬢はいつもなら、王子と一緒にいたがるのにさっさと帰りましたね。二人の行動が入れ替わったような気がします」

「それはそれで、頭が痛い…」王子は額を抑えた。


(なにを企んでるんだ。カロリーナ)


王子は、長年カロリーナと婚約していたが、まったく意味不明だった。

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