四十三回目
いよいよ、ラスボス退治の時が来た。
俺たちのパーティは、俺と、佐藤、さっちゃん、南、高橋、そして陽菜ちゃんだ。
正に、全国最強のパーティと言えるだろう。
これでラスボスが倒せなければ、誰にも倒す事はできないに違いない。
宝具も、俺は4種類、南以外の他のメンバーも二三種類装備して、万全の状態だ。
AIも、対人用の範囲攻撃や複数人攻撃は全て削除し、一撃に強い攻撃オンリーに設定し直した。
さあ吉田、見ていてくれ。
俺たちはお前の仇をとる為に、ラスボスを必ず倒す。
ちなみに、パーティでラスボスを倒し、最初のクリアとなった場合、賞金の一千万円は、パーティみんなで分ける事になる。
一人で賞金を貰うのに、チョッピリだけ罪悪感もあったから、これはこれでいいだろう。
何度も言うようだが、残念だったな吉田。
「ぷっ!」
なんでさっちゃんが笑っているんだ?
高橋の腹黒がうつってしまったのだろうか。
まあ、面白いからいいけど。
ではいよいよ、最後の戦いだ。
俺がスマフォを見ると、ラスボスがいる場所まで、ナビする矢印が表示されている。
それをたどって歩く俺に、みんなも歩いてついてくる。
草むらを抜け、森を歩き、山を登って洞窟に入り、湖を泳いで渡った先に、どうやらラスボスの住処が見えた。
って、気分的にね。
そして目の前にスマフォをかざすと、ディスプレイにはラスボスが表示される。
強そうで鈍重な龍のビジュアルが、俺たちの興奮を掻き立てる。
「ハァ、ハァ、ハァ」
いやちょっと、みんな興奮しすぎw
俺は振り返り、みんなの顔を見た。
みんな、怪しくも立派な、勇者の顔をしていた。
俺は再びラスボスの方を向くと、スマフォを振りかざし、今、二メートル以内に入った。
・・・
残念ながら、俺のスマフォは、プルプルと震えていた。
どうやら、負けてしまったようだ。
目の前につりさげられていた一千万円は、俺たちをあざ笑うかのように、手の届かないところに、逃げていってしまったようだ。
俺はがっくりと肩を落とし、膝を地面に落とした。
すると、後ろから陽菜ちゃんの、大喜びの声が聞こえてきた。
「やったぁー!」
おいおい、俺のがっくりする姿は、そんなに嬉しいのかい?
そう思ったが、どうやら違ったようだ。
「お兄ちゃん、あたしたちが一番だよ!」
俺は一瞬、何を言っているのか分からなかった。
他のみんなも、すぐには理解できなかったようだ。
しかし、自分のスマフォを見て確認すると、大きく「トップクリア、おめでとう」の文字が表示されていた。
どうやら先ほどスマフォが震えたのは、ゲームクリアを知らせる為のものだったようだ。
まったく、味な真似をしやがるゲーム制作会社だな。
「はははは・・・」
俺はなぜだか、笑っていた。
するとみんなも、同じように笑いだした。
その笑い方は、完全な悪役の笑い方であったが、どんな笑い方をしていても、勝者が正義の世の中だ。
今日からこの笑いは、正義の笑いとなるのだろう。
横で陽菜ちゃんが、
「お兄ちゃん、なんか怖いよ」
なんて言っていたが、その顔はとても嬉しそうだった。
こうして、長きに渡る勇者の冒険は、今、終了した。
「このゲーム、ここで終了じゃないんだね」
おいおい、今俺が心の中で終了を宣言したのに、なに高橋は、水を差すような事を言っているのだ?
そう思ってスマフォを見ると、第二ステージ開始と表示されていた。
なんですと!
俺は休む間もなく、再びこの呪われた世界へと、足を踏み入れてしまう事になるのか。
望むところだ、やってやろうじゃねぇか!
俺はこぶしを握りしめ、空を見上げた。
すると、通りすがりの部外者、陸上部の奴が声をかけてきた。
「あ、そろそろスタート地点に集合だから。よろしくね」
どうやら、新たな冒険の前に、マラソン大会に参加しなければならないようだ。
でもこれも、勇者としての新たな冒険のスタートにほかならない。
「全力で走って、ザコモン倒しまくってやるぜ!」
俺がそういうと、陽菜ちゃんだけが、「おー!」とこたえてくれていた。
他の奴らは賞金を手に入れて、もうどうでもいいといった感じだった。
しかし俺は勇者だ。
そこにモンスターがいるなら必ず倒す。
俺の心は意味もなく、やる気に満ちあふれていた。




