第20話 神絵師はギャル
「はあはあ……もうすぐ神に会える。成仏しそう」
「おい、落ち着けよ」
息を荒げているセーラは変質者にしか見えない。
「だって、憧れの絵師さんに生で会えるんですよ!? 落ち着ける訳ないでしょ!」
血走った目でセーラはそう言った。
日曜。俺は同人イベントに駆り出された。セーラが神絵師に会いたいらしい。
しかし、セーラが「推しに認知されたくない」と言うので、俺は代わりに同人誌というものを買わされる羽目になった。
行列に並び、神との対面を待っていると、
「はい、次の方どうぞ〜」
ついに順番が来た。
「何部買いますか〜?」
神は女の子だった。年は俺と同年代かもしれない。髪はやや明るい茶髪のセミロングで、緩く巻かれている。肩出しトップスに、黒いミニスカート。ザ•ギャルって感じの雰囲気だ。
「えーっと、い……」
一部と言おうとしたとき、セーラが三本指を立てた。
は? 三冊買えって言いたいのか!? そんなにいらねえだろ。
セーラに睨みを効かせているときだった。
「あれえ?」
茶髪女がぐいっと俺に顔を近づけた。
な、なんだ?
「君、もしかして黒田誠太郎君?」
「そうだけど、何で俺の名前を?」
「やっぱり! その金髪頭とピアス、見覚えあったんだよ。というか君、オタクだったんだね。意外〜」
「違う!」
俺は力強く否定した。
最悪だ。まさか同じ学校の奴に見つかるなんて。
「うちの本買ってるくせに否定するんだ。うける〜」
茶髪女は面白いおもちゃを見つけた子どものような表情を浮かべている。
「だから、これは俺じゃなくてセーラが!」
「セーラ?」
俺は口をつぐんだ。幽霊に脅されたからなんて言ったら頭がおかしい奴だと思われる。
「……なんでもない」
「あはは。もしかしてオタクなことは秘密にしたいタイプ?」
ここはそういうことにしておいて方がよさそうだ。学校で言いふらされても困る。
「……ああ。だから今日のことは」
「心配しなくても誰にも言わないから安心してよ。じゃ、お買い上げありがとうございました〜」
茶髪女はニカっと笑い、ブイサイン。
大丈夫か不安になってきた。
「……黒田君」
セーラが俺をすごい形相で睨みつけていた。
あ、こいつのこと忘れてた。
「ピーチ先生とお知り合いだったんですか!?」
「あいつのペンネームそういう名前なのか」
「私の今、最推しの神絵師ですよ! ほら、今すぐスマホで検索して!」
言われた通り検索すると、イラストが大量に出てきた。
「確かにきれいな絵だけど、妙に男同士の距離感が近いイラストばかりだな」
お互い見つめ合っていたり、抱き合っていたり。中には半裸状態の男が描かれてるものもある。
「はあ……まさかピーチ先生がこんな身近にいらっしゃったとは。これは運命……」
俺の話を聞かず、自分の世界に入り込んでいるセーラ。
「おい、無視するな」
「……黒田君、これは漫画作りを進めるチャンスですね」
セーラがニヤリと微笑み、俺はどういう意味か理解し、青ざめた。
「まさか、あのギャルに頼むのか?」
俺の問いに大きく頷くセーラ。
「はい! ピーチ先生に漫画のイラストをお願いしましょう! 絶対、素晴らしい作品になりますよ!」
セーラの瞳はメラメラと火がついたように煌めいていた。
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