七つ目
今日は日曜日、俺は彼女と一緒に、遊園地に来ていた。
俺に彼女がいたのが驚きだとか、どう考えてもあり得ないとか、そんな苦情は受け付けない。
とにかく、俺には彼女がいたのだ。
「直也くん、入ろう」
そうそう、俺、直也くんだった。
普段あまり名前を呼ばれる事がないから、すっかり忘れていたよ。
「うん。今日は晴れて良かったね」
ふぅ~、久しぶりにこんなに沢山喋ったぞ。
心の中ではバカみたいに喋っているが、俺は普段、寡黙で影のあるいい男で通っているのだ。
俺たちは、腕なんか組んじゃったりして、遊園地へと足を踏み入れた。
しかし此処で、俺は何やら嫌な予感がした。
これだけ人が集まる場所、しかも今日この遊園地では、特別アイテムの配布が行われる事になっている。
実はそれが目当てで、彼女のチケット代金を出してまでも、此処にきたのだ。
なんとかこの遊園地の状況を確認したいが、大っぴらに確認すると、俺が勇者である事が、他のプレイヤにばれてしまうし、彼女にも変な目で見られるかもしれない。
ぶっちゃけ、誰かがスマフォを通して俺を見たら、勇者である事はあっさりとばれるのだけれど、彼女にだけは何故かばれたくない。
ほら、勇者だって分かったら、ますます惚れられるじゃん?
とにかく、うまい具合に確認できないだろうか。
そうだ!
えーっと・・・彼女の名前忘れた。
つか、まだ決まっていなかった。
よし、さっちゃんでいいや、さっちゃんで。
「さっちゃん、そこに立って。写真撮るから」
うほっ、こんなに喋ったのは、本当にマジで久しぶりだな。
いつもほら、メールでやり取りするし。
それにさっちゃんは、俺の考えている事を結構分かってくれるし、話さなくても大丈夫なところあるし。
「うん。此処で良いかなぁ?」
「オッケー」
俺はスマフォをポケットから取り出し、遊園地を背にする彼女にカメラレンズを向けた。
こうやって、さっちゃんの背後に、モンスターがいないか確認するのだ。
ディスプレイを覗くと、なんと驚く事に、さっちゃんも勇者だった。
名前は、「私」って、こいつバカじゃね?
つか、俺のキャラ名も、「俺」だけど・・・
似た者同士で最高のカップル。
しかし、驚いてばかりもいられない。
ちゃんと写真も撮らないとだし、背後も確認。
って、モンスターが所せましと放し飼いにされているじゃねぇか。
モンスターは、二メートルがアクセス圏だから、それが重ならないように、四メートル以上離して配置しなければならない。
その距離ギリギリに詰め込まれるように、モンスターがいっぱいだった。
こんなところを突き進んで大丈夫だろうか。
そうだ、さっちゃんとパーティを組めば、もしかしたら行けるかもしれない。
さてどうする?
話して共に頑張るか、それとも隠しておくべきか。
そうこう悩んでいたら、さっちゃんがスマフォのカメラをこちらに向けていた。
これは・・・ばれたな。
こうなったら、共に頑張るしかあるまい。
「あれぇ~直也くん、リアやってるんだぁ~」
「うん。まあね」
俺、頑張れ。
ふだんあまり話せないチキン野郎だけれど、此処は頑張るところだ。
「どうして教えてくれなかったのぉ~だったらパーティ組めるじゃん」
おっ、これは向こうから、パーティの申し入れか。
なるほど、もしかしたらさっちゃん弱いから、誰か仲間が欲しかったに違いない。
「じゃあ、パーティの申請するね」
「うん」
すぐに「私」から「俺」に申請がきた。
俺はそれを受け入れる。
すると相手のステータスが表示された。
「えっー!」
俺様ビックリしました。
「直也くん、まだこんなレベル低いんだぁ~」
なんとさっちゃん、こんなにもレベルが高いとは。
俺なんてまだ三十一なのに、さっちゃんのレベル四十三って。
十レベル以上強いし。
むしろパーティになっていただいて、ありがとうって感じですがな。
「今日は直也くんにおごってもらっているから、リアでは助けてあげるよ」
「ありがとう・・・」
くっ、なんだか凄く屈辱だ。
つか、チケット代金しか出すつもりはなかったのに、これでは全部おごりになりそう。
思った通り、チキンの俺は、昼食もおやつも、お土産も帰りの電車賃も、出してしまいましたよぉ。
だけど、配布アイテムは手に入ったし、死ぬ事なく、遊園地を出る事ができました。
良かった良かった。




