一話 プロローグ
PC整理してたら出てきたので投稿。
自身が知っている草花とは別物の草原を風が吹き抜け、見た事のない生き物が舞う空を見上げる。
大きな期待と少しの不安が混ざったその瞳の主は透き通った声で呟く。
「……ここが前の世界とは違う世界なんですね」
その呟きに返事をする者はなく少しの寂しさを覚えたがこれからの事を考えつつもこの世界に来られた事を思い出していた。
◆◆◆
「聞いているのか!雷光!いや、雷帝」
激化した戦争を終わらす為にその国の最高クラスの戦力が九人と宰相達が集まり話をしている。
いま大声で叫んだ男は騎士団を任され前戦で指揮を執っている者だった。
「聞いているのか?ではありません。聞く気がありません」
その馬鹿にしている様な話し方に男はさらに激昂して大声を上げる
「魔族を殲滅したお前の魔法があれば戦争などすぐに終わる!どうして国の為に働かない!」
「その戦いに意味があるなら喜んで魔法は使います……が何の策もなくただ殺すだけの魔法に何の意味があるんですか?」
「我が国が勝つ為だ!その為に殺すなら意味はある!選んで殺すのがそんなに上等か!」
「その結果。敵国が天使を召喚し友好国が崩壊し戦火を広げるだけになったのに良くそんな事が言えますね」
「我等を慕ってくれた国の為、逃れた難民の為に我等は勝たないといけない!どうしてそれが分からん!」
「言葉を使わずに剣や魔法をという武を選んだ私達が馬鹿なのですよ。やっている事は魔族と一緒ですよ」
「言葉が通じても内容を理解できない者に会話など意味はない!」
「まさに……今の私達ですね。これ以上は無駄ですね」
「話は終わっていない!」
「終わりました。そんなに戦いが好きなら世界が滅ぶまで好きに戦ってください。私は逃げます」
そう言って雷帝と呼ばれた魔法使いは強めにドアを閉め部屋から出て行く。
その魔女を慕う者も多く五人の魔法使いが後を追った。
「流石に魔族を全滅させた結果これとは悲しいですね。あの時は平和になると思っていましたが……」
その問いかけに誰も答えられなかった。
「水姫、雷氷、影手、大空、雪原。私はこの世界から離れます。もしかしたら私という存在が戦いを大きくしているのかも知れません……私は戦いにはほとんど参戦していませんでしたからあと十年もすればこの国の勝ちで戦いも終わりますよ」
二つ名で呼ばれた五人は強く引き留めようとするが雷帝の意志は強く止まる物では無かった。そして五人もようやく諦め、別の時間軸に渡ろうとする雷帝を見守る。
左手の薬指につけられた指輪が空間に反応し門が開きその場にいた者に別れを告げて中へと入って行った
◆◆◆
扉から出た世界はいた時間軸より少し過去の世界で人、魔族、天使が多少のいざこざはあるが手を取り合いそこそこ仲良くしている世界線で雷帝が愛した人も生きている世界だった。
そんな世界で白い魔王城に遊びに行くと友人といって差し支えのないメイドに案内されこの白の主の元に向かった。
たどり着いた先には好敵手というかそりが合わない奴もいたが雷帝は自分の世界の現状を相談した
◆◆◆
「う~む。魔族がおらんようになったらなったで人間同士でやり合う様になるんじゃからたまったものではないのう……」
体はまだ小さかったが頭には片方に立派な角が生え歳を重ねる事に王としての貫禄が身についていく少女は相談者の悩みに親身になって考えてくれる。ただ友人という事もありその話し方のせいもあって少し緊張感はなかったが。
「気に入らないのなら滅ぼしてしまえばいいだろう。私より弱いとはいえ貴様にならできるだろう」
そう答えた者は先程答えた者にとてもよく似ている。ただどちらが魔王かと聞かれれば圧倒的に後者だったその姿は頭には立派な二本の角が生え背には悪魔のような羽と竜を思わせる尾が生え地獄の業火を取り出した様なドレスを着ていた。
「……相談しているのは私ですから貴女と私どちらが強いかは置いておきます。人が嫌いな訳ではありません。戦争するなって話だけです。私が参戦した所で戦禍が広がるだけですし」
角が片方の少女が少し考えてから質問する。
