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第19話 もう慣れたよ

「ふう……おいしかったわ」

「嘘つけ。涙目だったくせに」

「さあ! 黒田! まだまだデートは始まったばっかりよ」


 俺の言葉を無視して、水野は元気そうに言った。


「次はどこだよ?」

「映画を見るわよ!」



 



 映画館に着いたとき、「美少年戦隊」というアニメ映画のポスターが目に止まった。確かセーラが観たいと言っていた映画だ。


 そう言えばあいつ今日一回も見かけないな。あいつのことだから何かちょっかいを出してくると思っていたが。


「黒田! そろそろ始まるわよ」

「おう」


ゾンビ映画を観た。水野によるとエドガーがホラー映画好きらしい。


 結構グロかった。水野を見ると平気そうな顔で見ていたので、さすがだなと思った。


 映画が終わり、立ち上がる。水野を見ると、まだ座ったままだった。


「おい、水野……」


 声を掛けた俺は絶句した。水野が座ったまま気絶していたからだ。






「はあ……びっくりしたわ」

「いや、俺の方が驚いたから」


 俺と水野はカフェに入っていた。


「お前意外と怖がりなんだな」

「こ、怖いっていうより苦手なだけよ」


 一緒のことだろ。でも、漫画のためにここまでしてくたんだよな。礼を一応言っておくか。


「ありがとうな」


 俺がそう言うと、水野は怪訝な顔をした。


「何よ急に。気持ち悪いわね」

「気持ち悪いって失礼な奴だな。人がせっかく礼を言ってるのに」

「さっきも言ったけど、私もしたいことだから付き合ってるだけし、それに、嬉しかったから」

「嬉しかった? 何が?」

「黒田が私の小説を褒めてくれて嬉しかったの。否定されると思ってたから」

「……まあ、お前の本、面白かったしな」

「ふふ。ありがとう。そんな私の作品をきちんと読んでくれた黒田とならいい作品を作れると思ったのよ」


 水野は普段見せない満面の笑みを浮かべていた。


「ありがとう。お兄ちゃんは嬉しいよ」


 俺がそう言って笑うと、水野は黙り込んだ。

 やべ、なんか地雷を踏んだか?


「み、水野さん?」


 水野の顔を覗き込むと顔が真っ赤だった。


「えっ?」


 水野の意外な反応に俺は面食らった。


「こっちを……見るなあぁ!」

「ぐはああぁ!」


 水野は俺の顔を掴み、アイアンクローをかました。

 か、顔がもげる……。

 俺がその場にうずくまっていると、水野が立ち上がった。


「もう! これ以上ドキドキさせないでよ!」

「お前ドキドキしてたのか?」

「へっ!? い、いやそれは……」


 水野はしまったという顔をした。


「そ、そんな訳ないでしょ! 馬鹿!」


 そう言って水野は走り去ってしまった。


 何だ、あいつ? というか人の顔を思いっきり掴みやがって。もげたらどうするんだ。


「あらら。黒田さん、デート相手を怒らせちゃいましたね」


 セーラの声が後ろから聞こえた。振り返ると、セーラが残念そうな人を見るような目を俺に向けていた。


「いつからいたんだ?」

「ずっといましたよ。せっかくのデートを邪魔しないようにこっそり見てましたけど」

「ああ、そう」


 やっぱりついてきてたのか。


「水野さん、ちゃんとスターフィッシュのことを考えてくださっていたんですね」

「そうみたいだな」

「それなのに私、デートできるなんて羨ましいなって、水野さんに嫉妬してました」


 セーラは後ろを向き、ポツリと呟いた。


「私はもう、普通の女の子がするようデートはできませんから」

「……」


 セーラの後ろ姿はとても寂しそうだった。なんと言っていいかわかず俺が黙っていると、セーラはパッと振り返り、微笑んだ。


「なーんちゃって! あはは、すみません! 暗いこと言っちゃって!」


 こいつが明るいからつい忘れそうになるが、セーラはもう死んでいる。まだまだやりたいこともあっただろう。


 そう思うと、少し胸が痛んだ。


「美少年戦隊」

「えっ?」


 俺の言葉に、セーラは首を傾げた。


「十八時からのがあるけど、一緒に観ていくか?」

「何ですか急に」


 俺の提案に驚いているのか、セーラは目をパチパチと瞬かせている。


「映画なら普通のデート気分味わえるだろ。相手が俺でよければだけどな」


 嫌味っぽく言う俺をセーラはじーっと見つめた。


「黒田君はいいんですか? 傍目から見たら美少年アニメを一人で見る目つきの悪い高校生ですけど」

「お前に体を乗っ取られるようになってからそういった目には慣れたよ」


 俺が肩をすくめると、セーラは呆れたような表情を浮かべていた。


「黒田君って意外とお人好しですね。脅されてる幽霊に同情してそんなこと言うなんて」

「別にそんなんじゃない。ただの気まぐれだ」


 そっぽを向いて言うと、セーラの笑い声が聞こえた。


「うふふ。まあ、美少女と映画デートができるなんて中々ないですからね。ありがたく思ってください」

「誰が美少女だ。誰が」

「はあ、全く。つれない態度ですね。やっとデレ期が来たと思ったのに」

「そもそもデレてないから」


 そんなたわいもない話をセーラとしながら俺はチケット売り場へと歩いた。


 




 











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