三話
「私の声が聞こえていたら手を上げていただけますか?」
普段からあまり驚いたりしないソールだったが急に言葉が理解できた事に驚きながらゆっくりと左手をあげた。
女性はほっと息を吐き出した後に頭を下げて礼を述べた。
「助けて頂きありがとうございました。私はディアナ・トルマと言います。ディアナが名でトルマが姓でウォーカー組合の職員をしています。貴重な回復薬まで使って頂き本当にありがとうございました」
今の会話でソールが持っているハイポーションに近い物があると言う事とそれがある程度、貴重だと言う事も分かった。
ウォーカー協会とはなんぞや? と考えていた所でディアナは勘違いした様でもう一つ持っていたドーナツ型の宝石をソールに手渡した。
「その穴に向かって声を通すと施された魔術によって翻訳され届きます。試してみてください」
翻訳系のアイテムはソールの世界にもあったが適当に言葉を作って話したらどうなるのだろうか? 思ったが試す場面ではないので素直に名乗る事にする。
「ソールと言います。旅をしている魔法使いです。姓はありません」
そう答えるとおかしな所があったのかディアナはソールに聞き返す。
「魔法使いとは何でしょう?魔術師や魔導師と違うのでしょうか?」
一から百まで教える必要もなく、魔力の存在は確認できているのでソールは自分がいた国では魔術師や魔導師の事を纏めて魔法使いというとサラッと嘘をつく。
「……そうなんですね。雷の魔術を使われた時も術の発動が見えませんでしたので高名な魔術師の方なのですね」
「高名と言うより無名ですが……亡骸の近くで世間話をするのもどうかと思いますので先に弔ってあげませんか?」
そっそうですね……と慌てながら再度辺りを見渡すと十人近くが無くなっており、中には武装した者も含まれていた。
その中にはディアナの知り合いもいたのか口を覆いながら涙を流した。そして先に気絶した少女に毛布の様な物をかける。
「この子は妹のティア・トルマと言います……今回の救援に着いていくといって聞かなくて」
「救援と言う事は何かあったのですか?」
「丘都市ブルトンから二日ほどで着く村で土砂崩れがあったので、そこに物資を届ける途中でした」
亡くなった人達をディアナの指示に従って動かす。
「ディアナさん。装備等はどうしますか?」
「全員を連れて帰られる訳でも無いので装備等は持って帰ります。そして遺族に渡すか協会で買い取って遺族、パーティーメンバーに渡します……ですが……」
ディアナは倒れた荷台を見る。だがそれを起こせる方法が見つからないのでほとんどの物はここに置いて帰らなければと考えていた。
その事を伝えるとソールは荷台に近づいていき手をかけ、何とかなりそうですねといった後にひっくり返っていた荷車を元に戻した。
「……ソールさんは魔術師ですよね?」
「さぁ、どうでしょう?この中に装備や散らばった物を入れればいいですか?」
積んだ所で荷車を引く様な生物は見当たらなかったが、自分が知っている世界の常識は通じないと考えディアナと一緒に片づける。
他にも壊れた荷台がありそこから高価な物などを運び出した。そしてある程度まとめてから気を失っているティアを荷台の隅に乗せる。
「ソールさんはどうしますか?私達は丘都市に戻りますが……もしブルトンに向かうなら護衛をお願いしたいのですが……お金の方は協会に着いてからの支払いになりますが……」
私もそこに向かうつもりでしたから問題ありませんと話の流れに乗って返事をする。
ありがとうございますといい、ディアナは亡くなった人達の近くに先端が光る杖のような物を突き刺した。
それは何だろうとソールが考えているとディアナはマーカーの様な物でこの場所の情報が協会に伝わり後で誰かが回収に来るという物だった。
「できれば皆さんを家に帰して上げたいですが……魔物や獣がいるので何も残らないと思います……ではいきますのでソールさんは隣に座ってください」
