02 帰れないらしい
しんっと静まり返る広間。一斉に顔がこっちを向く。例の4人も私の方を向いて驚いている。
―え、もう1人いた..?!
はい。いましたよ。あなた達のすぐ後ろにね..!
そんな声より、周りの声の方がもっと重要なことを言っていた。そう、まるで、、、、
「申し訳ないが、今の我々には君たちを元の世界に帰す方法はないのだ。」とすまなそうに整った形の眉を下げた王太子殿。
周囲の声で先に知ってはいたが、やはり面と向かって言われると怒りが湧いてくる。
何が申し訳ない、だ。本心ではもっと、ずっと醜いことを考えているじゃないか。
ー神に選ばれ召喚されたと言うのに、生意気な女だ。そもそも我々の世界を救ってもいないのに、帰りたいとは....。
これが王太子1人だったらまだしも、周りに立っている貴族と思わしき人みーんなが思っている。
(勝手にそっちの都合で呼んでおいて、何なんだ、その態度は、、!てか普通あるだろ!帰る方法!!なんで一方通行なんだよ!!!)
そしてこう言う時、夜は今までの経験から自分の考えをぶち撒ける性質だった。もちろん、黙って耐える方がいい事もあるが、それではやられる一方だ。舐められたら、終わり。これが、夜の15年余りの人生で学んだ教訓だった。
「はいそうですか、って言うわけねーだろ!こちとら元の世界で家族が待ってんだわ。妹のお迎え行かなきゃだし、夕飯だって作らなきゃいけない。洗濯物も干さないとだし、バイトだって今日シフトあったのに!!」
一気に捲し立てて相手の様子を伺う。
言い返されるとは思っていなかったようで王太子を含め皆一様に呆けた顔をしている。
ーなんと野蛮で強気な娘だ...。こんなのが世界を救うのか?どっかのカツラ野郎からそんな声が聞こえる。
(野蛮は余計だ、ハゲ)
常に好戦的であれ。これも人生の教訓だったりする。
「帰れないって言うんなら、それ相応の責任はとって。私に特別な力がなくとも衣食住の保障は絶対だから。」そういうと、他の4人もハッとして一斉に話し出す。
「確かに!今どき勇者と見せかけて実は能力ないみたいなパターン多いし!追い出すとかなしで頼む!」
「俺も、あんた達にとってどんな利益があんのかまだ分かんないし、なかったとしても手のひら返しーみたいのはやめて欲しい。」
「あーわたしもー。衣食住はそうなんだけどー、帰れないんならコスメとか服とかもかわいーのほしーなー。」
「私も。食べ物だいじ。美味しいお菓子求む。」
四者四様の答えではあるが、みな思うことは同じ。
そこでずっと黙っていた黒髪天パのローブを着た男が前に出た。どうやら魔法使いのようだ。
「まだ、鑑定を行なっていなかったな。これから行うが構わないか?王太子殿。」それにああ。と答える王太子。
「それでは、鑑定を行い君たちの職業を見させてもらう。こっちに来い。」