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お飾りの妻にするつもりが、夫の方がお飾りになった話  作者: 彩紋銅


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13/15

13 それから

 ◇◆◇


 ウェズリー様が、()()()()()となることが決まった。

 彼の荷物は客室に運び込まれ、空いた夫の部屋はエヴァンが使うことになった。


 ウェズリー様は最後まで青い顔をしているだけで、私に声をかけることもなかった……


 それから数日後、ウェズリー様の愛人さんの刑が執行される日になった。

 スノードロップ侯爵家の温情により、安らかに眠れる毒杯を賜ることになったらしい。

 やったことは悪質ですが、その大元の原因はウェズリー様だ。


 事前に受け取った手紙には、謝罪と今回のことに至った経緯が書かれていた。

 ウェズリー様を選ばなければ、彼女も幸せになれただろうに……


 彼女の遺体は誰も引き取り手がいなかったため、共同墓地へと埋葬されることになった。

 私は彼女の謝罪を受け入れ、せめてもの手向けで花を送った。

 それで終わり。

 もう、彼女を思い出すことはないだろう。


 それからウェズリー様は、心を入れ替えたのか、真面目に領地経営を手伝うようになった。

 たどたどしい所はあるが、お義父様の執事に日々嫌味を言われつつ頑張っているようだ。


 私とウェズリー様との関わりは、相変わらずほとんどない。

 表向きには夫婦なので、夜会などのパートナーが必須の場には二人で出席するが、それくらいでしかウェズリー様と接する機会はない。その時も軽い打ち合わせくらいで、余計な会話はなかった。


 一度だけ、彼にやり直せないかと聞かれたことがある。

『無理です』と答えた所、以降まともに話す機会はなく、いつのまにかウェズリー様は敷地内の別邸で生活するようになっていた。


 そのうち、彼は体調不良を理由に引き篭もるようになり、顔すら見せなくなってしまった。

 お見舞いを何度か申し入れたが、すべて却下されてしまった。

 私も治癒系魔法が使えるので治療を申し出たりもしたが、それも断られてしまった。


 治癒魔法でも癒せない病があるのかと驚いたが、ウェズリー様が患っているのは心の病らしく、それは闇属性魔法の適性を持っていない私では治せないものだったので納得した。

 精神や心を癒す治癒魔法は、闇属性魔法なのだ。

 あるいは、魔女様なら治せる薬を知っているかもしれないが、生憎魔女様の知り合いはいない。 


 そしてエヴァンは、私の事実上の夫となった。

 毎日のように溺愛され、結果として私は彼と出会って一年も経たずに妊娠し、元気な男の子を出産したのだった。

 それからも次々に身籠り、あっという間に子供が四人もできた。双子もいるので凄い賑やかになった。


 また、エヴァンは冒険者として非常に優秀で、なんとS級冒険者だった。

  魔の森の管理や魔獣討伐にも尽力してくれたため、その実力には何度も助けられている。


 さらに、冒険者らしい(ワイルドな)見た目に反して、学生時代には冒険者ギルドで事務のアルバイトをしていたらしく、ギルド運営にも詳しかった。

 西の辺境(実家)にも冒険者ギルドはあるものの、私には内部事情までは分からない。そのため、エヴァンの知識は非常にありがたかった。

 それだけではなく、信用できるギルド職員まで紹介してくれたのだ。

 実力だけでなく、人脈にも恵まれている。エヴァンの人望の厚さを、私は改めて実感した。


 こうして彼は、魔の森を抱えるスノードロップ侯爵領において、なくてはならない存在となっていった。

 初めは胡散臭そうにしていた領民たちからも、エヴァンの評価は上々となった。


 そうしてエヴァンは、ウェズリー様が体調不良で参加できない夜会にも、彼の代理の義弟として私と参加し、社交界でも有名になっていった。

 まあ、女性人気というよりは、猫耳と尻尾のおかげで、()()()()()()()()()()()から大人気になったのですが。


 領民たちの暮らしが安定し、魔の森がある暮らしに人々が慣れてきた頃。スノードロップ侯爵家は獣人国とのやり取りも再開した。

 アーノルド様の死の後も細々とやり取りは続けていたのだが、これからは本格的にやり取りができる。


 ここでもエヴァンは活躍することになる。

 彼は、冒険者として獣人国で活躍していたこともあったらしい。

 王族に近い方と面識があると知ったときには、義両親もさすがに驚いていた。

 どうやら獣人国の王族は身分を隠して冒険者をしており、エヴァンとパーティーを組んでいたことがあるのだとか。


 おかげで獣人国との繋がりが強くなり、それを通じて魔王国とも交流ができた。これが国益に繋がり、スノードロップ侯爵家は爵位を上げるかどうかの話が出ているという噂。

 お義父様は、様々なバランスと面倒事が増えるのが嫌なので断りたいようだったが。


 ……というか、爵位を上げると、公爵になりますね。

 となると、王族との繋がりなども面倒ですね……爵位は今のままで良いんじゃないかな?


