表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚されましたが、帰ります  作者: 犬田黒
第二章 それぞれの冒険
32/73

31 シルバーウルフと歌姫

 父の口からでるモヤが人型を形作った時、突如として二匹のシルバーウルフが現れた。体長2メートルもある体をしなやかに動かし、父の口から現れた()()に噛み付く。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ......!!!!!!!」


 森に響き渡るその悲鳴は父からではなく()()から発せられているようだった。


 そして遂に()()は完全に姿を現した。真っ黒な体は闇そのもので、顔は浮き出るほどに白く、隙間から覗く目だけがギョロリと動き、命を感じさせた。


 恐怖で声も体も動かせないでいるエイダンをシルバーウルフはさっと首根っこを咥えると夜の背後まで連れて行った。


 夜は未だ歌を歌っていた。顔は険しくなり、夜の歌に呼応するようにシルバーウルフもゾロゾロと森から出てくる。


「く....くるし....。」


 魔族が辛そうに喉を掻きむしりながら咆える。その体からは毒のようなものが滲み出ていて、夜が浄化したところを黒く覆い尽くした。


 シルバーウルフが夜を横目に魔法で魔族を攻撃する。夜もその助けがあってか、徐々に声を大きくしていく。夜がひと振り手をやると、魔族の左手に鎖が繋がれた。それまで喉元にあった手は地面へとぐんっと引っ張られる。また夜が一振りすると右手に鎖が繋がれ、手が地面へと引っ張られる。


「うぅぅ....このクソアマが...。ようやく...ようやくここまで来たのに....!」


 そう魔族が叫んでいる間にも夜は魔族の体を鎖で雁字搦めにし、徐々にその体をキツく締めていく。


「うぅぅ...うぁああああああああ!!!!!!!」


 大きな絶叫が森にこだまし、鎖が外れるのと同時に魔族の体は砕け散った。後に残るのは、その魔族の残滓のみ。エイダンはその光景に驚き茫然としていたが、エドワードの呻き声を聞くと、すぐエドワードの元へ飛んでいった。


「父上....!ご無事ですか...!!」


 父は小さく呻き声をあげている。よかった、死んではいないようだ。すると、はぅぁぁぁ〜という訳の分からない声をあげて夜が倒れ込んだ。と思ったら、シルバーウルフがすんでのところで夜の下に体を捩じ込んだ。そしてそのまま立ち上がると、軽快に駆け出し森の奥へと夜を連れて行ってしまった。


「え、ちょ、なん...<おい人間>


 エイダンが困惑していると頭の中に声が響く。何事かと思って周囲を見ると、シルバーウルフが怒ったようにグルゥと唸った。


<天使様はこちらで預かる。また明日、正午に来るように、との伝言だ。>


 その時、エイダンはAランクの魔物はテレパシーを使えるといった文献を思い出した。


 (まさか本当に使えるとは....。)


 人間を襲わない高い知能を誇るAランクの魔物、シルバーウルフ。そのプライドの高さ故に人に姿を現すことも滅多にないと聞く。


<では伝言は確かに伝えた。去れ。>


 そう言うと、シルバーウルフはエイダンをじっと見つめた。どうやらエイダン達が立ち去るまではここにいるようだった。


 エイダンはその視線の鋭さに耐えきれず、すぐに出ます、と言って父を担ぎ上げ慌てて回れ右をした。そしてそのまま振り返らず、一目散に馬車へと戻った。


 馬車まで戻ると、夜の護衛騎士キリヤは訝しげな顔をして、歌姫様はどこかと問うた。


「明日また迎えに行くことになった。今日はこのまま屋敷へ戻ろう。」


 そう言うと、キリヤは渋い顔をしながらも馬に乗った。エイダンは父を馬車の中へ横たえ、自分も乗ると御者に出すよう指示した。


 馬車が進み、すぐに森は遠くになった。夜が無事であるよう祈りながら、エイダンは見えなくなった道をずっと見つめた。

ようやくエイダン視点終わりました...。本当は、ここで夜が歌っている歌ちゃんと歌詞も書きたかったんですけど、いかんせんエイダンは言葉を理解できないものですから...。

それと、前話を少しだけ変えました。でも一行だけなので、お気になさらず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