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チャプター2:「遭遇接敵 飛行群編隊VS巨大艦隊」

「――誤差、0.053。グッドジャンプ」


 飛行群の指揮官機であるJEF機――無線識別、「ローンワンダラー」。

 海軍式に言い換えれば「旗艦」を務めるその機の、操縦室空間内で声が上がる。


 操縦室空間は、防圧及び防弾の施された大きなキャノピーで覆われ。広い視界を確保して宇宙空間を向こう周囲に望む。

 機長席と副機長席が並列配置で設けられ。そこから計器類で半分隔てた向こう前側、機の最前には照準手兼銃砲手席を有し。

 機長、副機長席の背後側には、航法観測手用の席を設ける。まさに大型爆撃機のレイアウトを倣う内装。


 今に上がったのはその内の、機長席の背後に座る航法観測手から声。

 たった今完了した超空間航法が、高い精度で成功したことを伝えるもの。


「了解」


 それに端的に返すはこのJEF機、ローンワンダラーの「機長」。兼、この飛行群の指揮官を務める。

 ヴァディシ修佐(諸外国における大佐)。

 そろそろ中年から壮年に差し掛かり出している男性隊員。


「各機、戦闘隊形へ順次移行展開を開始」


 そのヴァディシの了解も早々に、次にはヴァディシの隣より副機長が知らせを寄越す。


 言葉通り、キャノピーより向こうの宇宙空間周囲に見えるは。飛行群の各宇宙機が隊形移行を行う姿に光景。


 明かせばそれは、ジャンプアウト前から調整されていたもの。

 元より最低限取っていた警戒隊形を。しかし各宇宙機は、そこからさらに拡大する形で再展開。

 明確な、戦闘隊形を成して行く。



 飛行群は、現在一つの作戦任務を帯びている。


 元は遊撃任務中であった飛行群は。しかしその最中に、別の味方隊の広域偵察観測機から、敵を――帝国艦隊の存在を知らされた。


 そしてその帝国艦隊の動きは。

 その様相、予測進路から。最寄りの味方基地への強襲を企図している可能性が、非常に高いと見られた。


 その知らせを受け。その帝国艦隊よりもっとも近くに位置し、かつ最低限の戦闘行動に足りうる編成であった飛行群は。

 それを迎え撃つべく、超空間航法に入り。

 そして今に繰り広げたように、会敵予測地点であるこの宙域に、ジャンプアウトしたのであった。



「前方宙域、ジャンプアウト事前反応をキャッチ。味方のモデルではありませんッ」


 そんなジャンプアウトからの隊形移行が進む中で。しかし状況は待ってはくれずに動き。

 また航法観測手からの、今度は張り上げ伝える声が届く。


 それは、「敵」の接近を告げるもの。


「おいでなすったな」


 それに、ヴァディシはまた端的に答える。


「戦闘機飛行隊、進入投射担当の各飛行班。所定通りの行動を開始」


 それに続け、副機長が伝える言葉を紡ぐ。


 ローンワンダラーの側方真上近くを数機編隊で飛行していた、Ffq-421の飛行班の各機が。

 その機体に、半ば無理やり増加搭載した大型航宙エンジンを吹かし。飛行群より前に出て向こう宙域への進出を始める姿を見せる。


 それは「敵」の出現を予測しての、前もっての行動開始。


「方位340、ジャンプアウト視認ッ」


 そして次には、航法観測手が知らせの声を張り上げ。

 

