二十回目
今日もみんなで、パーティを組んで街へ繰り出していた。
だが、今日の目的は、冒険と言う名の徘徊ではない。
前々から観たかった映画の話をしたら、みんなも観たかったらしく、それならと、一緒に観に行くという事になったわけだ。
チケットを買って、館内に入る。
やっぱ映画は良いねぇ。
この大スクリーンで観る、迫力ある映像。
このスクリーンでシューティングゲームとかできたら、さぞ爽快だろう。
俺たちは適当な席に座ると、スマフォでコッソリ館内を確認した。
どうやら俺たち以外に、勇者はいないようだった。
それもそのはず、その理由はすぐに明らかになった。
「館内では、携帯電話の電源をお切りくださいますよう、ご協力お願い申し上げます」
そんな館内放送が聞こえてきた。
これはピンチだ。
電源を切ったら、俺たちの冒険は此処で終わってしまう。
すると吉田が、少し笑ってから言った。
「ふっ!俺たちに、誰かからメールや電話がくる事はない。安心しろ!」
確かに言われてみればそうだ。
俺のスマフォに電話なんてまずかかってこないし、メールがくるのもさっちゃんだけだ。
俺たちは安心して、映画を見る事にした。
しかし、俺たちの生存を阻むものは、電話やメールだけではなかった。
映画を楽しく見ていると、突然佐藤が言いだした。
「食べ過ぎてお腹いたいお。トイレ行きたいから、みんなついてきて欲しいお」
俺にはいったい何を言っているのか分からなかったが、佐藤の悲壮感漂う顔を見て判断するところによると、要するに死にそうだって事か。
「安心しろ。館内に敵はいない。パーティ外れて一人で行って来い」
確かに吉田の言う通りだ。
館内には勇者どころか、モンスターもいなかった。
きっと問題無いだろう。
「うん。わかったお」
何を言っているのか分からないが、どうやら納得して、佐藤は一人でトイレに向かった。
しばらくして、佐藤が帰ってきた。
だがなんだろうか。
どうも顔色が良くない。
それに気がついた吉田が、佐藤に尋ねた。
「どうした?もらしたか?」
佐藤は静かに首を振った。
みんな悟っていた。
きっと佐藤は死んだのだろうと。
どうやら、敵は二人組のプレイヤだったそうだ。
映画の途中で出てくるプレイヤを狙って、二人がかりで倒す奴ららしい。
それが分かったのは、かなり後の事だったが、そんなわけで佐藤には、悲しい映画鑑賞となった。




