九つ目
我がリアグループの俺以外のみんなは、モンスターを配置したりして頑張っている。
だが、どうやら他のグループに遅れを取っているようで、俺は学校にくれば百パーセントは死んでいた。
つか、学校で活動できてねぇじゃねぇか。
そこで我々グループは、パーティを組んで、団体行動しようという事になった。
団体で行動していたら、俺達のグループが、一気に他のプレイヤにばれてしまう恐れもあるが、スマフォを通して見られれば、どうせすぐにばれるんだし、そうする事に決めた。
パーティは、常に誰かと、十メートル以内に繋がっていなければならない。
一度十メートル以上離れると、パーティは解消されてしまい、再び登録しなければならなくなるからだ。
とは言えみんなクラスが違うから、授業中もパーティを組めるのは、となりのクラスであり、一番前と一番後ろに座る者同士だけだった。
スマフォを教室の後ろに置いたりすれば良いと提案してみたが、そんな面白くない事はしたくないと、何故かみんなの意見が一致していた。
まあ確かに、自分が移動しているのに、ゲーム内では移動していないなんて事では、なんだかつまらないもんね。
だから俺たちのグループでは、体育の授業時間以外は、スマフォを肌身離さず持っている事を義務づけていた。
というわけで、肌身離さず持っていて、上手くパーティが組めそうな奴を探した。
俺は一番後ろの席で、隣のクラスに我がグループの、「高橋えり」がいたが、あいにく高橋は、一番前の席ではなく、十メートル以内に入っていなかった。
そこで私は高橋に策を授けた。
「高橋は、目が悪かったよね」
正直、全然悪くない。
むしろ高橋は、視力が良いところだけがチャームポイントの女の子だ。
それなのに高橋は、担任の先生に、「黒板の文字が見えないので、一番前の席にしてください」と頼んで、一番前の席に替えてもらっていた。
グッジョブ高橋。
お前の雄姿は、このゲームで勝つ事ができたら、語り継ぐ事にしよう。
こうしてなんとか、俺と高橋、そして吉田と佐藤が、授業中もパーティを組む事に成功していた。
しかしだ。
授業が終わった後も、俺は常に高橋と離れないようにしなければならない。
席を一歩も動かないか、それとも教室の後ろのドアから出て、高橋のいる教室に行くか。 トイレの時なんかは、ついてきてもらわなければならない。
俺は良いが、高橋は嫌だろうと思っていたら、案外高橋は平気だった。
むしろ俺が、女子便所の前で待っている方が兵器だった。
みんな白い目で俺を見ていった。
くそっ、これもゲームに勝つ為だ。
おかげで今日はまだ、生き延びているじゃないか。
こうして俺は、女子からの評判を悪化させつつも、勇者として頑張っていた。
流れそうになる涙を我慢して、俺はなんとか四時間目までやってきた。
だがここで、数学の先公が俺を当てやがった。
「坂本!前に来て、この問題といてみろ!」
この先公、俺を殺す気か?
今前に出てパーティから外れたら、この学校では生きてはいけないのだぞ。
もし今パーティから外れて、この教室にモンスターを放たれてみろ、即死だよ即死。
どうやらこの教室には、俺よりもハイレベルの勇者がいるようなのだから。
今まで何度かスマフォ越しに確認したけれど、いつも見つけられないでいる。
向こうは完全にこちらの動きを把握していて、そして監視されているようなのだ。
ここは何としても、前に出なくて済むようにしなければ。
「すみません、わかりません」
俺は立ちあがって、そうこたえた。
これで引き下がってくれればいいと思っていたが、数学の先公はしつこかった。
「じゃあ、この問題ならどうだ?」
黒板に書かれた問題は、小学生でも解ける簡単な問題だった。
「2/3ですね」
俺がそうこたえると、何故かこの先公は
「前に来て、ちゃんと途中計算式を書け」
とか言って、チョークを持つ右手を差し出してくる。
いい加減にしてくれ。
この先公は、俺を殺したいのか。
ふと此処で思った。
この先公は、知っているのではないかと。
俺はいつも、クラスメイトなど学生ばかりを警戒していたが、このゲームをしているのは、子供ばかりではないのだ。
なるほど、そういう事か。
まったく、先生が生徒相手にマジになりやがって、そんなに一千万円が欲しいのか。
って、そりゃほしいわな。
仕方がない、今日は引き下がってやる。
でも明日、あんたは死ぬ事になるぜ。
俺は黒板に向かって歩いた。
これでパーティは解消されただろう。
先公からチョークを受け取ると、解答を黒板に書いて席に戻った。
間もなく、俺のスマフォがプルプルと震えていた。