「――見えた」


 向こうの宇宙空間に、ジャンプアウトの前現象である無数の空間の「歪み」が生まれ見え。

 そして直後。巨大それから小型のものまで、無数の存在がその姿を出現させた。


 それこそ、強大な敵たるレギュリオン大帝国。

 その、宇宙艦隊だ――


 堂々たるジャンプアウトから、我が物顔で向こうの通常宇宙空間へと姿を現した、レギュリオン大帝国の宇宙艦隊。

 その編成形態は、ざっと視認しただけでも。


 全長が2krw(km)に届く程の、巨大な宇宙戦艦が二隻。


 その宇宙戦艦より一回り小柄ながらも、強力な戦闘力を持つ巡洋戦艦が一隻。

 巡洋艦が数隻に、駆逐艦及びフリゲートクラスが複数隻。


 さらには何十機もの、警戒哨戒のための戦闘機を伴っている様子が確認できる。


 大帝国の強大さを惜しみなく誇示するような全容。

 しかし、大帝国軍からすればここまでであっても。快速機動性に重きを置き、いくらか控えめに編成された艦隊なのだ。


「嫌味なまでの高級車揃いだ、贅沢なことだな」


 その、恐るべきまでの敵艦隊の全容に。しかし副機長が零したのは呆れ交じりの皮肉の言葉。


「任意保険に入ってること、心配してやろう」


 副機長のそれに、ヴァディシはまたそんな皮肉交じりの言葉で返し。


「飛行群各機、所定の作戦行動を開始。向こうさんはとうにこっちに気づいてる、盛大な歓迎を受けるぞ。身構えておけ」


 そしてこれよりの作戦行動開始の指令を、通信に言葉で上げ。合わせて注意警戒を促す旨を伝え。


「始めるぞッ――」


 そして火蓋を切る様に、「作戦開始」の指示を。機内に通信に、轟かせる域で張り上げた。




 超空間航法から宙域へと出現した、レギュリオン大帝国の艦隊。


 詳細には、それは機動力を生かした襲撃作戦を主として担う、機動戦術艦隊。

 その中核を務めるは、二隻の巨大宇宙戦艦。

 その内の片方。現在の大帝国軍宇宙艦隊にて主力の座を務める艦級であり、この機動戦術艦隊にても旗艦を務めるは、「ヴィルティオス級」と呼称される戦艦。

 その艦級の一隻である、「シュティルビオン」。


「――司令ッ、敵艦隊を目視視認」

「フン、ご苦労にも仕掛けて来たか」


 そのシュティルビオンの艦橋、広大で物々しい指揮指令所空間。

 その中央に立つ一人の女が、コンソールに着くオペレーターからの知らせに。

 端麗だがあどけなさを微かに残しつつ、そして反した狡猾さを匂わせるその顔に。

 驚きはせず、つまらなそうな色を見せて答えた。


 女は大帝国の軍人であり。この戦術機動艦隊の艦隊司令官。

 名をリャケシエと言う、帝国人であり帝国軍少将である女だ。


 すでに熟れ初めの齢だが。反してその容姿は、まだ少女から大人の女になったばかりと思わせるもの。


 それは、大帝国の押し進める「新民族」思想の影響を受けるもの。

 優れた血を選りすぐり、遺伝子操作をもってしてまでの。宇宙を支配し導くための、「新たな種」を目指すための施策。


 彼女の親族一族もそれに賛同する立場であり、それが故に持つ麗しい容姿であった。

 最も、リャケシエ自身は根っからの武人気質であり。外見の若さや美貌にはあまり興味を示さない人物であったが。


「巡洋戦艦を中核とする軽戦闘艦隊ッ、戦闘隊形に移行中の模様」

「あれは――あちらの惑星の、なにか変わった合同体のものだったか?統合政府も持たぬ土人のハリボテが」


 そこへまた寄越された、敵の編成概要や動きを知らせるオペレーターの言葉。

 そかしそれにリャケシエは。諜報から聞き及んでいるジア側の体系についてを零しつつも、同時に忌々し気に吐き捨てる。


 彼女の率いる艦隊は、現在敵――ジア側の主要基地への襲撃任務を担っている。

 それを煩わしくも邪魔され、不愉快を覚えてのもの。


「艦載機各隊、発艦を許可!ヤツ等を叩き、畳んでやれッ!」


 そしてリャケシエは、透る声でしかし。容赦の無い「蹂躙」を命じる言葉を響かせた。




 不気味な警報音が響き渡る、シュティルビオンの艦内。

 巨大なその艦体の内に設け備える、艦載機収容区画にて。

 

 収容され出撃の時を待つ、帝国の各種艦載機に。急ぎ、しかし焦りはしない慣れた様子で、帝国軍のパイロットたちが次々と乗り込んでいく。


 無駄な時間を掛けず、各機の必要なセットアップをパイロットたちは手早く終え。

 そしてそのパイロットたちの準備完了に合わせるかのように。出撃許可は降り、艦載機収容区画に備わる出撃ランプが煌々と点灯する。


 その合図を待っていたと。各艦載機は流れるような様相で、次々に待機収容状態より解かれ。

 艦に設けられる出撃口を潜り抜け飛び出し、宇宙空間へと出撃した。

 

 旗艦であるシュティルビオンを始め。いずれも多数の艦載機を搭載収容する艦隊各艦より。

 戦闘機型、攻撃機型などなど。多岐に渡る型式の、無数の艦載機部隊が出撃していく。


 そしてその帝国軍艦載機部隊は。愚かなる辺境の未開人を葬り去るべく、その研いだ牙を突き立てるべく。

 恐ろしいまでの様相で、向こうの「敵」を目指して襲撃を開始した。

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