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召喚されましたが、帰ります  作者: 犬田黒
第三章 ラピス王国
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36 マリアのお茶会

 セヴェルから戻ってきた夜をマリアとメアリーが出迎えてくれた。


「お姉ちゃん!」


「お帰りなさいませ、ナツメ様。」


 マリアが夜の胸に飛び込んだ。メアリーも微笑ましそうに見ているが、少し青ざめて見えるのは、空と翠がいるからだろう。マリアは夜に頭を撫でられていて、空達には気づいていない。


<ぼくもなでてー!>


 空が夜とマリアに向かって飛び込もうとして、すんでのところを翠が後ろから止めた。そこでマリアは、ようやく空達に気付き、目を丸くして夜の背中に隠れた。夜はその様子を可愛らしく思い、頬を緩めた。


「んふふ、大丈夫だよ、この子たちは私の仲間なの。目の青い狼が空で、緑の狼が翠っていうの。空、翠、この子は私の妹のマリア。仲良くしてね。」


「ナツメ様…この子たちシルバーウルフですよね?Aランクの魔物の。どういうことですか、狼ってなんですか!」


 あーあーキコエナイキコエナイ。夜がスルーを決め込むのを見ると、メアリーは標的をキリヤに変えた。キリヤが詰められ、たじたじになっているが、そこは頑張ってもらおう。


 そっと夜の背中から出てくるマリアを興味津々に見つめる二匹。空と翠に匂いを嗅がれくすぐったそうにしている。翠は彼女が精霊の愛子であることに気付いたようで、夜に直接脳内で確認する。一方の空は一切気づいていないようで、マリアに撫でられ嬉しそうに尻尾を揺らしていた。


「お姉さまの仲間なら、この子たちも呼ばなきゃダメだね…。」マリアの呟きに夜が反応した。


「ん?何に呼ぶの?」


 するとマリアはすくっと立ち上がり、未だキリヤを詰めているメアリーのもとへ向かい、耳打ちした。メアリーはすぐに訳知り顔になり、ポケットから何か紙を取り出した。それを受け取り、すぐさま夜の元へ戻ったマリアは、紙を夜に差し出した。


「何だろ…あ、お茶会の招待状?!」


 紙には拙い字で、”おちゃかいへのごしょうたい“ と書かれていた。可愛すぎてにやけてしまう夜。頬を何とか元に戻し、マリアに返事をする。


「ぜひ、参加させてくださいな、お姫様。」


 そう言い、片膝をついてマリアの手を取った夜に、マリアははにかんで、おおかみさんも来てね、と言った。突然の招待に喜ぶ空と翠。メアリーは準備をしなくちゃ、と慌ててこの場を離れる。ようやく解放されたキリヤは、どこかほっとしたような顔をしていた。マリアはキリヤにも顔を向け、騎士さんも…と招待した。


 これにはさすがのキリヤも心を打ちぬかれたようで、騎士の礼を取りながら、感謝の言葉を述べた。


ーお菓子が食べられる…!


 …いや、お菓子が目当てのようだ。ごつい騎士ながら菓子好きとは、ギャップ萌えに最適な男である。マリアはキリヤの返事に嬉しそうに頰を赤らめ、三人と二匹でメアリーが準備しているであろう会場へ、ゆっくりと向かった。


 道中は夜のセヴェルでの話にマリアが興味を示し、ずっとその話をしていた。塔から出てきたばかりの頃は殆ど笑えなかったマリアは、今では少し不器用だけれど笑えるようになった。感情も表に出るようになり、やりたいことも言ってくれるようになった。とても喜ばしい成長だった。


 お茶会の会場は離れにある庭園の中だった。そこは、小さいながらも可愛らしい花々が咲き乱れていて、まるで秘密の花園に出てくるような所だった。ちょうど用意も出来たようで、メアリーが笑顔で出迎えた。


「こちらのお席へどうぞ、ナツメ様、マーシャ、ああキリヤ様も。この場は非公式ですから。」


「ちょっと待って、マリアのことマーシャって呼んでるの?」


 用意された美しい会場よりそっちが気になった夜にメアリーは愛称なんです!とドヤ顔を決めた。


「ほら、ナツメ様いなかったでしょう?その間にとぉーっても仲良くなったんですよー。ねぇ、マーシャ?」


 メアリーの言葉にマリアもといマーシャは嬉しそうに微笑んだ。


「お姉ちゃんも、マーシャって呼んでくれる?」


 マーシャの可愛いお願いに首を横に振るわけがなかった。


「もちろん!!!マーシャって可愛い響きだねぇ。」


 マーシャに心を許されたようでデレデレしてしまう。この世界で愛称は、家族や友人、恋人のような親しい相手にしか許さないらしい。これからはマーシャと呼ぼう、と心の中で誓った。


 席に着くと、フルーティーな香りの紅茶と甘い匂いのするお菓子がテーブルに置かれた。キリヤの目は心なしかキラキラして見えた。主催者であるマーシャの方をチラチラと見ているので、ゴーサインを待っているのだろう。マーシャもそれに気付き、どうぞとキリヤを促した。なんて気遣いのできる子!


 その後、空と翠にもお菓子が用意され、二匹はペロリと平らげた。人間の食べ物を動物が食べていいのか不安だったが、食べても平気なようだ。ビバ異世界。


 そうしてこの日は心ゆくまでお茶会を楽しんだ。歌を歌ったり、マーシャが頑張っていたことや好きなこと、やりたいことを聞いたり。マーシャの話を聞いて、夜は雪のことを思い出した。


 (ああ、雪もこうやっていっぱい話してくれたなぁ)


 マーシャとの時間も捨て難いが、やはり元の世界に戻りたい。その思いが強くなった時間だった。

マリアの愛称マーシャってことなんですけど、これはスラブ系の国 (ロシアやウクライナなど)で使われているものです。世界観が違うかもだけど、マーシャって可愛いじゃないですか!!シャの感じが好きなので無理矢理ねじ込みました。マーシャでお願いします!

いいね、ありがとうございます!ブクマも増えてて嬉しいです!!

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