三十二回目
冬休みが終わり、俺は学校で、ようやく仲間たちに宝具の話をする事ができた。
近所のパーティメンバーには、一緒に手に入れたわけだから、当然話してはいるが、協力してどうこうするメンバーではない。
言ってしまえば、レベル上げと死なない為だけの仲間だ。
と言うか、むしろ近所付き合いや、子守り、或いはマラソンがメインだ。
俺はそれらを引きうけて、アイテムと経験値を貰っていると言えるかもしれない。
そんなわけで、昼休みは屋上で、緊急対策会議が開かれていた。
「まず、今後どうするかを考えなければならない。坂本が宝具をそろえるのに協力するのか、それとも、別の道を選ぶのか」
吉田の言う通り、勝利した時に一千万円を貰うのが、宝具をそろえる俺である以上、それに協力したくないという人も、きっといるのだろう。
もしも吉田や佐藤の為に、俺が協力するのかと考えれば、ぶっちゃけお断りだ。
でも、さっちゃんの為なら何も問題は無いし、高橋や南でも、まあ協力しようと思う。
これってもしかして、みんなが俺の事をどう思っているのか、分かってしまうという事かもしれない。
それで、もしも協力できないとか言われたら、なんだか凄くショックなんだけど。
そんな選択を迫られるようなゲームって、あまりに残酷ではないだろうか。
子供にそんな選択をさせるなよな。
ある意味イジメだぞ。
俺がドキドキしながらみんなの言葉を待っていると、最初に口を開けたのは、さっちゃんだった。
「最初から、こうなる事を分かっていてパーティ組んだんだから、当然、協力するに決まってるじゃない」
さっちゃんの言う事は、確かにその通りだけれど、俺はなんだか嬉しかった。
ちょっとみんなに釘を刺すような言い方は気になるが、俺の心を分かって、きっとそう言ってくれているのだろうから。
俺がそう思ってさっちゃんを見ると、さっちゃんは少し赤くなっていた。
俺はそんなさっちゃんを見て、久しぶりにクラっときた。
そしてそんなさっちゃんの言葉を聞いて、みんなの腹は決まったようだ。
「私はね。最初からそうするつもりだったと思うの。だってね、友達だもの。なんだかんだと十カ月近く頑張ってきたのは、やっぱり仲間だからだと思うの。」
南が久しぶりに喋った。
だけど南、「思うの」は君の口癖なのか、それとも設定なのかは分からないが、それくらいは確信を持って言おうよ。
「僕は最初から、最後まで一緒に頑張るつもりだったお。当然だお」
佐藤は相変わらず、何を言っているのか理解できないが、トイレなら階段下りてすぐ左だぞ。
「一千万円貰ったら、私の席、一番後ろに戻してもいいよね」
高橋・・・いいんじゃないかな?・・・
別に一千万円貰えなくても、問題無いと思うぞ。
「仕方あるまい。みんなが協力するなら、俺も協力しようじゃないか」
いや吉田、お前だけはいなくても大丈夫だ。
むしろ陽菜ちゃんあたりとトレードできたら、どれほどこのパーティが強くなるか。
とは言え、俺に残酷な判決が言い渡されなくて助かった。
俺のハートは、強化ガラスよりも脆いのだから。
「ありがとうみんな。一千万円もらえたら、みんなにおいしん棒を一本ずつ奢るぜ」
俺がそう言って親指を立てると、みんなは一層やる気が出たようで、親指を下に向けて立てていた。
いやぁ~良かった良かった。




