二十三回目
俺は夕食を済ませた後、今日もいつものように外に出かけた。
最近は、体力があり余っていたので、レベル上げを早くするために、競歩どころか、ジャージに着替えて、夜の町をランニングしていた。
この方が、近所のおばちゃんに不審な目で見られる事も無いし、一石二鳥だろう。
でも不本意ながら、どんどん体力がついてきてしまっている。
俺は別にスポーツ選手を目指しているわけじゃないんだから、ヒラメ筋が引き締まって発達すると、セクシーな美しい見た目が、崩れてしまうじゃないか。
そんな事を考えながら、俺はいつものように交番を訪れた。
すると安藤が、千年の想い人に会ったかのような爽やかな笑顔で、俺を迎えてくれる。
「おお~坂本く~ん。良いところに来たよぉ~」
なんだこの甘ったるい喋り方は。
ぶっちゃけ気持ち悪くて吐きそうなのですが。
そう思って俺が少し下を向くと、安藤の制服の袖をつかんで、じっとこちらを見ている女の子がいた。
確かこの子も、勇者だったはずだが、どうしたのだろうか。
安藤に視線を移すと、安藤は俺の疑問を悟ったようで、何やら話し始めた。
「坂本くん、この子が前に話した、「人殺しのナイフ」を手に入れて大喜びしていた、陽菜ちゃん九歳だ」
ほう~、話には聞いていたが、この子が陽菜ちゃんか。
やたらと可愛い子だな。
この可愛さからは、「人殺しのナイフ」なんて、全くイメージできない。
「今は違う武器だよ。今は「名刀、夜の女」を使っているよ」
う~む、確かに陽菜ちゃんは夜出歩く女の子だから、間違ってはいないけれど、君にはそんな名前の武器を使ってほしくはないよ。
「そ、そうなんだ。お、俺は「切れる中二病ソード」を使っているよ」
俺がそう言うと、陽菜ちゃんは満面の笑みをうかべた。
「わぁ~、じゃあ、同じ闇属性だねぇ」
なんと、陽菜ちゃんとは同じ闇属性で、ナカーマだったようだ。
何処かのブログに、プレイヤの、光、闇、無属性による比率が書いてあった。
無属性が半数で、光属性が三十五パーセント、そして闇が十五パーセントらしい。
ぶっちゃけ、闇属性ってのは、光属性よりも人気がなく数が少ない。
理由は、回復系魔法のほとんどが、光属性だからだ。
まあ俺のパーティの奴らは、回復してる暇があったら攻撃しろって感じの連中ばかりだから、回復系が使えるのは、佐藤とさっちゃんだけだった気がする。
それも光属性の回復じゃなく、水属性と風属性だった気が。
とにかく、俺のパーティはうまい具合に、息の合うメンバーが集まったって事だ。
「というわけで坂本くん、陽菜ちゃんとパーティを組んで、一緒に冒険してあげてくれないかな。ご両親の帰りが遅くて、寂しいらしいんだよ」
なんですと!
確かに、闇属性は少ないから、パーティメンバーを探すのが大変だけれど、俺がこの子を連れて夜歩いていたら、世間の目が怖いだろうが。
つか、無属性とパーティ組めば良いじゃねぇか。
「お兄ちゃん、よろしく」
えー!
陽菜ちゃん、メッサ嬉しそうだよ。
両親の帰りが遅くて寂しいのは分かるが、果たしてこんな子を、夜つれて歩いて良いのだろうか。
いや、走っている俺に、ついてくる事ができるのだろうか。
だいたい俺は、ちんたら歩いて冒険するほど、気は長くないのだぞ。
そう思って陽菜ちゃんの服装をよく見ると、胸の辺りに、「三の二、藤山」と書かれてあった。
体操服って、走る気満々じゃねぇかよ!
此処まで準備されていては仕方あるまい。
「うん、よろしくね」
俺がそう言うと、陽菜ちゃんは嬉しそうにスマフォをポケットから取りだした。
まあ、良いか。
地元には仲間もいなかったし、ここは素直に喜ぼう。
俺もスマフォを取りだして、陽菜ちゃんと仲間登録とパーティ登録を済ませた。
陽菜ちゃんのステータス画面が表示された。
それを見ると、装備に「悪魔の羽」があった。
流石に、これだけ目立つ装備なら、スマフォを通してキャラを見ていれば、すぐに気がつくような羽だったが、俺はスマフォは基本ポケットの中だから、陽菜ちゃんが「悪魔の羽」をつけている事は知らなかった。
でもこれで、「悪魔の羽」が存在する事は分かった。
我がパーティ「俺たち」のトレードが、上手くいけば良いなと思った。
しかし、小学三年生が夜出歩くのを容認している警察官と親って、どうなのよ。
俺は、保護者ってわけなのかな。
「じゃあ、行くか!」
俺がそう言って走り出すと、陽菜ちゃんも「おー!」と手をつきあげて、俺の後をついて走ってきた。
流石に本気で走るとついて来れないので、俺は少しだけゆっくりと走った。
此処だけの話、一人で走るよりは、ずっと楽しかった気がした。