 とにかくなんだか、凄いことになっているけれど、私はスノードロップ侯爵家に恩を返せただろうか?


 アーノルド様の遺志を繋げたのだろうか?


 彼に、少しは報いることができただろうか……?


 もし、そうなら、とても喜ばしいと思う。


 ◆


 そして、私とエヴァンが愛人になって四年ほどが経った頃。ウェズリー様が亡くなった。

 心の病から無気力になり、衰弱してしまったようだ。


 心の病は光属性の治癒魔法でもどうにもできない。


 精神に作用できる闇属性の魔法なら治せたのかもしれないが、生憎そこまで能力の高い闇魔法使いは、この国にはいない。

 というか、闇属性の治癒系魔法は高難易度なので、使える人自体が稀だ。


 詳しいことは何も知らなかったので、結局一度もお見舞いはできなかった。

 それを申し訳なく思い、エヴァンに吐露すると、「ホリーが気にすることはない。アイツは──自分の運命に向き合っただけだ」と言った。


 それがどういうことなのかは、分からなかった……


 ウェズリー様ともっと心を通わせられれば、違う未来もあったのだろうか? 

 でもいずれエヴァンと出会っていたならきっと、同じ結果になっていたと思うので、なかった未来は考えないようにする。


 せめて、ウェズリー様が安らかに眠れるように祈っておこう。


 ◆


 それから一年後。

 私とエヴァンは正式に結婚……いえ、再婚しました。


 これに対し周囲の反応は意外と好意的で驚いたのだが、よくよく聞いてみれば学生時代からウェズリー様の素行の悪さは有名で、彼が結婚をしても上手く行かないだろうという事と、兄のアーノルド様の代わりは務まらないだろうことは予想されていたらしい。


 ……ウェズリー様、一体何をしでかしたのですか?


 いえ、亡くなった方を悪く言うのはやめておこう。不毛ですし。


 そして私は、五人目の子供を出産しました。

 五人目は女の子でした。

 髪や瞳の色は私にそっくりですが、頭にある一対の獣耳と、お尻にある尻尾はエヴァンと同じ。

 どうやら、スノードロップ侯爵家の血を濃く受け継いだみたいです。


 そんな見た目なので、エヴァンはもちろん、兄姉全員で()()()()()()()()()で将来がちょっと心配だ。


 私がしっかりしないと!


 ちなみにほかの兄姉は、長男、長女、次男と三男です。次男と三男は双子だ。

 エヴァンと初めてそういう関係になった時に言われたことが、本当になってしまった。


 運命の番ってこういうところの相性もいいのですね……


 長男はスノードロップ侯爵家の跡取りとして頑張っている。

 空色の瞳はアーノルド様を思い出させます。きっと良き後継になるでしょう。


 長女は浄化の力と光魔法の才があるようで、私と共に修行をする毎日。将来は聖女よりも治癒師になりたいみたいです。その辺りはゆっくり決めていこう。両方になっても良いのですから。


 次男は大人しめで、三男は活発。どんな大人になるのでしょうか。楽しみです。


 全員女性もしくは男性を泣かせるような大人にはならないように、気をつけましょう。


 そして、エヴァンはお義父様から爵位を継いだ。


 領民も魔の森のある生活に適応し、それがあるのが当たり前の生活になってきた。

 魔力資源も十分取れるようになり、このままいけばダンジョンも形成されるかもしれない。


 それはまた大変だろう。


 でも、私たちならきっとなんとかやっていけるでしょう!







ウェズリーが亡くなった時、ホリーには既に子供が四人います(男、女、男双子の順)。

その後もう一人生まれて計五人子供を授かりました。


本編はこれで一応完結です。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。

この後、オマケが二作ほどある予定です。


誤字報告ありがとうございます!

助かります!!

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