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第10話 ツンデレ風紀委員の意外な一面

「ここは何の教室ですか?」

「視聴覚室だよ」

「ふーーん」


 セーラは視聴覚室を廊下側からジーッと眺めている。


「そこは大して参考にならないと思うけど。授業でもたまに使うだけだし」


 視聴覚室はスクリーンを利用した授業や講演会などがあるときに使われる。その使用頻度は一ヶ月に一回あるかないかほど少ない。


「なんだか感じます!」

「感じるって何が?」


「人の出入りの少ない教室。大抵、こういった部屋では、生徒と先生の逢引部屋として使われていることが漫画では多いんですよ!」


 セーラは自慢げに答えた。


「お前はどんな漫画を今まで読んできたんだ」

「まあ、入ってみましょうよ! 入るのはただですし!」

「あー、はいはい。仰せのままに」


 俺はしぶしぶドアを開け、教室に入った。中にはもちろん誰もいない。


「ほら、誰もいないだろ」

「あれ? 奥に誰か座ってますけど」


 見ると、女子生徒が机にうつ伏せになり、眠っていた。まさか人がいるとは思わなかった。


「近づいてみましょう!」

「お、おいっ!」


 セーラの後を追い、俺は女子生徒に近づいた。


「こいつは……」


 驚いた。それは水野レイだったからだ。気持ちよさそうに寝息を立てている。


「ありゃあ、これまた意外な方でしたね」


 学校で会えば、口喧嘩。怒っている顔しか見ていなかったが、長いまつ毛に、子どものようなあどけない寝顔。


「黙ってればかわいいのにな」

「はあぁ?」


 思わずそう呟いた俺を、セーラは変態を見る目つきで睨みつけてた。


「君、こういう子がタイプだったんですか?」

「なんでそうなるんだよ」

「だって、かわいいって言ったじゃないですか。私にはそんなこと言わないのに」


 セーラは不満そうに口を尖らせている。


「もしかしてやきもちやいてるのか?」


 俺がそう言うと、セーラの顔がカッと赤く染まった。


「は、はあぁ!? どれだけ自意識過剰なんですか!?」

「うるさい奴だな」

「ふぁあ~」


 俺とセーラが不毛な言い争いをしていると、水野が薄く目を開けた。起こしてしまったらしい。


「う~ん、私いつのまに眠って……、というか今何時?」


 目覚めた水野はまだ眠そうで、ボーッとした顔をしていた。


「十七時だけど」


 俺が時刻を告げると、水野は俺に顔を向けた。


「ああ、そうなの。ありがとう……」


 そう言って、俺を見た水野の顔色はサーッと青くなる。


「な、なんで! 黒田がここにいるの!」


 水野はガタンと音を鳴らし、椅子から立ち上がる。その瞬間、机に置かれていた鞄が床にドサっと落ちた。おそらく水野のものだろう。


「何やってるんだよ」


 俺が水野の鞄から落ちた筆箱や教科書やらを拾っていると、


「うん? なんだこれ?」

「あ……そ、それは」


 床に落ちたものの中には本も落ちていて、なぜか同じものが五冊ほど散らばっていた。


「……」


 俺は絶句した。なぜならその本の表紙に釘付けになったからだ。


 タイトルは「禁断エロチカ〜兄妹の秘密事」。表紙には上半身裸の女子高生のイラストが描いてある。おまけに五冊のうち一冊は本がめくれていて、表紙裏にサインが書かれているのが見えた。


「こ、これはエッチな本! しかも、サイン入りということは水野さん相当のファンのようですね!」


 セーラが鼻息を荒くしてはしゃいだように言った。なんでお前が興奮してんだ。


 セーラに冷めた目線を投げた後、水野を見ると、顔を赤らめ、肩をプルプルとふるわせていた。


「え~と……」


 俺が言葉につまっていると、


「それ! 私のじゃないから!」


 水野さん、それは無理がありませんか?

 はて、どうしたものか。


「私のじゃ……ない」


 涙目で言う水野を見た俺はいたたまれない気持ちになった。


「そ……そうだよな。お前がこんないかがわしい本持ってるわけないよな」


 泣かれても困るので、俺は水野の言い訳に乗ることにした。

 水野感謝しろよ。

 そう慈悲の心を向けると、水野はこう言った。


「そ、そうよ。私はあんたと違って、真面目な生徒なんだから」

「はっ?」


 こ、こいつ……。かわいそうだからバレバレの嘘に乗ってやったのに。

 水野は俺の気持ちを無視して続ける。


「私は、毎日乱れた格好で学校に来るような、不良のあんたとは違うのよ!」

「お前、ふざけんなよ!」


 俺は我慢できなくなり、机をバンと叩いた。水野はビクッと肩を震わせる。


「……な、何よ。びっくりするじゃない」

「びっくりしたのはこっちだよ! なんてもの学校に持ってきてんだ!」

「いや……だから私のじゃ」

「お前の鞄から出てきたから絶対お前のじゃん! 何が真面目だよ! 真面目な奴はこんないかがわしい本、学校に持ってこないから!」

「だから……違う……」

「もういいよ! 否定しなくて! お前が破廉恥女だということは充分わかったから!」


 俺はそこまで言ってハッとした。

 しまった。水野の態度があまりにもあれだったので、つい本音をぶちまけてしまった。

 水野を見ると、俯いている。


「……したことないくせに」


 水野がボソリと呟いた。


「何だって?」


 俺が聞き返すと、水野はキッと睨みつけてきた。


「書いたこともないくせに、否定ばっかりすんな! バアァーーカ!」


 水野はそう大声で叫んだ後、教室から走り去っていった。

 

「……」


 俺は水野の走り去った方を呆然と眺めた。


「あーーあ。女の子泣かしちゃって」


 セーラの責めるような口調に腹が立った。

 悪いのは水野だろ。


「知るかよ。あいつが学校にエロ本持ってくるのがいけないんだろ」

「明日、水野さんが学校に来なかったら、君のせいですよ」

「俺は悪くない。それに、こんなことぐらいであいつが休むわけないだろ」

「そうだといいですけどね。乙女心は繊細ですから」


 次の日、セーラの言う通り水野は学校に来なくなった。

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