表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚されましたが、帰ります  作者: 犬田黒
第一章 召喚されました
12/73

11 歌姫という存在

 軽い眩暈を覚えた夜は、足が地面についた途端少しよろめいてしまった。着いた部屋は書斎のように見え、本や書類が大量に置かれている。部屋の奥にはベッドが置かれ、所々にビーカーやらフラスコやらも見える。


 ユルグは椅子に積んであった本をベッドに移し、どかっと腰掛けた。そして夜に目をやると、座れ、と目の前の椅子を顎で指し示した。


 夜は椅子に座ってからも沈黙は続いた。.....非常に気まずい。先に沈黙を破ったのはユルグだった。


「やはり歌姫は特別なのか....。」


 ユルグの1人ごとに夜はついに叫んだ。


「〜〜っだから歌姫ってなんだよ!!!」


 夜の突然の叫びに驚くユルグ。


「まさか、王太子から聞いてないのか?.....そうか、あの野郎いっつも中途半端なことしやがって。」


 前から思っていたが、ユルグ、だいぶ不敬ではなかろうか。困惑した顔で夜が黙っていると、ユルグはふーと息を吐き出し、口を開いた。


「歌姫ってのは聖女の上位互換の存在だな。神に最も近いと言われている。その歌声一つで土地を潤し、どんな病気や怪我でも治す力を持っている。歌姫にいる国は平和で幸せな生活が約束されるんだ。だから、魔王討伐というよりは国で王太子なんかと結婚して王妃になるパターンが多いな。」


 なるほど、あの時の王の言葉、


ー各国への知らせは引き延ばした方が良さそうだ。彼女を守るためにも、アルベールと婚約させるべきか....。

 

 これは夜が他の国に狙われるのを恐れての考えだったのだ。確かに魔王討伐も大事だけど、それ以上に国豊かで平和であることが手放しに約束されれば、良いことこの上ないだろう。


「んで、こっからが大事なところ。お前がさっき使った魔法、あれは無口頭魔法って言われる高度な技術を用いたものだ。天才な俺でも習得したのは10歳くらいの時だった....。つまり、賢者以上の魔法の才に歌姫っていうダブルコンボで、お前は他国にとっても喉から手が出るほどほしい人間って言うわけだ。」


 そこまで一気に話すと、ユルグは指を空中でひょいひょいと動かしビーカーに紅茶を注いだ。.....ビーカーって紅茶用なんだ??


 夜はゆっくりと言葉を選んで発した。


「私が狙われる可能性があることも、歌姫ってのが重要なことも分かった。でも、私この世界に留まる気はない。絶対に帰るって約束したから。」


 ユルグは一直線に見つめてくる夜の瞳から強い意志を感じ取った。


ーいい目してんなぁ。まあ俺は研究さえできればなんでもいいけど。


 ユルグは手を怠そうに揺らすと、事実を伝えただけだ、と言った。


「正直お前は帰ろうが何しようが俺は一向に構わない。そもそも召喚なんて、体のいい言葉使ってるが、ありゃ一瞬の誘拐だ。」


 この国の人がそんなこと言っていいのだろうか。いつか不敬罪で死にそうな男である。


「それに俺は自分の尻は自分で拭け派の人間だからな。この世界の問題に他の世界を巻き込んでること自体間違ってんだよ。」


 そうしてゆっくりと夜に向かって微笑む。


「だから、お前は自分のやりたいことを貫け。」

ーついでに俺の研究付き合え、モルっ、、ナツメ


 モルモットって言いかけたな?今。良いことを言っているのに、勿体無い男である。だが、研究一筋のユルグだからこそ、夜は信じられた。


 夜もうっすら微笑み、ありがとうと呟いた。


 なんだかいい雰囲気だが、やはりこの男は壊す。


「んで、本題!!俺の研究手伝え!!!!」

よければブクマといいねお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