第18話 誰がお兄ちゃんだ
注文したアボカド料理は意外にもおいしかった。水野を見ると苦渋の表情を浮かべながら食べている。
「おい、何だよその顔」
「はあ? 何が?」
水野は涙目で俺を睨みつけた。
「お前、全然おいしそうに食べてないじゃん」
「そりゃそうよ。だって私、アボカド苦手だもん」
水野の言葉に、俺は握っていたスプーンを落としそうになる。
「じゃあ、なんでアボカド料理注文したんだよ」
水野はアボカド料理と格闘しながらこう言った。
「アランのオマージュ作品を作るのよ。彼が大好物の物だったら、食べないと彼の気持ちが理解できないじゃない」
「お前、そこまでするのか? これは仕事じゃなくてただのセ……、俺のわがままなのに」
正しくはセーラのわがままだが。
「……俺の?」
水野は手を止め、じっと俺を見つめた。
「あなただけじゃなくて、私たちのわがままでしょ? 私だって、アランとエドガーの幸せな姿が見たいしね。だから、本気でやるわよ」
そう言って水野は涙目でアボカド料理を再び食べ始めた。俺はため息を吐いた。
はあ、水野もどこかの美少年オタク幽霊と同じくらい頑固な奴だ。
「無理するなよ」
「む、無理なんかしてないわよ」
「そこまで食べたらもう充分じゃね?」
水野は料理を七割ほど食べ終わっていた。
「何としても食べ切ってみせるわ。私、出された物は残したくないし」
真面目な奴だな。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い?」
水野は上目遣いで俺を見つめた。
「応援して」
「えっ?」
ポカンとしている俺に、水野は口を尖らせる。
「お兄ちゃんなら応援してくれるもん」
もんじゃないだろ、水野さん。
「俺はお前のお兄ちゃんじゃない」
何を言い出すかと思えば。どんだけ兄貴が好きなんだこいつは。
「お兄ちゃんは、レイちゃん頑張れ、レイちゃんならできるって言ってくれるもん」
「言わねえからな」
そう言うと、水野は残念そうにがっくりと肩を落とした。
「わかったわよ……言ってみただけだから。チッ」
あからさまに残念そうにしている水野。というか今、舌打ちしたよな? まあ、むかつくけどしかたねえな。元はと言えば俺がこいつを巻き込んだわけだし。
「……レイちゃんがんばれ」
俺がそう言うと、水野は目を見開いた。
「これでいいのか?」
俺が尋ねると、水野は嬉しそうにコクコクと頷いた。
「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
「……だ、誰がお兄ちゃんだ」
満面の笑みを浮かべた水野に不覚ながらもドキッとしてしまった。
くそ、悔しい。
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