退くものがいないのにどうやって荷車が動くのだろうと思ってはいるが成り行きに任せても面白そうだったので言われたとおりに隣に座る。
(これで……引く馬がいません!とか言い出したらそれはそれで面白いですね)
そんな心配を余所に荷車の前面につけられた石版の様な物にディアナが手をかざすと車体全体が少し光りはじめる。そして操作する様に手を動かすとゆっくりと前進する。
色々と聞きたい事もあったがディアナが何かの組織に所属している事は分かったので、余計な質問などはやめる事にする。
そして車体のスピードが乗り始めたのでソールは最後に亡くなった人達に手を合わせる。
爽快に走る荷車をソールは魔眼で魔力の流れを確認すると元いた世界とは異なる技術が使われている事が分かった。
街まで行き安定した収入が得られる様になったら学べる事は多いなと考えていると操縦していたディアナが話しかけてくる。
「ソールさんは……ウォーカーですか?先ほどの戦闘能力といい身につけてる物といい高ランクだと思うのですか……」
「そうですね……今は旅人ですが昔は冒険者をしていましたね」
本当の事も嘘もないように答えるとディアナは少し考えてからまた答える。
「なるほど……冒険者と言う事は海を渡って来られたのですね。この辺りの国々は冒険者と探索者を纏めてウォーカーと言う様になったので、海の向こうでは冒険者という言い方が残っていると聞きました」
「そんな感じですね。毎日毎日飽きもせずに戦ってばかりいるので嫌気がさして逃げてきた様な所です」
「なるほど……どこも大変なんですね。この国にも戦火から逃れてきた人は多いと聞きます……そのお陰で私達姉妹は助かった訳ですが……ありがとうございました」
「いえいえ。どういたしまして。そう言えば先ほど魔物や獣と言っていましたが……わかりやすい違いは何でしょう?私の国にもましたがかなり生態が違うので少し戸惑っています」
「簡単に言えば魔がつくものを倒すと先ほどみたいに消えてその魔物の魔が宿った部分が残ります。先ほどの魔物はヘルゲーターという言うんですが鎌や足に力があるので残りました。魔を宿さない物は倒すとそのまま全てが残ります」
「なるほど……食糧を確保しようとすれば動物を狩らないと駄目なんですね」
「そういう事ですけど……基本的に魔物は人でも動物でも見かけたら問答無用で襲ってくるので見つける=戦闘なので回避できないと考えておいてください」
「私の国では魔を宿す物が魔物でしたので似た様な物ですね。ありがとうございます。後、聞きたいのですが魔物から魔石などは取れないのでしょうか?」
左手で器用に操縦しながた右手でドーナツ型の宝石を持ちソールと頑張ってください会話していたが、しばらく考えた後に質問に答えた。
「すみません。魔石という物はこの辺りでは聞いた事はないですね」
「気にしないでください。魔物から取れる尿道結石みたいなものなので」
ソールが冗談を言う様な人ではないと思っていたので、ディアナは少し緊張が解けふふっと上品に笑う。
それからは特に問題も起こらず明日の昼ぐらいには丘都市に到着すると言う事なので夜には少し早いが見晴らしが良い場所で野営の準備に入る。
「私も少しは戦えますので交代で見張りのをよろしくお願いします」
襲ってくる魔物や獣の強さがあれぐらいならソール一人で二人を守るぐらい全く問題なかったがディアナが戦った時に見られるであろう魔術や戦い方が気になったのではいと返事をする。
荷台に積んであった薪をディアナがおろしそれをソールがショートソードで割っていると気を失っていた妹のティアが目を覚ました。
「ティア良かった!」
「おっ!お姉ちゃん!」
助かった事に喜び抱き合う二人の姉妹の邪魔はしない方がいいだろうと思いソールは黙々と薪を割った。
ただその名も無きショートソードの切れ味は凄まじい物がありソールを驚かせた。
(これ……魔力流して振ったら切れない物ってあるんですかね?私は剣士ではないので技はありませんが……)