「これを聞き忘れておったが……お主はどうしたいんじゃ?」
「私ですか?…………そうですね。しらない場所を旅したいですね。昔ははいろんな魔法を覚え魔物を倒したり冒険してましたから……たぶん私は自分が思ってる以上に魔法が好きなのだと思います。」
「ふっ……年寄りはよく昔話をする」
「……何か?」
見る人全てが魅了されそうな妖艶な笑みだったが、その笑みは自分を馬鹿にしている事が長い付き合いで分かる相談者は殺気を込めてにらみ返す。
「若いのは見た目だけだな。雷婆さん」
喧嘩を売ってくるのは分かっていたが口に出されると本当に伝わるもので二人の間にはすさまじい炎を雷のぶつかり合い起きる。
「お主らな……この部屋を壊して怒られるのはわらわなんじゃぞ。個人的な意見じゃがお主に関しては欲求不満というのもあるじゃろな?」
「……欲求不満ですか?」
「うむ。新しい魔法を覚えても試せる相手はおらんじゃろうし。世界は戦争をしておるんじゃから殺す魔法だけが進化していく感じになっておるんじゃろうしな」
「試す相手なら目の前に二人いますが……そう言われれば確かに欲求不満かもしれません。殺すだけの魔法を覚えて強くなりたい訳でもないですし」
「試す相手と言うが実際はこの中で貴様が最弱だ」
「あん?」
相談にのってくれている片角の友人はまだしも倒しても何の問題もない魔王に最弱だと言われれば相談しているとは言えその魔力に殺気がのりバチバチと音を立て放電し始める。
煽った方も煽った方でそれを狙っていたのか魔力が熱を帯び始め辺りが高温になっていく、その熱でカーテンや布製品に火が付きいかずちによる放電で陶器が割れ始めた頃に片方の少女が何かに閃き手を叩く。
「いっその事……別の世界に行くかじゃな」
「ん?今来てますが?」
「別の世界線ではなくてわらわやこやつやお主の様にまったく知らない世界に行くという感じじゃな」
まったく別の世界……異世界に渡るとという急にでた話に少し戸惑い殺気のこもった雷は静かになりその話を自分なりに考えてみる。
可能か不可能で考えれば可能であった。
「……ありかもしれませんね」
言った本人は半分は冗談のつもりもあったが慌てる。残した者などがいないかを尋ねるがいないと力強く言い切った。
「どうやって別の世界への道をつなげるんですか?」
「次元の狭間からもう一つ次元の狭間へ繋げばこの次元の外にいけると思うんじゃよな」
その答えに炎に包まれた者も興味を持った様で炎を消した後に思考する。
「確かに外に別の次元があれば可能かもしれんが……あるのか?」
「それは分からぬが……宇宙には銀河とかあるじゃろ?M78星雲とかZ95星雲みたいな感じもやつがそれと同じで次元にも似た様なのがあると思うんじゃよな」
「なるほどな。確かにまったく別の世界からこちらに来たといった話はいくつか聞く……まぁこいつが死んだ所で私は困らないから試してみる価値はあるか」
そういって指を指すが指された本人は別の世界に行く事しか頭にないようで特に気にもせずに思った事を口にする。
「……駄目な時は戻って来れば良いだけの話だけですから本当に試す価値はありそうですね」
「確実に魔法が存在しない世界もあるじゃろうし、人のいない世界も確実にあるし……そもそも生物その物がいない可能性の方が多いんじゃぞ。人が生きていける環境ではない場合も確実にある」
「貴女が言っておいて心配しすぎなのが面白いですね。駄目な時は帰って来ますし駄目なら向こうで修行して帰って来るので問題ありません。決めました。私は別の世界に行きます」
こうなってしまうと何を言っても無駄なのは片角の少女が一番知っているのですぐに諦める。
「分かった。止めはせぬがいつ頃行くつもりじゃ?」
「今から行きますよ?私達がそろう事は滅多にありませんし、いつでも動ける様に私は行動してますので」
思いもよらない答えに頭が痛くなるの感じ別れの挨拶とかしなくて良いのかと尋ねるが本当に未練は無いようで力強く「無い」と答えた。
「私がいてもいなくても世界は争いを求めていますから見捨てて問題ありません」
