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魔法使いは知らない世界を旅する  作者: 絵狐
一章 新世界
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四話

 ソールとディアナが音のする方を向くと本人は少し恥ずかしそうに姉に尋ねる。


「……お姉ちゃん。何か食べ物持ってない?」


「ないわよ。ヘルゲーターに襲われた時に少しでも荷台を軽くするのと注意をそらすのに食料から捨てたからね」


「知ってる……私も手伝ったから知ってるんだけどもお腹ってすくよね?」


「私も空いていますから我慢しなさい。明日のお昼には着きますから」


 一緒に村に向かう仲間が倒れそれでも明るく振る舞おうとする姉妹をソールはとても強い人達だなっと感心していた。


 そんな二人のやりとりを見ながら考える。食料は持っているがこの世界にアイテムバッグの様な物があるのかどうか? 無いのなら迂闊に見せる物ではないし、あるのならいくらでも誤魔化しがきく。


 等と考えているとタイミングよくティアがそんな感じの話を始める。


「こういう時に【収納】の魔術か、付与された魔導具があれば……お姉ちゃんは使えないし」


「ティア……それ、私が仕事できない人間って聞こえるわよ」


「あっ!ごめんなさい」


「素直でよろしい」


 人は一日二日なら食べても死なないので気にする事もなかったが、別の世界で初めて会った人と仲良くするに越した事はないと考えて少し警戒を緩める。


 自身のアイテムバッグからこの世界に渡る時に貰った食料を漁りパンや長持ちする様に作られた何かの肉の燻製等を取り出しティアとディアナに手渡した。


「口に合うかは分かりませんが良かったらどうぞ。私がいた国の食べ物です」


「あっありがとうございます!」


「ソールさん。妹がすみません……これはパンと燻製ですね。ありがとうございます」


 そしてたき火に当たりながら三人は食事をとった。


 ソールの渡した食料はティアとディアナの口にあったようで二人はとても美味しいと言い味わった。


「ソールさんの【収納】って魔術ですか?魔導ですか?術式が見えなかったので魔導の方の収納だと思うのですけ……」


 ティアに聞かれたがそのどちらとも違うとは言えないので少し考えてから答える。


「私がいた国では魔術も魔導も似た様なものなので大きくは別れていないのです。この国の魔術と魔導はどういうものですか?」


「えっと……ですね……そういう専門的な事はお姉ちゃんの仕事でして……」


 夕食を食べ終わりソールが後から出した異世界産のお茶を飲んでいたディアナが大きくため息をつく。


「流石にこれは知っておかないと本当に自国民か疑われるわよ……ではソールさん。妹に変わって私がお答えします」


「はい。よろしくお願いします」


 こほんと軽く咳をしてからディアナの説明がはじまった。


 術式を通して魔力を流し火や水といった物を発動させる事を魔術。


 道具を通して魔力を流し火や水といった物を発動させる事を魔導。


 そしてその魔術を扱う人を魔術師、武器や道具を通して扱う人を魔導師


 そう説明した後にディアナは指で宙に文字を書くとその文字が赤く発光し小さな火が現れた。そして自身のポケットの中から何かが書かれた小石程度の大きさの道具に魔力を流すと同じ様に宙に小さな火が現れすぐに消えた。


「ソールさんの国の様に大きな違いは無いのかも知れませんが、先に出した火が魔術で後から出した火が魔導になります」


「なるほど……火の発動形態は違いますが根元は一緒なんですね。教えて頂きありがとうございました」


「そういう事です。ですからソールさんの国が魔術も魔導も似た様な物というのはそういう所から来ているのだと思います」


 ソールはディアナから流れた魔力が宙に書かれた文字を通して変化したか道具を通して変化したかを魔眼で見ていた。その変化は自身が使用する魔法とかかなり違い密かに興奮を覚えた。


 魔術と魔導について考えようとしているとティアが手を上げてソールに質問する。


「はいはいっ!ソールさん質問です!出た火は同じですけど、魔術と魔導って全然違うと思うんですけどどういう所が同じなんですか?」


「なぜ貴女が知らないんですか……とは言いませんのでお答えします。答えは書かれた文字ですね」


 ソールは近くにあった木の枝を拾いディアナが宙に書いた文字と同じ文字を書く。


「そうそう。これは知ってますよ火の魔術を使う時の基本的な術式ですよね?」


 ソールが答えるより先にディアナがまたため息を吐きながら先ほどの道具をティアに近づけて指を差しここを見なさいと言った。


 言われた通りにティアが指さされた場所を見るとそこにはディアナやソールが書いた文字と同じ物が掘り書かれていた。


「あっ!」


「あっ!じゃありません。ティアはもう少し勉強しなさい!」


 その姉妹のやり取りにソールは微笑んでから先ほどの事と話を合わせる様に自分が出した食料は【収納】の魔導具から出したと答えておいた。


 それから少し時間が経ったがソールの索敵に敵はまだ引っかからず静かな物だったので少々仲良くなった姉妹に質問する。


「辛いことを思い出せて申し訳ありませんがディアナさん達はどうして魔物に襲われたのですか?」


 妹のティアは仲間が死んだ事を思いだして目に見えて落ち込、姉のディアナは大丈夫ですよと気丈に振る舞い答えた。


「丘都市から村に行く途中で魔導車にトラブルがあってしまって……夜までに着かないと黒い月に野宿になるので少し危険を冒してゲーターの巣があると言われるこの街道を通ったのが間違いでした……」


