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召喚されましたが、帰ります  作者: 犬田黒
第二章 それぞれの冒険
22/73

21 マリアの夢

 夢を見た。とても綺麗で現実にはない夢。


 父親がマリアの頭を優しく撫でて微笑みかける。母親もその様子を楽しそうに見つめている。1番上の兄が絵本を持ってきてくれて、2番目の兄は遊ぼう、と誘ってくれる。姉はそんな2人からマリアを隠し、一緒にお茶しましょう、と笑いかける。


 でも、みんなの顔はのっぺらぼうだ。顔を知らないから。一度も見たことのないマリアの家族。マリアは今日も未練がましく夢を見る。愛されたくて、愛したくて。


 その時、どこからか歌が聞こえた。一気に現実に引き戻されるマリア。そういえば今日は乳母が来ていない。昨日、お披露目式がどうとか言っていたような...


 その歌は初めて聞いた歌で、どこの言語なのか何も分からない。それでも、想いが強く伝わってくる。


 自由であれ、好きなことをして、あなたにそれを手折る権利はない、楽しい、踊りたい、嬉しい!


 こんなにたくさんの暖かな想いをマリアが初めて受け取った。


「じゆう....?」


 初めて聴いた言葉にマリアがぼそっと呟いた。すると、何処からか声が聞こえてきた。


<自由を求めるか、精霊の愛子よ。>


「.....だれ?」


<私は風の精霊王だ。そなたが望むのならどこへだって連れて行こう。>


「....あのうた、」


 マリアがそう呟くと、精霊王はああ、と答えた。


<彼女はこの世界に召喚された歌姫だ。彼女に会いたいのか?>


 その言葉にマリアが少し思案した。会いたい?そう言う気持ちはいつからか薄れていた。


「....会いたいのかも。」


 精霊王はその言葉に嬉しそうに声を弾ませた。


<そうか...!嬉しいな、初めての愛子の願いだ。何でも聞こう。>


 そうしてマリアは風の精霊王の手により、初めて外に出た。塔の周りは草花が生い茂っており、初めて見るその姿にマリアは目をキラキラとさせた。


「....すごい!こんなに綺麗な色をしてる!あ、空が遠い!、?これなんだろう」


 マリアは初めてみるもの全てに興味津々で、可愛らしいく走り回っている。しかし体力がないのかすぐに足を止めて蹲ってしまった。慌てて精霊王が話しかける。


<どうした、愛子よ!?>


 精霊王の心配そうな声にマリアはハッとして顔を上げる。心なしか顔色が悪く見える。


「あのね、きゅうに走ったから、びっくりしちゃったの。ちょっとねたいかも..。」


 そう言うマリアはすでに寝かけていた。精霊王は慌てて彼女をベッドの上に運んだ。少女はすぐにすぅと言う寝息を立てて眠ってしまった。


<....すまない、愛子よ。我々は君の願いがなければ動けないのだ。しかし王も何をやっているのだ、魔力がないからとこんな所に閉じ込めおって!>


 それから精霊王は優しい風をマリアの元へ送る。


<今はしばしの夢を。我らが愛子に幸せがあらんことを。>


 その後、夜会が始まる時間まで寝入ったマリアは、夜に会うため精霊王にまた外に出してもらった。


 途中、マリアの様子を見に来た乳母に外に出たことがバレてしまい、追いかけられたが、マリアは無事に夜に会えた。


 夜に手を握られながら、マリアは歌声に体を預けた。優しい腕がマリアを抱き上げる。


 (まるで夢みたい)


 そう思いながら、マリアは眠った。初めて痛みを感じない体を夜にぴったりくっつける。


 (夢なら醒めなきゃいいのに)


 マリアは次に目を覚したのは2日後のことだった。




次回は夜視点です。

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