六話
その都市は丘都市と言うだけの事はあった。周りより少々高い丘の上にありそこは人が手入れをしているであろう穀物に囲まれていた。
ソールが想像していた以上に大きな都市で遠目からからでも流通に携わっているであろう人達がたくさん確認できた。
穀倉地帯に入る時に小さな検問所がありディアナがそこにいた兵士の様な人達と話し始め話し終えると兵士は宙に何かの文字を書き始める。
どうもそれは何かの魔術だった様で書き終えると鳥の形になり羽ばたき町の方へと飛び立った。
「ティアさん。今の鳥も魔術ですか?」
「そうですよー。音とか字を運ぶ魔術です。目的の相手や特定の場所に着くと録音した音が出たり字が出たりするんですよ」
「なるほど。それならディアナさんが使えば話は早かったのではと素人の私は思うのですが?」
「ソールさんが素人とはちゃんちゃら可笑しいですね!確か今の魔術は複合系の魔術に分類されて扱いが難しいはずなのでお姉ちゃんは使えないと思います。今の兵士さん達は穀倉地帯に魔物が来た時にすぐに知らせる役目の兵士さんですね」
ソールとティアが話し終えたタイミングでディアナが戻って来たのでまた魔導車は進み始める。
ある程度進むと穀倉地帯の上に石のような物でできた丸く光る物が飛んでいるのにソールが気づき指さして質問する。
「あれは魔物を発見すると警報を鳴らす魔導具ですね。流石に範囲が広いのと魔物が丁寧に街道を通って来てくれる訳ではないので見落として侵入した物を探してくれます」
「魔導にも色々とあるんですね」
「はい。ゲーターの様に遠目からでも分かるサイズならわかりやすいんですけど、小動物や犬猫くらいの大きさだと本当にみつけづらいですからね。魔物は保有する魔力が大きいと巨大化する傾向があるので小動物程度だと私やティアでも難なく倒せるので問題は無いと言えば問題無いのですが……」
「用心するに超したことは無いと思いますよ。魔物って賢いですし」
この世界で戦った魔物の数は多くは無いが、一人で勝てないと分かれば仲間を呼び連携しようとする程の知能はあったので魔物によっては人より賢いのもいるだろうと考える。
穀倉地帯を抜けゆっくりと長い坂を上り始めるとようやく街の入り口が見え始める。
そこでは街を守るであろう兵士達が通行人や商人と言った人達の荷物を厳重にチェックしていた。しばらくかかるだろうとソールが考えていると一人の兵士がやって来てディアナと話し始める。そしてすぐに話し終えると並んでいる人達の横を抜けて進んで行く。
自分は旅人でどこの誰かも分からずどんな危険な物を持ち込んでいるかも分からない様な人をそう簡単に街に入れて良いのだろうかとソールは一人考えていた。
(まぁ……危ない物も見られて困る物もありませんが、見られると説明が難しい物はバッグの中にあるのでありがたいと言えばありがたいのですが)
そんな事を考えているとディアナが緊急なのでこのままウォーカー協会に向かいますと言った。断ってもよかったが魔物の素材等を買い取ってもらおうと考えていたのでおとなしく着いていく事にする。
走る魔導車の中から街並みを眺めると人々の顔は明るく近くに魔物がいる生活とは思えない程だった。
建物の作りは基本的にレンガや石を基調とした作りでドアや窓の枠に少し木材が使われていた。
「ソールさん。何か珍しい物でもありました?」とティアが話しかけてくる。
「いえ。この辺りの建築は石材が主流なんだなっと思って見ていました」
「なるほど。地域によるんですけどブルトンは周りに安全な森がないので木材は地味に高価なんですよ。石ならその辺を掘ったり削り出せばいくらでも出ますしね」
「森は視界も遮られますし魔物とか獣が住みやすい環境なのでしょうね」
「そういう感じです!森都市とかもあったりするのでそこでは逆に石材とかが高価だったりしますよ。その森は安全と聞きました。商人の人達はここで石材買って森都市で売ったりしてるそうですよ」
見慣れない物を見かけるとティアに質問し進んでいると目の前に周りの建物に比べるとかなり大きく立派な建物が現れる。
その建物がウォーカー協会の建物ですとティアが話すと魔導車は建物の裏にまわった。
そこには何台もの魔導車が止まっておりディアナがその辺りに魔導車を止めるソール達にも降りて着いて来る様に言った。
建物の裏口であろうドアから中に入っていくとディアナと同じ服を着た女性が待っておりディアナの無事を喜び話し始める。
別の世界の言葉なので何を言っているのか全く分からないソールが待っていると話し終わった様でディアナがこちらですと先を歩き始める。
階段を上り長く綺麗な廊下を進むとソールは応接室の様な所に案内された。
「ソールさん。申し訳ありませんが、私とティアはウォーカー長に今回の事の説明にいきますのでこちらでお待ち頂けますか?」
「分かりましたが、宿を取ったりとやる事は多いのでできれば早めにお願いします。しかし事が事なので無理は言いませんし、私のできる範囲での協力はします」
ディアナがありがとうございます。と丁寧に頭を下げティアが元気よく手を振り部屋を出て行ったのでソールは高級そうなソファーっぽい椅子に腰掛けこの街ですべき事を考えまとめる。
特に疲れてはいないが心身共に休息をとる場所を作る為に宿を借りる事。安ければ家なども買っても良いがこの世界を旅し魔術、魔導を勉強するので売る時の事を考えると借りるのが正解。
食べられる物の確認。この世界の住人とソールはほぼ体の作りは同じなのでたぶんだが問題はない。ただ別の世界に来た事でアイテムバッグにどういう影響が出るのか分からないので来る時に貰った食糧から消費する事
