34 仲間ゲット☆
ふと、夜は視線を感じてそれまで埋めていた顔を上げた。周囲を見ると、白いもふもふがひとつふたつみっつよっつ....沢山いた。あまりにこちらを見てくるものだから、急に恥ずかしくなって白雪に耳打ちする。
(ねえ、あの子達だれ?いっぱいいるけど)
<ああ、彼らは私の家族です。ヨル様が歌ってくださったお陰で彼らも正気に戻りましてね。そうだ、どうかこの子達を連れて行ってくださいな。>
白雪の言葉に反応してか、2匹の狼が前に出た。夜が歌っていた時に真っ先に飛び出した2匹だった。
<彼らは私に匹敵する力を持っています。きっとヨル様の役に立ちますよ。>
2匹は嬉しそうに尻尾をブンブン振っている。それはもう、千切れそうなほど。
「白雪は?私たち、契約したんでしょ?」
<私にはこの森を守る役割がありますから。それに、ヨル様のお陰で力が戻ってきているんです。もう簡単に、魔族に侵入などさせません。>
そう言うと、ふふんと胸を張る白雪。
「そうなの...役割なら仕方ないね....。一緒に居たかったなぁ。」
しゅんとして夜が呟くと、白雪は娘を見るような暖かな眼差しで夜を見た。
<ヨル様が願うなら、いつでもお側に参りますよ。それに、離れていても私たちは契約の効力で繋がっています。大丈夫、いつでもお話はできますよ。>
そう言って、夜を慰める様に頬に顔をすり付けた。暖かく柔らかな毛が夜の頬をくすぐる。夜は静かに笑うと、ありがとうと言った。
「それじゃあ遠慮なくこの子達連れて行こうかな、君たち名前は?」
<ないよ!てんしさまがつけて!!>
青い瞳の狼が嬉しそうに口を開きながら答える。
<私もないので、名付けを頼みたい、天使殿。>
緑の瞳をした狼はとても紳士的だった。それでも尻尾をゆらゆらと揺らしている様子から嬉しいのが見て取れる。
「んん...こりゃ難問だな。1日に何度も名付けすることになるとは....」
うーんと唸り、夜は何とか名前を捻り出した。
「青い目の君は、空!緑の目の君は翠!でどうかな?」
夜が恐る恐る様子を伺うと、どうやら2人は気に入ったようで、満面の笑みだった。
<すい!おれそらだって!>
<空!私は翠だ。今後はきちんと名前で呼ぼう>
一匹は嬉しさのあまり走り回り、もう一匹は嬉しそうに胸を張る。
「喜んでもらえたみたいでよかった、私のことは天使様じゃなくて夜って呼んでね?」
<よるー!!!!>
<あ、空!夜様に飛びつくんじゃない!>
空は嬉しさのあまり夜の胸に思いっきり飛び込んだ。うわっという声と共に夜が倒れる。
<空?ヨル様を押し倒すとは何事ですか?>
白雪が一声あげると、空はすぐにおとなしくなった。
<ごめんなさい....。>
しゅんと項垂れる空に、起き上がった夜は優しく撫でてやる。
「だいじょぶだよ、空。これからよろしくね?翠も!」
その光景を和やかに見ていた白雪は突然声を上げた。
<もう正午になるじゃないですか!ヨル様あなたのお迎えがもういらっしゃいます。さぁ、早く。空、翠、道案内を!>
そう言うと、白雪は夜を鼻で押し、ぐいぐい前進させる。空と翠は今にも駆け出しそうに夜の様子を伺う。
「白雪、ありがとう。また会いに来るからね。」
ぎゅーっと白雪に抱きつく夜。そのままパッと離れて空と翠の元へ走って行った。
「じゃあねー!みんな元気でねー!」
<ばいばーい!!>
<皆の者、達者で。>
各々の挨拶に狼たちは嬉しそうに遠吠えで答えた。
沢山の声を背に夜たちは森の中を走った。途中で疲れた夜を翠が背中に乗せ、また駆け出した。森の出口はすぐに現れ、そこには確かにキリヤとエイダンの姿が見えた。
キリヤとエイダンは狼に乗ってきた夜に驚いているようで、目を丸くしている。彼らの前で翠と空が立ち止まり、夜は翠の背中から飛び降りた。
「ただいま!エドワード伯は元気かな?」
「お...お前!どうしたんだ、このシルバーウルフたちは!」
エイダンの声に2匹が警戒して唸り声を上げる。
「私の仲間!ねーお腹すいた。屋敷に戻ろうよ?」
ね、キリヤと肯定しかしない護衛騎士の話を振る。案の定キリヤは夜の言うことにこくこくと頷いて、さっさと馬に乗った。その様子にエイダンは拉致が開かないと判断し、夜を馬車の中へ通した。
「屋敷へ。」
エイダンがそう言うと、馬車は発進した。いつの間にやら乗り込んでいたシルバーウルフたちによって馬車の中は酷く狭い。
「合法もふもふだぁー。」と夜はよく分からないことを言ってシルバーウルフの毛の顔を埋めている。エイダンは諦めてため息をついた。
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