「なるほど……」


「昔はこの辺りも安全に通れたんですが……いつの間にかゲーターの巣にされてしまいました。だからこの辺りでは誰も人を見かけないでしょう?」


 ディアナは目尻を手で拭ってから遠回りした方が良かったのかは分かりませんが私も妹も行き残ったのでこれで良かったのかもしれませんと力なく笑った。


 ソールはそうですねとだけ答えた。


 それからまたしばらく時間が経つとポツポツとだがソールの索敵範囲内に魔物が侵入してくる。


 ただ襲ってくる様な事はせずに様子見と言うよりは得体の知れない物を警戒している様だった。


 (世界は違えど……魔物ですからね。魔と関わる者の危険さは分かるのでしょう)


 ソールが少し警戒度を上げているとティアが小さく欠伸した。


「ティア……先に寝ておきなさい。今の所は魔物もおとなしいから休憩するなら今よ」


「でも……お姉ちゃんもソールさんも起きてるし今日は黒い月だよ」


「絶対に後で戦う事になるから先に休んでなさい」


 分かったと返事をして魔導車の荷台にティアが向かったので今度はソールがディアナに話しかける。


「ディアナさん。貴女も先に休んでください」


「え……ですけど、この土地に詳しくないソールさんにだけに任せては……」


「貴女が言った様に魔物は今はおとなしいですからね。休むなら今です。それに……ティアさんは気丈に振る舞っていますが昼間の事が堪えていますので一緒にいてあげてください。何かあったらすぐに呼びますし貴女も思った以上に疲れている筈ですよ」


 ディアナは少し考えた後にありがとうございます。と丁寧に頭を下げてティアがいる魔導車の荷台に向かった。


 ティアもまだ起きていた様でソールに向かって小さく手を振った。


 誰に言った訳でも無いが姉妹の仲が良いのは良いことですねとソールが夜空に呟く。


 ディアナも気を張っていた様でティアが眠ったあとすぐに二人の気配が静かになる。


 この世界の事、これからの事、魔術の事、魔導の事、考える事は多く静かだったので適した環境の様に思えたが……ソールの探知にはかなりの数の魔物が写っていた。


 数がそろうのを待っていたのかは分からなかったがソールをとり囲む様に行動を始める。


 (馬鹿にするつもりはありませんが賢いですね。一体で勝てないと分かると数を集める。知能は高いですね。私の命もトルマ姉妹の命もあげる事はできないので倒させて頂きますが……)


 ゆっくりと立ち上がり魔力を解放する。


 ソールが使っている雷の触覚と言われる魔法はドーム内に感知できない様な小さな電磁波を飛ばし対象物に当たると反射してその大きさ等を調べたりする魔法だ。


 魔力が大きくその扱いが上手ければ電磁波を通して魔法も飛ばす事も可能である。


 ソールもこの魔法を覚えた頃は扱いに苦労したが今は寝ていても使える程にはなっていた。


 昼間に戦った感じだとソールの実力からすればヘルゲーターは相手にならなかったが、寝ている姉妹を起こすのも申し訳ないので使う魔法を少し考える。


「雷の魔法の悪い所は音とか光とか出る所ですね。それは良いとしてまだまだこの世界の魔物については分からない事が多いのでお付き合いお願いします」


 魔を宿す部分が残ると教えてもらったが粉微塵にしても残るのか? 細切れにしても残るのか? 炭になっても残るのか? など試したい事は沢山あった。


 姉妹を起こさない様に少々注意し魔法を発動させ一匹の魔物を文字通り細切れにしてから開戦となった。


 姉妹が寝ている魔導車には近づかせずにソールからヘルゲーターやその他の魔物に接近する。


 魔法による攻撃は有効だと分かっていたが使えなくなった魔法も多い。雷の魔法が効かない魔物がいた場合の事も考え腰のショートソードに手をかける。


 そのショートソードの切れ味はやはり以上でヘルゲーターの強固な外骨格も何の問題も無く簡単に切断する。


 ソール自身は魔法使いであり剣術などは全くつかえず身体能力の高さだけで剣を振っていただけだが、魔物は簡単に切断されその場に崩れ落ち魔を宿した素材だけが残った。


 この程度の魔物なら姉妹を守りつつ実験しながら戦っても問題無いと判断し剣に付着した体液を飛ばしてから鞘にしまい魔法での実験をはじめる。


 ソールを中心に雷が地面を何度も駆け抜ける頃には素材と魔物の関係が少し分かってきた。


 魔物の素材が残る時はその部分が残っている場合のみだった。粉微塵、細切れ、炭などにした場合は素材は残らなかったが、真っ二つや焦げた場合だとどうやっているのかは不明だったが再生し、わりと綺麗な状態で鎌や外殻が手に入った。


 (この素材が再生する現象ですが……この黒い月の影響なのか普段からこういう物かなのかも調べる必要がありますね)


 手に入った素材に関しても何度も実験を繰り返し、砕いたり黒焦げにしたりしても魔物とは別の扱いになっているのか崩れて消え去ると言う事は無かった。


 ソールが満足するまで襲ってくる魔物を刈り続けた結果、探知できる範囲には数匹だけ残し消滅した。


 (これだけ魔法を使ってもほとんど魔力を消費していないのはこの黒い月のおかげなのでしょうね……教えていただいた様に身体能力、魔力供にかなり向上していますし)


 ソールの元々の魔力は元々かなり高いのもあるが夜が深くなるに連れてその魔力が大幅に上がっていくのが分かった。


 その魔力の強大さ濃さに力の弱い魔物達は恐れをなして離れていくが、残った魔物達は黒い月に向かって魔力を伴った声を出し鳴き始めた。


 鳴いていると言っても人間の耳には聞こえない音だった様でトルマ姉妹が起きる事は無かったが……ソールの索敵範囲内にかなり大きな魔物を捉える。

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