三十一回目
気がつけば、いつの間にか夏休みも終わり、冬休みも終わりに近づいていた。
いったいいつ夏休みがあったのか、俺には実感がなかったが、今はもう一月なのだから、間違いなくそういう事になるのだろう。
このゲームがリリースされて、既に一年が経過している。
俺は二カ月後から始めたが、なんとか戦えるレベルにはなれたようだ。
と言うわけで、そろそろラスボスに迫る勇者や、七つの宝具を手に入れる者もぽつぽつと出始めていた。
七つの宝具の内、一つでも持つ者は、ゲーム内で発表される。
そして、宝具を持つ者、又はその人が所属するパーティのメンバーは、宝具を持つ者の居場所が分かるようになっていた。
そんな事、「プライバシーの侵害じゃねぇか!」なんて思うわけだが、ゲーム規約を読みなおすと、居場所を皆に教える事もあると、しっかりと記載されていた。
となると、居場所を知られたくない人は、ラスボスを探しだして、それを倒す事を目標にした方がよさそうだ。
でも俺は、別に居場所がばれても、特に困る事など何もない気がする。
宝具を持っているプレイヤは、「やんのかこらモード」で戦いを挑まれ、負けると宝具を一つ奪われる事になっているが、正直危ないのは、家から学校の最寄り駅までの道のりと、家から交番までの道のりくらいだ。
朝っぱらから戦いを挑んで来る奴がいるとも思えないし、交番はすぐ近所だ。
まあ問題はないだろう。
それにそんな心配は、ゲットしてから考えろってね。
そんな事を考えていたら、その日の夜のマラソンで、偶々すれ違った勇者が宝具持ちだったみたいで、俺は期せずして宝具持ちの勇者になってしまっていた。
宝具は、パーティでゲットした場合、一番レベルの高い者が貰える事になっていた。
当然そんな事は知らなかったので、俺は帰ってから確認した時にビックリしたわけだ。
ただ、嬉しさはあまりなかった。
手に入れた宝具が、光系の宝具だったからだ。
正に宝の持ち腐れ。
闇系なら、装備して使えたのに、これでは宝具争いには不利だ。
なんせ宝具は、バカみたいに強いからね。
それを知ったのは、今しがたなわけだけど。
俺は光の宝具は使わないので、持って歩く意味もない。
よって次の日早々、倉庫にしまっておいた。
だけど、勇者同士の戦闘に負ければ、それはどこにあっても、強制的に持っていかれる。
一回の戦いで持っていかれるのは、どれか一つ。
順番は、倉庫内、手持ちアイテム、装備アイテムの順番だ。
要するに、いらない宝具から取られていくという親切設定だ。
とにかく、俺にとってはいよいよ、このゲームの本番が始まったという事だ。
まずは宝具を持っている人を確認するマップを開いて、近所や通学路、そして学校の近くに、宝具持ちの勇者がいないかどうか調べる。
どうやら今のところ、この辺りにはいないようだ。
とりあえず助かったと言うべきか、それとも獲物がいなかったと残念がるべきか。
何も分からないまま、俺は今まで通りの毎日を過ごすのだった。




