13 2ヶ月後に迫るもの
ユルグとの会話から数日後、今日5人は王太子アルベールから召集を受けていた。アルベールの執務室へ向かうと、すでに4人は部屋の中にいた。
アルベールは夜の方に一瞥すると、目で部屋の中へ入るよう促した。
「全員揃ったな。早速で悪いが、本題から。今から二ヶ月後、君たちのお披露目式を行う。パレード形式で行う予定で、午前は城下町をぐるりと一周してもらい、国民に君たちの顔を見せるのがメインになる。そして午後は、他国からやってくる重鎮達との夜会に出てもらう。ここでは様々な貴族や王族と関わることになる。」
そこで言葉を区切るとアルベールは5人の顔を順ぐりに見た。
「よって、君たちにはこれからマナーやら諸々を叩き込んでもらう。訓練も並行して行われるから、まあ、頑張ってほしい。」
その言葉に5人は顔を歪ませた。代表して黒井が声を上げる。
「そんな!いまも勉強でちょー大変なのにこれより大変になるのかよ?!」
「.....確かに、正直訓練と並行は厳しい。せめてマナーだけとか、。」
清水の言葉に一同が頷くと、アルベールは暗い顔をしながら口を開けた。
「......実は、その翌日なんだ。君たちが魔王討伐の旅に出るのは.....。」
「「「「え?!!!!」」」」
1人先に聞いていた夜は特に驚きはしなかったが、4人は目を大きく見開き、え?!!の口で止まったままでいる。
「俺はもう少し後がいいと言ったんだが....。何でも魔王は生まれたばかりで、これから徐々に力が増大していくらしい。そうなると、国の所々で魔族や魔物たちが活発になってしまう。だから、それらを倒しながら経験値を得て魔王に挑むんだそうだ。」
「......そういえば、騎士団長も経験がどうとか言ってたなぁ。でもまさか二ヶ月後にはここを出るなんて....。」
黒井の言葉にアルベールも申し訳なさそうに眉を下げた。
「ひとまず、俺も出来ることは特にない。これは決定事項でな。....ああそうだ。ナツメ嬢、君には城下町の周回と夜会で歌を歌って欲しいんだ。」
急にこちらに顔が来て夜はびくりと肩を動かした。
「....歌、ですか。それは拒否してもいいやつですかね。」
「いや、これも決定事項だな。ユルグから聞いているだろう、君の力がどういうものか。正直他の貴族は今すぐにでも歌ってほしいと言っているが、どうせならパレードの時と引き延ばしたんだ。」
アルベールの言葉に嘘は見られなかった。
「.....そうですか、まあそう言うことなら。でも歌って何を歌えば?」
「それはこちらで用意する。歌に関しては特に練習する必要もない。歌姫が歌えばどんな歌でも綺麗に聞こえるんだそうだ。ま、そう言うわけだ。悪いがまだ仕事が残っていてな。今日はこれで解散だ。」
アルベールはそう言うと、5人はあっさり外へ帰された。どうやら本当に仕事が忙しいらしい。次期国王の大変さは一介の高校生には分かるものではない。
夜が部屋へ戻ろうと足を踏み出すと、一護が話しかけてきた。
「なつめっちー、今日女子会しない??」
そう言いながら清水の腕もぎゅっと掴んで離さない一護。
ー逃げたられたらぁ隠密使ってなつめっちの部屋忍び込んじゃお
.....なんとも物騒なことを考えるJKである。圧が強い、圧が。
「......わかったよ。どこでやるの?」
夜が堪忍したように承諾すると一護はその場で飛び跳ねた。清水も釣られて飛んでいる。
「なつめっちの部屋!夜の6時にそっち行くからついでにご飯も食べよー。じゃ、またねん。」
そういうと清水を連れてさっさと歩いて行ってしまった。それにしても、清水がずっとご飯のことばかり考えていた事が夜的には非常に気になった。
(食いしん坊なんだろうなぁ。清水さん)
そんなことを思いながら、夜も部屋に戻る。部屋に戻ったらメアリーに女子会のこと伝えとこう。
実は女子会が生まれて初めてな夜。そもそも女子の友達も皆無な夜にとって、彼女たちとの会話はとても新鮮なものだった。気づかないうちに足取りが軽くなる。
(女子会....たのしみだ)
夜から女子会の話を聞いたメアリーは夜以上に嬉しそうにしていた。何なら飛び跳ねていた。