何かが襲ってきたら試し切りしようと考えていると姉妹の会話が終わった様で姉から翻訳できるアイテムを受け取りティアが元気よく挨拶をする。
「ティア・トルマと言います!助けてくれてありがとうございます!14歳のウォーカー見習いです!お姉ちゃんとは4歳離れています」
姉のディアナは18~19歳辺りと言う事が分かった。
その歳でしっかりしているな等と思いながらソールもディアナにした様な挨拶をする。
挨拶が終わるとティアがソールに興味を持った様でたきたき火に辺りながら様々な事を質問する。
ソールも話をするのは嫌いではないが、別の世界の人間という事がバレるとどんな弊害があるかも分からないので適当に流しながら答える。
「ソールさんの魔術は凄まじいですね。ヘルゲーター四匹まとめて倒せるんですから凄いです!」
「背後を取れていたと言うのが大きいと思いますよ。基本的に生き物は前方方向に強いですからね。人も後頭部は弱いでしょう?そんなもんです」
「なっなるほど!でもヘルゲーター一匹の強さはゴルディー級のウォーカーと同等と言われていますから!」
「私からすればそのヘルゲーターに木の棒で姉を守っていたティアさんの方が凄いと思いますよ」
褒めても何も出ませんよと二人で笑いつつ空を見ながら考えているとゆっくりと太陽が沈み月が顔を出し始めるが元いた世界とは違う夜に戸惑う事になる。
目をこすりもう一度、そらを見るがそこには月が二つあった。
上の月は黒く下の月は白く辺りも暗くなり始めたが、暗いと言うよりは黒くなり始めた。
その事に戸惑っているとディアナ・トルマが何を勘違いしたのかひとりでに話し始める。
「今晩は黒い月と分かっていましたが……襲われなければ村に付いていたので……」
ソールははずかしもなく黒い月という18歳のディアナにあの病かな? と思ったがおもった以上に深刻そうな表情だったので笑顔で仕方ありませんよ返す。
「黒い月でもソールさん強いですしお姉ちゃんも私もいるから大丈夫ですよ。持った以上に静かですし」
「ティア……あなたね。まだ早い時間だから問題ないだけです」
そう言って荷台の中から何かのを取り出し自分達を囲む様に地面に置いた。
ソールがそれは何かと尋ねると簡素だが魔除けの様な物だといった。
別の国から来た言っても国が変わっても空が変わる訳も無いのでどうやって黒い月と白い月の事を聞くか考えていうるとティアがウオーカー見習いだと言う事を思いだしだしたのでそれを使わせてもらう事にした。
「さて、ウォーカー見習いのティア・トルマさんに問題です」
「え!?急にですか!」
「黒い月と白い月が及ぼす影響を答えなさい」
「あー!ビックリした!それなら常識ですから楽勝ですよ!白い月の日は魔物がおとなしくなり、黒い月の日は魔物が活性化します!」
ソールには正解かどうかはどうか分からないでいると姉のディアナがため息をつき答える。
「そうだけどそうじゃ無いでしょ。ソールさんが出したのは問題形式だからもっと詳しく言わないと……白い月は安らぎの神が作った月で白い夜は植物は成長が早く、生き物は怪我の治りが早い。黒い月は争いの神が作り魔力、身体能力供に向上するが争いを求める為に魔物が凶暴かするでしょう。ちゃんと覚えておきなさいよ。昇級試験に出ますよ」
「お姉ちゃんが勝手に言っただけで覚えてるよ!……というかどうしてそんな一般常識的な問題だしたんですか?」
「ん?簡単と舐めてかかっていると間違えますよって話です」
「……気をつけます。あと周期は30日で交代でその間の夜の事を灰の夜と言います!どうでしょう!あっているでしょう!」
はい。正解ですと言いながら魔眼で辺りをみると夜が深くなるに連れて自身の魔力もトルマ姉妹の魔力、辺り一帯の魔力も上昇して行くのが分かった。
不思議に思いつつ辺りを見渡しているとティアの方からちいさくお腹が鳴った。
次回更新はたぶん明日の朝です。
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