文字や言葉に関しても問題はあるがそれは生活しながら学べばよく、本当に難しければ借りている翻訳の道具と同じ物を買えば良いと考えた。
金銭面に関してはヘルゲーターの素材がどの程度になるかは分からなかったが、あの程度の強さならソールにとってなんの障害にもならないのでお金に関してはたぶん問題は無いと考える。だが異世界だという事もあり、どんな物がどれだけの価値があるのかは分からないので稼ぐにしても討伐以外の方法があるなら知っておいた方が良いと考える。
(ティアさんも流通を生業にしている商人もいると言っていましたし護衛等の仕事もありそうですね。まぁ能力、性格供に……討伐等が一番向いていると思いますが)
仮に店で販売の仕事をしたとして無愛想にいらっしゃいませーと言う自分しか想像できず。それは無いなと笑う。
地域の文化や黒い月と言った様なこの世界の常識な手をつける事は沢山あったが今日明日すぐにどうこうできものはほとんど無いので先に考えたこの都市で宿を取るのが一番先にやる事と心のノートに書き込んだ。
ソファーから立ち上がり応接の置物は無駄に触らずに調べていく。
世界が変わり文化が変わった事で置物の形はソールからすれば独特で絨毯の模様なども見た事も無い柄が多かった。
壁に掛けられた強大な竜か鳥が描かれた絵もいるのか空想上の生き物かもわからなかったがそれはそれで楽しめた。
そしてガラス細工で作られた小物や食器の類いの物もあり自身がいた世界と同じかそれ以上に発展していると考えた。
(元の世界は馬や牛に強化魔法かけた方が楽だったので馬車でしたしね。馬が引かない魔導車と言うのは新鮮ですが……もう一つの記憶には自動車がありますがあれに近いかもしれません)
少し寂しそうにそう思っているとその考えを吹き飛ばすかの様にバタバタと足音が聞こえる。
足音が近づきノックと言うよりは攻撃に近いドンドンと扉が叩かれ返事を待たずに扉が開け放たれる。
「ソールさん!ウォーカー長とお姉ちゃんが待っていますので私と一緒にどうぞ!」
「わかりましたが……ディアナさんに扉を開ける時は返事を待ってからと言われた事はありませんか?」
「週に一回ぐらい言われていますがどうして分かったんですか!?まさか心を読むスキルをもってるんですか!?」
「持ってません。ではすみませんがティアさん。ご案内の方よろしくお願いします」
「分かりました。と言うか……ソールさんの方が年上ですし強いですし私にさんとかつけなくて呼び捨てて十分ですよ?」
「いえ。基本的に私は昔からこんな話し方ですし凄いと思える人にはちゃんと敬意を込めて話しますよ」
「自分でいってあれですが……私の何処にソールさんから見て凄い所が……」
「自分よりはるか強者から姉を守っていた所ですね」
「頑張ったと思いますが……いま思えば無謀だったかと……」
「無茶をして死んだ訳でもありませんし結果論ですがお姉さんは助かったので無謀ではないと思いますよ」
「なっなるほど!じゃあオルティアランクのウォーカーになれるかも知れませんね!」
「はい。なれますよ。そうですね……まずはできる事からで廊下は走らない。ドアをゆっくり閉めるからはじめるのが良いと思われます」
「おぅ……ソールさんがお姉ちゃんみたいな事を言う」
「ティアさんより年上ですし喧嘩は強いですからね」
そう言って笑うソールをティアは不思議そうにわらった。
「ソールさんって見た目からしてすごそうな魔術師で寡黙な感じがしますけどわりとお茶目な感じですよね」
「そうですね。昔はティアさんが想像している感じの魔法使いでは無くて魔術師でしたが……もう少し話しておけば良かったと思う事が沢山ほんとうに沢山あったので話す様にしてますね」
「なるほど。でもソールさんの話は面白いのでよく話すソールさんの方がいいと思いますよ!」
「そうですか?ありがとうございます」
ようやく目的の部屋にたどり着いたのかティアがここですと指さした。そして先ほど言われた事を覚えて直そうとしたのかドアをゆっくりとノックしてから挨拶を返事があるのを待った。
「入ってくれ」
男性の声が聞こえたのでティアがゆっくりとドアを開けてソールと供に入る。
(ん?私にもちゃんと聞こえたのでこの部屋自体に翻訳の魔術か魔導の何かがあるんでしょうね。ティアさんに入れと言うなら翻訳機はいりませんし……)
中に入ると執務室のような造りで、装飾された石材の机に少々白毛の混じった頭に獣の様に鋭い目をしたおじさんが座っておりその隣にはディアナが立っていた。
「さてと……あんたがソールさんか……まずはディアナとティアを助けてくれた事に礼を言わせて貰おう。ありがとう。後この部屋には翻訳の魔導具がおいてあるから通じると思う」
立ち上がりソールに向かって丁寧に頭を下げる。それにつられる様にディアナとティアも頭をさげもう一度、礼を言った。
「当然の事をしたまでですとは言いません。自分が届く範囲でできる事をやっただけです。助かって良かったですが」
「そうか?ヘルゲーターの群れに突っ込んで誰かを助ける事は中々できるもんじゃ無いけどな……まぁいい。俺の名前はトーバだ。トーバ・タルトス。ここのウォーカー協会を国から任されているウォーカー長だ」
「これはご丁寧に。ソールです。世間知らずの旅人です。魔術師でも魔道士でもありませんが魔術師が一番近く似た様な事はできます」
「ではソールと呼ばせて貰おう。聞きたい事は山ほどあるが……先に金の話から済ませておくか」
「はい。手持ちがないのでよろしくお願いします」
トーバはディアナに飲み物を用意させソールには向かい合って座れる大きめのテーブルに座る様に言い話し合いが始まった。




