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第17話 理想のデートは人それぞれ

 待ち合わせ場所には水野がすでに立っていた。腕時計を見ると、十一時四十五分を指していた。時間前行動はさすが水野という感じだ。

 

「おーい、水野」


 声を掛けると水野がこちらを向いた。白のブラウスに、水色のフレアスカートを履いていた。


 中々かわいらしい……ゲフン、普通の格好だ。


「悪い。待ったか?」

「別に待ってないわ。私も今来たところだし……」


 水野はじーっと俺の上から下を見定めるように眺めている。


「な、なんだよ」


 俺の服装そんなに変だろうか。内心ドキドキしてると、水野は手招きした。


「ちょっとついて来て」

「え? おい! どこ行くんだよ!」


 水野はスタスタと歩き出した。


 


 




「うーん、こっちの方がいいかしら」


 水野は俺に様々な服を当てて、悩ましげに顔を歪めている。


「おい、何してんだ」

「えっ? 服を選んでるんだけど」


 当たり前のように言う水野。


「確認だけど、俺たち遊びに来たんだよな?」


 水野はあの後、服屋に行き、俺の服選びをし始めたのだ。


「……っぽくないのよ」


 水野はボソリと呟いた。


「えっ? 何だって?」


 俺が聞き返すと、水野はキッと俺を睨みつけた。


「お兄ちゃんっぽくないんだもん!」

「はあ?」


 ポカンとしている俺に、水野は続ける。


「だって……せっかくならお兄ちゃんと過ごしたいのよ!」

「……」


 俺は絶句した。まさかここまで重傷だと思わなかった。


「……ブラコン」


 ジト目を水野に向けると、水野は言い訳をし始めた。


「しょ、しょうがないじゃない! こんな機会そうそうないだろうし。黒田はお兄ちゃんに似てるからつい欲望……、ゴホッ! ゴホッ! いや、何でもないわ!」


 今、欲望って言ったよな?


「だから今日一日、お兄ちゃんの格好してくれない?」

「嫌だ」


 俺が拒絶すると、水野はポンっと俺の肩を叩いた。


「黒田、どうしてそんなわがままを言うの?」


 まるで俺が間違っているような言い方だ。


「いや、わがまま言ってんのはお前だろ」

「はあ……」


 水野は頭に手を当て、やれやれというように肩をすくめた。


「私、ガサツで自分勝手な黒田じゃテンション上がらないのよ。なんなら罰ゲームに近いわね」


「おいっ! 失礼すぎるだろ!」


 睨みつけると、水野はキラキラとした表情を俺に向けた。


「でも、黒田がお兄ちゃんっぽい格好してくれたら私、エドアラの素敵なシーンが書けそうなの! だから、ダメかしら?」


 こいつ、俺の痛いところをついてきやがった。

 俺は覚悟を決めた。


「……わかったよ。もう水野の好きにしてくれ」


 俺の了承に、水野は顔を輝かせた。


「本当!? ありがとう! うふふ、完璧なお兄ちゃんコーデを黒田に施してあげるから、楽しみにしてて!」


 ウキウキとした様子の水野に、俺は不安しか抱けなかった。







 数時間後。


 俺は水野コーデを来て、カフェに来ていた。水野兄の髪色に合わせて、水野が持参していた茶髪のウィッグも被せられた。


「はあ……かっこいい」


 水野はうっとりとした表情でそう呟いた。


「好評のようで何よりだよ」


 呆れる俺に、水野はキリッとした表情を向ける。


「勘違いしないでくれる? 私は黒田じゃなくて、お兄ちゃんっぽい服装をした黒田をかっこいいって言ったの。黒田個人を褒めたわけじゃないわ」

「はいはい」

「はあ……一生喋らないで欲しいわ」


 こいつ、ホント俺の外見にしかときめかないんだな。


「そんなことより、何頼むか決まったのかよ」

「ここはアボカド料理がおいしいらしいわ。それにしましょう! それに、アドカドは、アランの大好物だからね!」


 水野は立ち上がり、ワクワクとした表情でそう言った。そのせいで周りの視線が俺たちに集まる。


「お、おいっ!」


 慌てて水野を座らせようとしたが、水野は早口で話し続ける。


「原作ではエドガーがアランのためにアボカド料理を作っていたでしょ? だからもし、二人が遊びに行くとしたらアボカド料理を絶対食べに行くはずよ!」

「わかった! わかったから、落ち着け!」


 俺はなんとか水野を落ち着かせ、座らせた。

 全く、セーラといい、水野といいオタクって奴は面倒だ。




お読みくださり、ありがとうございます。


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