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第16話 不機嫌

 土曜日。俺は集合場所の駅に向かい歩いていた。


「よかったですね。デート日和の快晴で」


 その横をふわふわと浮きながらついてくるセーラの声は不満げで、表情はいつもより険しい。


「その割には不機嫌そうじゃん」

「私はいつもこんな感じじゃないですか」


 いじけたようにそう言って、プイッと俺から顔を背けるセーラ。その態度にイラッとした。思えば、セーラは俺が水野とデートに行く約束をした日から機嫌が悪い。


 何をイラついてんだ、このオタク幽霊は。


「いつもは無駄に笑って、無駄に明るいだろ」

「いつも仏頂面の人よりマシだと思いますけど」


 俺とセーラはしばらくお互いににらみ合う。見えない火花が散っているようだった。


「そもそも、君は人に対して酷いこと言いすぎなんですよ。親のお腹の中にデリカシーを置いてきたんですか?」

「そんな奴につきまとってる奴は誰だよ。嫌ならどっか行け。というか早く成仏しろ」


 こいつが来てから振り回されっぱなしだ。美少年グッズをすぐに買いたがるから、財布の中身も軽くなるばかりだし。


「私だって……好きで君といるわけじゃありませんよ」

「そうかよ。だったら好きな奴のところに行けよ。俺のことなんて嫌いなんだろ」


 こっちは脅されて仕方なく協力してやってるのに。文句を言いたいのは俺の方だ。


「バ……」

「バ? 何だって?」


 セーラが何か呟いたが、聞き取れなかった俺は聞き返した。すると、セーラはカッと目を見開き、一言。


「バアーーカアァ!」


 悪口としては幼稚だ。だが、セーラの憎たらしげな言い方に、気がつけば俺は怒鳴り返していた。


「バカって言われる筋合いはねえよ! アホ幽霊!」


 俺が睨みつけると、セーラはふんと鼻で笑った。


「そんな大声で叫ぶと頭のおかしい人に思われますよ」

「はっ!」


 しまった。ついムカついて大声で叫んでしまった。気づけば周囲から不審な目でジロジロと見られていた。


 く、くそ……! セーラの声は俺にしか聞こえない。だから、はたからは一人で怒っている頭のおかしい奴にしか見えないだろう。


 俺がその場から逃げるように歩くスピードを速めると、セーラの呟くような声が聞こえた。


「……本当にバカだね、君は。私が君を嫌いになるわけないのに」

「えっ?」


 俺が振り返ると、セーラの姿はなかった。




 





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