四十一回目
この日、インターネットサイトに、宝具持ち勇者の情報がアップされていた。
その中には、宝具を五種類集めている、「俺」の情報もあった。
どうやって持っている宝具の種類まで把握したのか疑問だったが、他人の情報を得る事ができるアイテムがあるらしい。
正直、自分の情報が流出したのは腹立たしいが、他の人の情報は得難いものだ。
それらを見られた事は、俺たちにはありがたい。
情報によれば、既に宝具を六種類そろえている奴が、全国に二人いた。
二人とも、俺が戦いを挑むには、かなり遠い所に住んでいる人だった。
そんな二人のうちの一人が、もう一人の六種類持ち勇者に対して、ネットの掲示板に、宣戦布告を書いていた。
どうやら、春休みを利用して、そのプレイヤに対して、戦いを挑みまくるらしい。
ちなみにこのゲームには、遠征する為に、特別なルールがあった。
それは、提携しているホテルに泊まっていれば、本拠地を一時的に、そのホテルに移動できるというものだった。
まったく、商魂たくましいゲーム制作会社だなおい。
とは言え、これくらいは今では当たり前。
むしろ逆に考えて、ゲーム料金を払ったのに、リアルにおまけがついてくると考えれば、むっちゃお得感があるじゃねぇか。
要するに、ゲーム料金払ったら、リアルの服や宿泊チケットがついてくる感じ。
だったら、俺のあの招待状も使ってやっても良い気もするが、おまけで宿泊できても、別に何も嬉しくないよな。
とにかく、目の前に迫った春休み中に、このゲームもとうとう決着がつきそうだ。
俺たちはなんとしても、春休みに入る前に、もしくはなるべく早い時期に、このゲームをクリアしなければならない。
と言うわけで、みんなで屋上に集まって、緊急対策会議を開いていた。
「吉田がいないので、僕が仕切るお。もうすぐゲームクリアしそうな人がいるわけだけど、僕たちはそれよりも早くクリアしなければならないお。僕達も遠征するのか、それとも今のままやっていくのか、そのへん意見がほしいお」
佐藤が何を言っているのか俺には分からないので、さっちゃんに同時通訳を頼み、佐藤の言葉を理解した。
このままか、俺たちも遠征するか、か・・・
しかし、遠征するとなると、金がかなりかかる事になるのだろう。
親の買い物を手伝って、毎日少しずつちょろまかして貯めた金が少しはあるが、その多くは、その日のうちに、駄菓子やアイスに消えている。
とてもじゃないが遠征なんてできない。
と言う事は、結局俺たちには、何もできないって事じゃないか。
あの招待状を利用しようにも、当然そんなホテルに泊まる金もなければ、行く事も不可能なわけで、使用する事はできない。
「集まったは良いけど、結局私たちには、何もできないと思うの。ただの学生に、選択肢はないと思うの。要するに私が言いたいのは、こうやって集めて相談しても無駄だと思うの。「だれだよ集合かけたのは!」って、佐藤くんを見るといいと思うの」
うむ、南は偶にしか喋らないが、喋る時はいつも正しい事を言う。
「だれだよ、集合かけたのは!」
俺とさっちゃんと高橋は、そう言って佐藤を見つめた。
すると佐藤は、「ポッ!」と言って頬を赤く染めた。
っておい、別に好意の目で見てるわけじゃねぇぞ。
まあいい。
結局俺たちには何もできないと、結論がでたわけだ。
結論がでた会議だったのだから、やらないよりはマシだったのだろう。
俺がそう思って立ちあがると、高橋が、
「ただで南北千住ホテルに泊まれるなら、ラスボス倒しにいくのにね」
と、今にも泣き出しそうな空を見つめながら呟いた。
当然だ。
ただで泊まれるなら、むしろ倒しに行かないと罰が当たる。
だけど、そんなおいしい話が、有る筈もない。
みんなも同じ気持ちのようで、ただ心無く、「そうだね」と呟いていた。
その言葉を聞いて、なにやら高橋がニヤリと笑ったように見えた。
まったく、高橋はいつも何を考えているのかわからない。
だから俺は意味も無く、同じようにニヤリと笑ってこたえた。
俺の顔を見て、高橋はただ、頷いていた。