「それはそれで寂しいのう……ある程度の時間は生活できる水やら食糧を持ってくるからしばらく待っておれ。アイテムバッグに余裕はあるじゃろ?」
「ありがとうございます。準備してあるとは言いましたが食糧とかは無かったですね」
少し呆れながら片角少女が出て行ったのを見送った。
「さてと……お前が行くまでにもう少し時間があるな」
「はい。もう会う事もないかもしれませんで言いたい事は分かります。どちらが上かははっきりさせましょう」
「ああ、そうだな。だが一つ間違っている」
「何がですか?」
「私が上だ。お前にはまだ見ぬ高みを見せてやろう」
次の瞬間にはお互いの魔力がぶつかり合った。
◆◆◆
戦いが終わりもうすぐ旅立つ予定の者は精も根も尽き果て魔力も尽き果て流れる雲を眺めていた。
その整った顔に影がかかり立っていたのは炎を纏う者だった。
「これが私の全力だ。異世界にいくならもっと高みががあると思えよ。雷帝……いや雷光か」
「もう少し頑張れば届きそうですね……一ついいですか?魔王」
「餞別と思っておけ。全力をぶつけられる相手がいてよかったな」
自分が聞きたかった事も先に言われ戦いにも敗れたが何故か満たされ何故か満足感が広がった。
そして話が終わったタイミングで片角の少女が現れ、呆れながら何かの液体を飲ますと体力と魔力が完全に回復し礼を言ってから立ち上がる。
そして大きな箱に入った食糧や水、怪我等を治すアイテム等を受け取りアイテムバッグの中へと仕舞った。
「食糧に関しては一ヶ月は余裕で持つと思う。魔法に関しては使えなかった場合の事を考えてお主の魔力を燃料に使えるランプを入れておいた。他にも色々……」
自分の事を心配しアイテムの事を丁寧に説明する少女の姿に微笑む。
全てを受け取った後に片角の少女は一本の剣を差し出した。
「これは?」
「もし魔法が使えなかった時の一つの自衛手段じゃな。お主は魔法使いじゃからいらぬとは思うがあって損はあるまい。急じゃたからそこまで立派なものではないが薪を割ったりするぐらいには使えるじゃろ。名付けるなら薪割り丸とかでええじゃろ」
「ありがとうございます」
もう覚悟は決まり別の世界は確実にあるという感覚はあったので片角の少女がいくぞと言った後に膨大な魔力を練り上げると空間にゆっくりと大きな穴が空いた。
三人はその穴の中に入るとそこは宇宙の様な場所だった。
「次は私の番だな」
魔王が笑い同じ様に魔力を練り上げると同じ様にその空間に穴が空いた。ただそこから先は全く見えず全ての物を飲み込む様な真っ黒な世界が広がっていた。
「今なら引き返せると思うが……」
心配そうに見つめる片角の少女にゆっくりと近づき魔法使いはその頬に優しくキスをする。
「また会えますよ。私達はこの指輪で繋がっていますから」
そうじゃなと照れながら笑う少女に魔法使いはクスリと笑う。そして魔王にも近づく。
そして頬にキスをする振りをして右拳を叩き込もうと叩き込もうとするが読まれていたのか簡単に受け止められた。
「ふっ何のつもりだ?」
「さっきののお礼ですよ。殺しても死なないと思いますが……貴女も元気で」
と言って掴まれた右手を振りほどこうとするが逆に引き寄せられ魔法使いは唇を奪われた。
何をされたのか一瞬理解できなかったが片角の少女が感心するような声を上げたので我に返り引き離した。
「なっ!何をするんですか!」
「なかなかウブな反応じゃないか。嫌なら元の世界に戻って泥水で口を洗えばいい」
「お主な……」
少し赤くなった顔のままこの場で再戦を申し込もうとも考えたが……目の前の黒穴の中には何があるのかが分からなかったので少しでも体力魔力供に温存しておきたかったので一つ恨み言を言う。
「……次に会うことがあったらその顔に拳を叩き込むのでよろしくお願いします」
「分かった。次に会う時を楽しみにしておこう」
そして少しだけ皆で話をし魔法使いは笑顔でその大きな穴の中へと飛び込んだ。
穴は役目を終えた様に静かに閉じて言った。
穴が閉じたのを見送ってから片角の少女は話しかける。
