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第12話 シスコン妹キャラ、登場

 次の日の放課後。俺は水野の家へ向かった。


「ふふん〜♪ 」


 セーラはいつものようにふわふわと浮遊しながらついてくる。それにやけに上機嫌だ。鼻歌まで歌っている。


「やけに機嫌がいいな」

「同志に会えるからですよ!」


 嬉しそうに答えたセーラに、俺は首を傾げた。

 

「同志ってまさか水野のことか?」


 セーラはこくりと頷く。


「はい! 私、彼女が視聴覚室に置いていた本を読んだんです。禁断エロチカ!」


 禁断エロチカという言葉を強調するセーラに、俺は呆れる。


「そのタイトルを大声で言うなよ。聞いてるこっちが恥ずかしい」


 セーラは俺を無視をし、ベラベラと話し続ける。


「私、あの手の本初めて読んだんですけど、意外と面白くて。兄と妹の関係性ゆえの切ない恋愛に胸がきゅ~となったんです! ときめきすぎて成仏するかと思いましたよ」


 あははと笑ったセーラに、俺はボソリと呟く。


「……そのまま逝けばよかったのに」

「え? 何か言いました?」

「何も。まあ、今の感想を水野に言ったら喜ぶだろうな」

「はい! ぜひこのたぎる気持ちを分かち合いたいです!」


 セーラはそう力強く言った。


「いや、そうじゃなくて……」

「あーー! 着きましたよ! 水野さんのおうちに!」


 そうこうしているうちに、目的地に着いた。住宅地に佇む二階建ての家。


 玄関のチャイムを押すと、家の中から「はーーい」と子どもの声が聞こえた。


 ガチャリと玄関が開き、目の前に小さな水野が現れた。おそらく水野の妹だろう。顔立ちがとても似ている。


 水野妹は俺の顔を見て、時が止まったようにピタリと硬直した。


「もう! 黒田君のヤンキー姿に妹さんが引いてるじゃないですか!」


 セーラの言葉を無視して俺は水野の妹に話し掛けた。


「あのさ、水野……、レイさんいる? 俺、同じクラスで、レイさんが学校に来てないから、様子を見に来たんだ」


 そう言うと、水野妹はぱちぱちと瞬きをした。


「あっ! ごめんなさい! どうぞ中へ入ってください」


 水野妹はニコッと笑う。水野にはない愛想の良さだな。顔が似ていても性格はだいぶ違うらしい。俺は水野妹に案内され、リビングのソファーに座った。


「あの、これよかったら」


 水野妹はケーキとティーカップに入った紅茶を出してくれた。


「ありがとう。いただくよ」


 紅茶を飲んでいると、水野妹がじーっと俺の顔を凝視してきた。その視線に耐えられなくなった俺は水野妹に尋ねる。


「あの……俺の顔に何かついてる?」

「えっ!? いや、そんなことないです!」


 水野妹は慌てたように首を左右に振る。


「さっきからめちゃくちゃ俺の顔を見てるから気になって」

「ごめんなさい。ちょっと驚いてしまって」


 申し訳なさそうに言う水野妹に、俺は首を傾げた。


「驚いたって何で?」


 水野妹は俺の顔を見据え、こう言った。


「あの……、お兄さんはもしかして黒田さんですか?」

「そうだけど。何で俺の名前知ってるの?」

「やっぱり!」


 水野妹は嬉しそうに手を叩いた。


「お姉ちゃんがよく黒田さんの話をするんですよ。金髪の目つきの悪い同級生がいるって」


 水野妹に満面の笑みでそう言われた。

 金髪の目つきの悪い同級生……悪口だな。


「あはは……、レイさん俺のことそんな風に君に話してるんだね」

「うちのお兄ちゃんに似てるからついついかまっちゃうって」


 水野妹は苦笑しながらそう言った。


「お兄さんがいるの?」


 俺の問いに、水野妹は顔を少し曇らせた。


「はい……今はどこにいるのかわかりませんけど」

「わ、わからない?」


 どういうことだ?


「お兄ちゃん、彼女と駆け落ちしちゃったんです」

「……」


 まさかの答えに、俺は言葉が出なかった。水野兄は意外と激しい性格をしているんだな。


 いつも学校の規則を頑なに守っている水野のイメージから、そういった兄は想像できなかった。


「お姉ちゃん、重度のブラコンだったから、お兄ちゃんが駆け落ちしちゃったときすっごく落ち込んでたんですけど、高校に入学して、黒田さんに出会えてからは元気になったんです!」

「そうだったんだ……」


 その割にはいつもケンカをふっかけられていたが。


「でも、三日前、突然『もう学校に行けない! 人生の終わりだ!』なんて言い出してから部屋に引きこもっちゃって。何があったのか心配で。黒田さん、何か知ってます?」


 水野妹にじっと見つめられた俺は思わず顔を逸らした。


「い、いやあ~、俺も知らなくてさ。あははは……」


 君のお姉さんが学校にエロ小説を大量に持ってきたことを俺に知られたからだとは言えない。


「姉は真面目で、優しくて、まさに私の理想なんです。そんな姉を誰かが傷つけたとしたら私、絶対に、許しません。地獄のはてまで追いかけて復讐します」


 殺し屋のような顔をしてそう言った水野妹に俺はブルッと身震いがした。


 強い殺意を感じる。俺が水野を泣かせたことを知られたら無事では済まなさそうだ。


「ふ、復讐は何も生まないよ?」

「うふふ♡ 冗談ですよ」


 水野妹は微笑んでいたが、目が笑っていなかった。


 こ、怖い。俺は思わず手に持っていたカップをガタガタと揺らし、落としそうになった。


「あれ? 黒田さん、顔色悪くないですか?」


 ま、まずい! 俺が元凶だと知られたら何をされるかわからない。


「い、いや! そんなことないよ! 元気、元気!」

「そうですか。それならいいですけど、体調が悪くなったら遠慮せずに言ってくださいね?」


 ニコリと微笑む水野妹。


 ああ……見た目だけなら天使のように見える。でも、あの殺し屋のような目つきを忘れてはいけない。


「あはは……ありがとう」


 俺が礼を言うと、水野妹が立ち上がったので、俺はビクッと震えた。


 何をビビっているんだ俺は。


「では、姉の部屋へ案内しますね! 黒田さんが来てくれたので、姉も少しは元気になると思います!」


「……元気になるかな?」


 むしろ、その逆になりそうだけどな。



お読みくださり、ありがとうございます。


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