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召喚されましたが、帰ります  作者: 犬田黒
第二章 それぞれの冒険
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18 夜の歌声

 門が上がり、馬が歩き出す。大きな拍手と歓声に交じり聞こえてくるたくさんの声。フロート車が完全に門の外に出ると、馬は一度停止した。


「さてそれでは、今回召喚されました勇者たちを紹介していきまーす!」


 司会の声が拡張機を通して大きく響く。夜は自分の顔が青ざめているのを感じた。一護が心配そうにこちらを見ている。


「勇者ヨウーーー!!!パーティーのリーダー兼ムードメイカー的存在の彼!勇者の鎧も相まって今日は一段とイケメンに見えますねー!!!」


 ヨウこと黒井が国民に向かって手を振り、笑顔を向けた。そこら中で女子の歓声が上がる。


「剣聖アキラーーー!!!彼は爽やかイケメンですねぇ。我らが騎士団長をあっと言わせたその剣の腕前で必ずや敵を叩き切るでっっしょう!!!!」


 アキラこと白木も黒井に倣い、手を振っている。それにしても先程から司会、なんか変ではなかろうか?


「そしてそして、我らが男の憧れ!女忍者(クノイチ)アイナーーー!!!今日もほんわかフェイスで我々の心を癒しています。ありがとぉーーー!!!」


 アイナこと一護が手を振ると今度は男性から歓声が上がった。女性はどこか不満気である。


「続きまして、賢者マイーーー!!!知的少女の外見からは考えられない食いしん坊!だがそのギャップがまたいい!!!えー王宮の料理人からは食べっぷりが見てて嬉しい、生きる希望だ、もっとお菓子あげたい、などの反応が上がっています!」


 どこか誇らしげに手を振るマイこと清水。彼女の頭の中はすでにお菓子で埋め尽くされていた。


「これで最後のメンバーです!我が国に舞い降りた天使、歌姫ヨルーーー!!!元は金髪だった髪も今ではすっかり綺麗な黒髪ですねぇ。賢者マイと被りますが、歌姫はヨルは癖っ毛!いいですねぇ。歌、聴きたいですねぇ。」

 

 相変わらず変な司会である。どうやらあのハゲ貴族が司会らしい。


 夜が控えめに手を振ると周りの歓声が一段と大きくなった。大きな音とたくさん聞こえてくる声に頭が痛くなってきた夜だったが、これからが本番だ。


「さあそれでは、歌姫に祝福の歌を歌ってもらいまっっしょう!!!!」


 司会の言葉に、拍手や歓声が徐々に小さくなる。


 夜は両手にもった楽譜を顔の前まで持ち上げ、そして、、、


     ビリビリに破いた。


 突然の奇行に誰もが驚いた。しかし次の瞬間には驚きがさらに大きくなった。


 夜が歌を口ずさみ始めたのだ。ハイヒールを脱ぎ捨て、フロート車から飛び降りた。飛び降りた先は硬い地面、しかし、夜が地面を踏むとそこから草花が生えた。夜の足を守るように。


夜は歌い続ける。自由を、平和を願って歌う。


 わたしは生きている、体に流れる血を感じてる


 私の大きな心を駆け抜けている


夜は歩きながら歌う。足元には草花が生えては消える。国民は次第に、夜の歌にじっと耳を澄ませていた。


 私は歌い続ける。la–daーda,la–da−dee


 昨日は私にとってもう死んでるの、私はいま、自分の足で地面を感じてる!


 サビに入るとみんな手拍子をし始め、踊り出すものまで現れた。あまりに夜が楽しそうに踊り、歌うから。


 大衆が狭い所で踊り出したため、前に押し出された幼い女の子。夜は歌いながらその子に近づき、抱き上げ、花を髪にさしてやる。


 泣きそうだった少女はすぐに満面の笑みになり、母親の元へ戻った。


 夜は楽しそうにくるくる回りながら歌う。


 あなたに私は止められない、あなたに私は倒せない


 くるりと王族のいる方に振り向き、その歌詞を口ずさんだ。


 (あなた達が何をしても私は折れない、隷属の歌なんて歌うくらいなら反抗してやるっ。)


 実際のところあの楽譜を用意したのは王族ではないが、今の夜には知るよしもなかった。

一応、この歌詞の元ネタというか、曲はあります。知りたい方は、コメントか何かで聞いてくださいな。ここで夜は歌っている曲は、読んでくださっている皆さんのお好きな曲を当てはめていただけたらなぁと思います。

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