06 魔王ってなに?
部屋の中には向かい合っているソファーとその間にテーブル。ソファーは4人で座っても余裕がありそうなほど大きい。
「自由に座ってくれ、いまお茶を用意させる。」そういうと、どこからか現れたメイドが温かい紅茶を置いていく。すごいな、早業じゃん。
黒井が1番奥に座ったからそれに続いて、白木、一護、清水が座る。夜は清水からちょっとだけ離れながら座る。
(名前覚えてなかったから、隣座るの気まずい...。)
クラスメイトの名前くらい覚えて欲しいものである。高校2年に上がって二ヶ月は経つのに、夜はいまだにクラスメイトの名前が覚えられていなかった。
気まずさから紅茶の飲むフリをしていると、王太子が話し始めた。
「今から君たちには詳しい今の状況を教えようと思う。よく聞いてほしい。」真面目な顔をする王太子。皆も聞く姿勢に入ったようだ。先生の話でもここまで聞く姿勢は見せないだろう。
この世界は、1人の巨大な大陸ーメルスーンと2つほどの小さな大陸とでできている。そして、魔法が発達しているこの世界では古来より魔王が現れていた。
「魔王って、具体的には何ですか...?」ずっと気になっていた言葉、魔王。いまいちイメージがわかない。
夏目の質問に王太子は軽く頷くと答えた。
「魔王とは、簡単に言えば魔を統べる者だ。この世界に満ちている魔法の素となる魔素が澱みすぎると生まれると言われている。」
魔素?空気の中に含まれるのだろうか。それともここの空気は窒素や酸素で構成されていないのだろうか。だがそれではここまで豊かな星にはならないだろうし、前者が正しいのだろう。
そう、1人納得していると、王太子が話を続けた。
魔王が誕生するとそれまで干渉してこなかった魔物たちが軍隊のような行動をとって人間を襲うようになるそうだ。騎士などがいるなら彼らに任せればいいように思ったが、魔王の傘下となった魔物はそう簡単に倒せないらしい。勇者でもなければ..。
ただ、魔王の出現にも周期はあって、100年に一度現れるそうだ。主要な4カ国である、ラピス王国、スリサル公国、商業国家シリン、そしてこの国、ヒビス王国はローテーションで勇者を召喚しているそうだ。今回はヒビス王国の番というわけだ。
「話を聞く限り、各国は協力できているんですね。魔王がいることによって戦争も起こっていないようだ。」と白木がつぶやく。
王太子は少し目を見張った。
「そうだ。魔王が出ることで各国の協力関係は保たれている。驚いたな、君たちは高度な教育を受けているのか?」
「この世界での教育がどう言うものかは知りませんが、俺たちは9年の義務教育があって、その後も7年くらい学べるんです。」
ーそんなにも先進的な国があるのか..。
どうやらこの国の教育は日本ほど発達していないようだ。
「君たちの世界はとても興味深い。あとで詳しく聞かせてくれ。とりあえず今は今後のことについて話す。」
(そうだ、このあと私はどうなるんだろう...。)
一抹の不安を覚えながら、王太子の話に耳を傾けた。