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第29話 新たな出会い

 その日はザーッと雨が降っていた。傘を差し、学校から家に帰った。そのはずだったのだが、


「……あ、しまった」


 気づけばセーラと出会うきっかけになった歩道橋に来ていた。階段を登り、上に着いた。しばらく車を眺めていたが、もちろん何も起こらない。


「何を期待してんだか……」


 あいつはもう成仏して会えるはずないのに。


「帰るか」


 階段を降りようとしたとき、つまずいた。


「やべっ」


 地面がスローモーションのように近づいてくる。

 今度こそ死ぬかもしれない。

 そう覚悟したとき、ぐいっと後ろに引っ張られ、尻もちをついた。


「……いてて」

「ねえ、君」


 声の主はスーツ姿の女性だった。どうやら助けてくれたらしい。

 

「……あ、ありがと……」


 お礼を言おうとすると、女性にガシッと掴まれた。


「危ないでしょ! 何、ボーっとしてんの!」


 女性のあまりの剣幕に俺は怯んだ。


「す、すみません」

「全くもう! 私がたまたまいたからよかったけど、君は注意力が足りないよ?」

「……はい」

「三度目はないと思ってね。じゃあ」

「……え?」


 俺は女性の肩を掴んだ。


「ちょっと待ってください!」


 女性が振り向いた。


「何かな?」


 そんな訳ない。ありえないのはわかっている。


「あんた、セーラか?」

「君、何言ってるの? セーラって誰?」


 ああ、本当に俺は何を言っているんだろう。それでも、確かめずにはいられなかった。


「今、三度目はないって言ったよな? 俺は以前もあんたに助けられたってことだ。そんな奴、一人しかいない!」

「……君のことなんて知らない。それに、そんなこと私は言ってない。君の聞き間違いじゃないの? そういうの迷惑だから」


 女性は冷たい声でそう言った。


 そもそもこの女性はセーラと顔や雰囲気が違う。無表情で、あのバカっぽい印象が全くない。


 でも、なぜだかセーラだと直感で思えた。


「ああ、そう。話変わるけど、ちょっと見てほしいものがあるんだ」


 俺はカバンからDVDを取り出した。


「これは俺が作った漫画動画だ」

「ええ!? 完成したんですか!?」


 女性はそう言った瞬間、「あっ……」と口元を押さえた。


「あんたやっぱりセーラだろ」

「……もう。なんでバレるかな」


 セーラは苛立ったようにぐしゃぐしゃと髪をかきむしった。


「一体、どういうことだよ」

「えっと……それが」


 俺から顔をそらしたセーラは、決まり悪そうに頬をかいた。


「実は私、死んでなくてですね……。その、意識不明の状態で入院してたみたいで……」


 俺はポカンとした表情になる。


「じゃあ……成仏したんじゃなくて」

「はい。幽体が体に戻って、この通り退院いたしました」


 何だそりゃ。


「はあ……」


 俺はその場に座り込んだ。


「誠太郎きゅん!? どうしたの!?」


 セーラは心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

 誰のせいだと思ってんだ。


「生きてるならなんで正体隠してるんだよ」


 ギロッとセーラを睨みつけると、


「いや……、私は推しには認知されたくない派で」


 ……ワナワナと怒りが込み上げてくる。


 意味がわからない。俺はセーラが消えてから会いたいと何度も思ってたのにこいつはなんなんだ。


「……誠太郎きゅん、大丈夫?」


 セーラがそう尋ねた瞬間、俺の拳がセーラの頭に振り落とされた。


「痛い! いきなり何!?」


 頭を押さえ、涙目になるセーラを俺は怒鳴った。


「俺は! お前にずっと振り回されっぱなしで……、迷惑かけられて……」


 話すうちに涙が溢れ出てきた。そんな俺をセーラは唖然とした表情で眺めている。


 くそ……止まらねえ。こうなりゃヤケクソだ。こいつに今までの鬱憤をぶつけてやる!


「でも、お前のおかげで、俺は前に進めた! 気持ちが楽になった! だから、せめてありがとうって伝えればよかったって、ずっと後悔してて」

「……誠太郎君」

「なのにお前は会いたくないって何だよ! ふざけんな!」


 一気に話した俺は息が上がった。

 どうだ! 言ってやったぞ!

 そう思ってセーラを見ると、口をぎゅっと結び、俺を睨みつけていた。


「……」


 セーラはしばらく黙り込んだ後、ボソリと言った。


「……だって私、君といたときは……」

「は? 何だって?」


 ゴニョゴニョと話され、上手く聞き取れなかった。


「……君といたときはコスプレしてたから」

「コスプレ? それがどう関係あるんだ?」

「もう……だから!」


 セーラは観念したように話し始める。


「コスプレして、制服着てたときは歳の差を気にしなかったし、人に見えないから周りの目も気にならなかったけど、今は違う! ただのOLなの!」

「だから?」

「だから……、今の地味な姿じゃ、恥ずかしくて君の横に立つのが恐れ多くて……」


 俺は頭を押さえる。全くこいつは。


「……はあ、そんなこと気にしてたのかよ」

「そ、そんなことって! 私は本気で悩んでね!」


 俺がDVDを掲げると、セーラは黙り込んだ。


「とりあえず、この動画見ない? 俺、頑張って編集したんだけど?」


 セーラはぱあっと目を輝かせた。


「ええ!? 見たい! 見たいです!」

「じゃあ、今から俺の家で一緒に見ようよ」

「はい! あ、いや、推しとこれ以上仲良くなるのは……」

「見ないの?」


 セーラはしばらく考え込んだ後、


「……見ます」


 変わらないなこいつは。わかりやすくていいけど。


「あはは、相変わらず欲望に忠実」

「言っておきますけど、私は推しとは一定の距離を取りたい派で……」

「はいはい」

「あ、聞いてます!? ねえ! 誠太郎きゅん!」


 いつのまにか雨は上がっていた。

 そして、セーラの肩越しに見た夕焼けは眩しく、キラキラと輝いて見えた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

なんとか完結させることができました……。


お忙しい中、わざわざ自分の作品を読み続けてくださった方々には感謝しかありませんヽ(;▽;)

本当にありがとうございます。


よろしければ、評価を頂けると次の頑張りにも繋がりますので、よろしくお願いします⭐︎


また、もし次の作品を書く機会がありましたら、読みにきてくださると嬉しいです。


それでは、約1ヶ月間お付き合いいただきましてありがとうございました(^-^)v


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