01 召喚されました
高校での夏目夜はギャルとして遠ざけられる存在だ。いつもヘッドフォンをしていて、どこか上の空。唯一話すのは付き合っているらしい彼氏の高野龍太郎とだけ。そんな彼女は今、見知らぬ人々に囲まれて発狂寸前だった。
(なにこれ?!急に光ったと思ったらわけわからん人間に囲まれてるんだけど?!てかうるっさい!!)
先ほどから彼女の頭には数多の声が響いている。
ー召喚は成功だ!
ーこれは異世界の勇者?ずいぶん見た目が幼いな...
ー5人か、例年では4人という話だが今年の魔王がそれだけ強いということか?
ーこれで我々は救われた!etc...
夜が混乱している中、目の前に立っていた金髪碧眼のザ・王子様みたいな形をした男が話し始めた。
「急な召喚で申し訳ない。私はリデル王国の王太子アルベールという。君たちには世界を救ってもらうべく、召喚させてもらった。」
その言葉に一気に心の声がうるさくなった約4名。夜と共に召喚されたクラスメイトたちである。
「やば、異世界転移とかガチであるんだ!」
ー俺、勇者だったりして!!
と黒髪の少年。彼の友人らしい少年も声を上げる。
「いや、ふつーに考えておかしいだろ。何だこれ、てか何でお前そんな順応してんの??」
ーなんかのセットか?それにしては随分リアルだけど
尤もな意見だ。そして心の声に関しては残念ながらリアルであるとしか言いようがない。周りの声を聞いても、
ーはやくドッキリのテロップだしてこの子たちに説明しないとー
みたいな内容は一切聞こえてこない。
「えー王子?ちょーイケメンじゃなーい??」とボブの少女が隣の黒髪ロングに話しかける。
「いや、そこ?確かにイケメンだけどさ....」と呆れたように首を振る。
(なんかみんな、ずいぶん呑気じゃない...?)
夜はそんなことよりとにかく帰りたかった。さっきまで隣にいるはずの龍太郎がおらず、声まで全く聞こえない。早く妹の保育園に迎えにいかなければならないのに、、。なんなら夕飯も作って弟妹の世話をしなければならないのに、こんな所で時間を食っている暇はない。
それに先ほど気になることを言っていた。
ー例年では4人という話だが...。
これはおそらく夜は巻き添えにあったということなのだ、きっと。先を歩いていたこの4人のすぐ後ろを歩いていたのだ。自分がここにいることは何かの間違いなのだ。帰してもらおう。そう思い、声を上げた。
「すみません、帰してもらえませんか?」