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リア充RPG  作者: 秋華(秋山 華道)
29/44

二十九回目

 今日も、俺がいつもと同じように交番に行くと、ジャージを着た人が集合していた。

 気のせいかもしれないが、その数は三倍くらいに増えているように見える。

 俺が目をこすって、理解できない風を装っていると、安藤がいつものように、気持ち悪い事を言いながら近寄ってきた。

「さかもときゅ~ん。こんばんワン!」

 言葉だけではなく、その動作も気持ちが悪い。

 手を軽く握って頬の横辺りにもっていき、犬のマネをしている。

 つかそれ、猫マネじゃねえのかよ!

 とにかくこれはマジで兵器だぞコノヤロー。

 俺は、右手で口を押さえ嘔吐を我慢し、折れそうになる膝を左手で支えて、なんとか死亡フラグを回避した。

「こ、こんばんは」

 こんな時でも、俺は挨拶を返す。

 挨拶は大切だからな。

 すると集まっていたジャージー軍団が、一斉に俺に対して、「こんばんは!」と挨拶してきた。

 その迫力に、俺は一瞬たじろいだが、勇者がこんな挨拶に負けてはいられない。

 俺は必死に、ダンディな勇者を演じた。

 ふぅ~、なんとかこれで、この辺りのナンバーワン勇者の体裁は保たれただろう。

 それはそうと、このジャージー軍団は、いったいなんなんだろうか。

 きっと俺が疑問に思えば、安藤が説明してくれるはずだ。

 俺は安藤に視線を送る。

 すると安藤は、頬を赤く染めた。

「って、なんでやねん!」

 しまった!

 ついうっかりツッコミをいれてしまった。

 くそっ、最近なんだか、からかわれている気がする。

 俺は屈辱に思えて、心の中で爪を噛んだ。

 すると、ジャージー軍団の一人が、俺に話しかけてきた。

「あの~僕ら、近所の「走れ走れ運動」の者なんですが、こちらでリア充なリアの勇者がいると聞いて、一緒に走れたらと思ってきたんですが・・・」

 ほう~、此処にリア充なリアの勇者がいるとな?

 一体誰の事だろうか?

「そ、そうなんっすか」

 俺はどういう反応をすればいいのか分からず、目を泳がせた。

 助けを求めて、俺は陽菜ちゃんやキムタクに視線をロックオンする。

 すると何故か、陽菜ちゃんやキムタクまで、俺に注目していた。

「リア充の坂本く~ん。そういうわけだから、一緒に走ってあげてはくれまいか」

 安藤、またお前の差し金か!

 だいたい俺はリア充じゃないぞ?

 あれ?彼女がいる時点でリア充か?

 でも俺の場合、ぶっちゃけ腐れ縁で、彼女と言えるかどうかも微妙な女なのだが。

 まあ、そんな事を考えていても仕方がない。

 このジャージー軍団が俺に向ける視線は、明らかに何か期待している。

 もしかして、こいつらも、リアの勇者という事か。

 俺はスマフォを取りだし、カメラレンズをジャージー軍団に向けた。

 俺、陽菜ちゃん、そして他に勇者は四人いた。

 これは明らかに、パーティ組んで走りましょうって事だな。

 でもそれは、俺にとっても都合が良いだろう。

 なんせこの四人を、敵に回さなくて済むのだから。

「じゃあ、仲間登録しますか?」

 俺がそう言うと、ジャージー軍団が集まってきて、みんなと仲間登録、そしてパーティ登録をする事になった。

 登録を済ませ、俺たちは良い感じに一体感を楽しんでいたら、安藤がいきなり、自分のスマフォをつきだしてきた。

 見ると安藤も、リアを始めた事が分かった。

 おいおい、警察官が勤務中に、ゲームしていいのかよ。

 でも俺は、そういう警察官の方が好きだ。

 仕方がないから、俺は安藤とも、仲間登録をしてあげた。

 すると安藤は、大喜びで涙を流しながら、暴言をはいた。

「坂本く~ん。ボクちん弱いから、怖い人が来たら守ってね」

 おいおい、警察官が、町の一学生捕まえて、「守ってね」はないだろう。

 ほらみろ、道行く犬が、凄く白い目で安藤を見ているぞ?

 あっちのおばちゃんなんて、いきなり着ている服を抜きだしたじゃないか。

 えっ?なんで?

 ああ、服屋で試着をしようとしていただけか。

 ビックリさせるなよおばちゃん。

 まあそんなハプニングもあったが、俺たちは連れ立って、夜の町へと走り出した。

 走りだして間もなく、「走れ走れ運動」の、リーダーっぽい兄ちゃんが話しかけてきた。

「結構速いペースで走るんだね。こんなんで何時間も走れるの?」

 俺はぶっちゃけ、今日はペースを少し落としていた。

 これくらいなら、キムタクも陽菜ちゃんも楽勝だろう。

 だから俺は、素直にそれを伝えた。

「いつもよりも遅いっすよ。キムタク・・・あのじいさんも、小学生の陽菜ちゃんも、もっと速くても大丈夫っすよ」

 俺の言葉に、兄ちゃんは少し驚いていたが、すぐに

「じゃあ、いつものペースで走ってよ」

 なんて言ってきた。

 気を使って、スピードを落とす必要はなかったようだ。

 俺はペースを、いつものペースに戻した。

 なんとなく、これくらいで走っている方が調子が出てくる。

 そう思っているのは、俺だけではなかった。

「お兄ちゃん、今日もいっぱい「ザコモン」倒せそうだねぇ」

 陽菜ちゃんは、速く走れて嬉しいようだ。

 でも、陽菜ちゃんの言う言葉は、そろそろ違うかもしれないと思った。

「ザコモン」は、プレイヤやパーティのレベルよって、強さが変わってくる。

 これだけの面子がそろったのだから、中ボス級のモンスターが、いっぱい出てくるに違いない。

 俺は強敵を次々と打ち破る「俺」を想像し、ノリノリで夜の町を疾走した。

 夜の九時を過ぎた頃、「走れ走れ運動」の方々は、かなり疲れているようで、ついてくるのがやっとになっていた。

 俺はもちろん、キムタクも陽菜ちゃんも、そしてお姉さんも、疲れた様子は無い。

 そういえば、最初はみんな、ついて来れなかったかな。

 俺、もしかして、めちゃくちゃ体力ついてないか?

 そんな事を考えていると、兄ちゃんが話しかけてきた。

「君、陸上部なのかい?この体力、凄すぎるよ」

 いや、それを言うなら、キムタクと陽菜ちゃんの方が凄いでしょ。

 キムタクはともかく、陽菜ちゃんはきっと、将来オリンピック選手になるのだろうと、俺は確信していた。

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