「あやつならどんな世界でも大丈夫じゃろな。わらわ達でも大丈夫じゃったんじゃし」
「ああ。問題無いだろう。何かあれば帰ってくるだろうさ」
「うむ。彼女の旅に王のご加護がありますように。というか一つ良いか?」
「ん?なんだ?」
「お主。伴侶がおるのに調子に乗ってあんな事してよかったのか?」
「ああ……間違いなく怒られるな!」
◆◆◆
長い様で短い時間が駆け抜け少し気を失った後に魔法使いは目を覚ます。
するとそこには何もなくただただ真っ黒な世界が広がり何かとてつもない気配があった。
その気配の方向に目を向けると闇を凝縮したような黒い大きな塊がありその表面は大量の蛇がいるかのようにうごめいていた。
自分……いや、先ほど戦った魔王ですら確実に勝てないその存在の強さに魔法使いは死を覚悟する。だが自分の調べる様な魔力の流れが合ったあとに頭の中に声が響いた。
「面白い。その程度の力量でこの世界に来られる者がいるのか?」
頭に声が響いた後に黒い大きな塊に複数の目が現れ自分の事を見ていたので魔法使いは戦っても確実に勝てないと悟り意を決して話しかける。
「ここが貴方の世界であるならば申し訳ない事をした。私は友人達の力を借り別の世界に行こうと考えている。この空間が何処なのか知っているならば教えて頂きたい」
「なるほど……他人の力を借りたとは言え世界を渡る力を持つか……その程度の力と言った事を訂正し詫びよう」
自身より遙かに小さな存在に目を閉じ頭をさげた事に魔法使いはとても驚くが、話が通じると言う希望を見いだせたので自身がここに来た経緯などを丁寧に説明する。
「目を凝らして周りをみて見ろ。星の様にみえる光があるだろう?あれは全て別の世界への扉だ」
言われたとおりに目をこらして周りを見ると、そこは真っ暗な世界ではなく宇宙の様に星が散りばめられた世界だった。
「では……その光に向かって進めば別の世界にいけるという事ですか?」
「そうだ。だが気をつけろ。別の世界に行くと言うのならその世界のルールに縛られると言う事だ。お前が魔法を使えたとしても魔法が無い世界に行けば魔法は使えない」
「やはりそういうものですか……質問ばかりですみませんが魔法に似た物が使える世界はどうやって探せば良いのでしょうか?」
「お前が本当に自分の力のみでここに来られたなら問題は無かったが……先ほどの詫びだ。お前がいた世界の事を話せ」
話さないと言う選択肢はなかったので魔法使いは自分のいた世界の事などを伝えるとその世界の事を知っていたのか少し笑い出した。
「行った事は無いが実に面白い。私が今から行こうとしている世界がお前の希望に似ている。その世界の違う時間軸にお前を送ってやろう」
「ありがとうございます……聞きたいのですが貴方は神とか呼ばれたりするものでしょうか?」
「人は認知し得ない者を神と呼ぶ傾向がある。我を神と呼ぶなら邪神か悪神の類いだろうな」
何が面白かったのかは分からないが目の前の圧倒的な強者は大きく笑った。そして魔法使いにむかって体から蛇にも見える黒い紐のような者を伸ばした。
「それに触れればその世界にいけるだろう。そこで魔を極め自身を高め帰りたければ元の世界に帰ればいい」
「貴方からすれば私は蟻にも等しいはずですが……どうしてそこまでして頂けるのでしょう?」
「全ての人間が蟻をみれば踏みつぶす訳ではないだろう?それに蟻が話したとしたらその生態に興味が湧く。それだけの事だ」
「そうですか……貴方の事を信用して良い物かは分かりませんが、私の勘は信じても良いと判断しているのでこの紐を手に取ろうと思います」
「我の様な者が掃いて捨てるほどいる世界に送ってやる事もできるが希望はしないだろう?」
「自分の事を雑魚とは思いませんが生きて行ける自身はありませんので遠慮させて頂きます」
真っ黒な紐を掴むと意識や体がゆっくりと引っ張られるのが分かった。
「名は?」
「ソールです」
「その名……覚えておこう。そして、ま……」
言葉を聞き終える前にソールと名乗った者の意識を失い次に目が覚めた時は見知らぬ草原の上だった。




