二十一回目
戦いは、だんだんとヒートアップしてきていた。
街では他校との抗争が絶えない。
「てめぇ何処の学校だよ」と言わんばかりの迫力で、無言ですれ違う。
パーティは最高六人までで、俺たちは六人だから、そう簡単には負けない。
だから他のパーティは、体裁を気にしている場合ではないようで、サラリーマンのおっさん連中が、一人の小さな女の子勇者に声をかけている姿も見かける。
誰でもパーティにいれて、六人にして我々に挑んできたいのだろう。
でもおっさん、小学生取り囲んで、
「ねぇ、お譲ちゃん。俺たちのマヨネーズに入らない?」
とか、怖すぎるっての。
なんだよそのパーティのネーミングセンス。
制作会社に合わせてるのかっての。
まあ俺たちのパーティ名も、人に言える名前じゃないけどな。
ってなんだっけかな?
そうそう、「俺たち」だった。
でもまだ分かるだけマシだろう。
俺が中心人物みたいだし。
さて、しかしこのままあの可哀相な小学生を、見て見ぬふりもできまい。
私は一気にそのサラリーマンとの距離を詰め、二メートル以内に入った。
小学生の女の子には近づかないように、もちろん気をつけて。
グッバイリーマン。
社会人は、しっかり国の借金返す為に働いてくれ。
俺は心の中で適当な決め台詞をはいて、仲間を引き連れ、新たな獲物を求めて、再び街と言う名のジャングルに、身を投じていった。
再び街を歩いていると、町中チェック担当の高橋が、いきなり奇声をあげた。
「げぼげぼ!」
ん~どう反応していいか困るな。
リアクションとりにくいし、中途半端な驚きはやめてほしい。
俺がそう思っていると、さっちゃんが高橋の耳元で、何やら言っているようだった。
まあだいたい何を言っているか分かるが、高橋にそんな事言っちゃ駄目だろ。
俺は覚悟した。
直後高橋は言った。
「やり直しね」
身構える俺と仲間たち。
静かな時が流れる中、高橋は叫んだ。
「ぎょえぇぇぇぇ!道の向こう側に、男のピーみたいなモンスターがいるぅぅぅ~」
流石高橋、お前の雄姿は、きっとあそこで驚いているおばちゃんが忘れないだろう。
高橋のリアクションが放送コードに引っかかるとは言え、ちょっとそれは見てみたい気もする。
俺はスマフォをとりだし、辺りを見回してみた。
いた、確かにいた。
上向きの物は、何処かの旅行先なんかで見た事もあったが、この傾斜角二十度くらいのビジュアルは、正に絶妙だな。
これはなかなか手ごわいモンスターと見た。
俺はみんなを振り返ると、みんなもそのモンスターを見ていた。
おいおい、此処は振り返ると、みんなも心は一緒で、モンスターを倒そうって盛り上がるところだろうが。
まあいい、そのうち見るのも飽きるだろう。
・・・・・・っておい!
こいつら、いったい何を考えているんだ?
佐藤なんて男の癖に、今にもよだれをたらしそうだし。
つか俺の彼女はどうした?
良かった、さっちゃんはもう見ていなかった。
「直也くん、私は小さくても大丈夫だから」
ってえー!
ま、まあ、大丈夫と言っているのだから、此処は素直に受け止めておこう。
さて、それから三分が過ぎて、ようやくみんなは戦闘モードへと変わっていった。
モンスターの名前は、「ピサの斜々塔」だって。
なんだかピザのシシトウみたいだな。
シシトウが入っているピザが、存在するのかどうかは分からないが。
俺たちは、道路を向こう側に渡ると、モンスターのいる場所へまっすぐ歩く。
正直あんなモンスターと戦っている姿は想像できないが、他の奴らには、きっと想像できるのだろうな。
戦いに挑む、みんなの顔が怖かった。
そして俺たちは、モンスターに挑んでいった。
だが、「ピサの斜々塔」はやたらと強くて、ギリギリ、負けた。
最近ずっと勝っていたので、今日はなんだかシチューが食べたくなった。
何故そう思ったのか、俺にも、そして誰にも分からなかった。
あー!シチューくいてぇ!




