十九回目
今日はみんなで、パーティを組んで街を歩いていた。
当然「やんのかこらモード」だ。
とにかく道行く勇者たちを、六人で袋叩きにする。
一人でプレイしている人には悪いが、これもまた運命と思って、諦めてくれたまえ。
多くの勇者をボコった後、俺たちはいつもの交番にやってきた。
とりあえずいつものように、いらないアイテムやモンスターを売ってゆく。
すると、別の勇者の会話が聞こえてきた。
「南武デパートの売り場に、宝箱があるらしいぞ。だけどその前に強いモンスターがいて、宝箱を開ける事ができないんだって」
俺たちは顔を見合わせて、ニヤリと笑った。
これは良い情報を得た。
俺たちは早速、南武デパートへと向かった。
さて、デパートに来たは良いが、どこの売り場に有るのか、俺たちには分からない。
となると、勇者が集まっている所を探すか、それともスマフォを通して見ながら、宝箱を探す事になる。
俺たちは無言でジャンケンをした。
負けたのは俺だった。
仕方なくスマフォを取りだすと、スマフォのカメラを通して、デパートの中を見渡した。
特に一階フロアには、何もなさそうだ。
一匹だけモンスターがいたが、誰かが冗談でリリースした、弱そうな奴だけだった。
俺がエスカレーターを指差すと、みんなは無言で頷き、俺についてくる。
なんだかまるで、隠密行動をしている軍隊のようだ。
俺はウキウキとしながら、エスカレーターに乗ると、身を隠すように左側へと寄る。
右側を空けるこの暗黙のルールも、今日の俺には楽しむ為のスパイスだ。
俺に続いて、さっちゃん、南、高橋は、当然ノリが良いから同じようにしてくれる。
しかし佐藤、そして最後尾の吉田は、普通にエスカレーターに乗っていた。
まったく、せっかくの気分が台無しだよ。
まあいい、四人の軍隊だと思えば、俺はまだまだやれる。
二階につくと、サッと柱の陰にかくれて、俺はスマフォで辺りを見渡した。
どうやらこの階にも、宝箱は無さそうだ。
同じようにして、三階、四階へと上がってゆく。
そして七階についた時、人だかりの向こうにモンスターの影をとらえた。
俺はさっちゃんにテレパシーを送る。
「直也くんが発見したようだよぉ。場所は、あの人だかりの向こう」
さっちゃんがそう言うと、ようやく吉田が前にでてきた。
「よーっし!俺たちがその獲物、ゲットしてやるぜ」
吉田を先頭に、人だかりに向かって、俺たちは進む。
俺は一応、スマフォを通してモンスターを確認している。
見えるのは頭だけだが、その大きさから強さがうかがえる。
モンスターはちょっとしたボスのようで、名前は「セクシー少尉」だった。
なんで少尉やねん。
とは言え士官だから、きっとそこそこ強いに違いない。
これが倒せるかどうかで、俺たちの今の強さが測れるだろう。
吉田が人ごみをかき分けて進む。
さあ、もうすぐモンスターの全容が・・・
と思ったら、吉田がいきなり引き返してきた。
「どうしたの吉田?」
高橋が冷たい視線で吉田に尋ねる。
「ヤバいぞ高橋、此処は俺が踏み込める場所じゃない」
吉田の言葉に、俺は人ごみをかき分けて、スマフォ越しにその場所を見た。
見るとまず、「セクシー少尉」は下着姿で、正にセクシーなモンスターだった。
ムチを持っていて、どうやらこれが武器のようだ。
そしてその後には、宝箱が見えるのだが・・・
宝箱のある場所は、女性下着売り場だった。
そして俺は、その売り場を、スマフォのカメラで覗いているわけで、一般の人から見れば、きっと俺はただの変態に見えるだろう。
って、先に言えよ吉田。
俺は恥ずかしくなって、スマフォをポケットにしまった。
しかし此処に入って行くのは、どうもはばかられる。
とは言え、目の前に強大な敵がいるのに、みすみす見逃すのも、男としてどうかと思う。
俺は吉田と佐藤の腕をつかみ、引きずるように前進した。
後ろには当然、他の女子三名もついてくる。
さあ、このまま一気に宝箱まで行くぜ。
下着売り場の奥深くまできても、俺のスマフォは震えなかった。
やったぜ俺!
俺はスマフォをポケットから取り出すと、高々と掲げてみせた。
「ねぇ直也くん。パーティは十メートル以内にいれば良いのだから、女の子だけで入ってきても良かったんだよ?」
ガーン!
しまった、謀ったな制作会社!
下着売り場に「セクシー少尉」なんて、絶対そうに違いない。
俺はがっくりと肩を落とし、それでもそそくさと下着売り場から退散した。
そんな俺に、同じようにそそくさとみんなはついてきていた。
とりあえず、スーパーの階段まで逃げると、踊り場で俺たちは、ゲットしたアイテムを確認した。
まず、「セクシー少尉」は
「頼む!俺にくれ!どうしても欲しいんだ!」
と言うので、吉田に預けた。
まったく、エロい奴め。
次に、「セクシー少尉」が落としたアイテムは、「ベロのムチ」だった。
おいー!
なんかツッコミどころがあるんだが、ツッコミいれていいのか?
まあ著作権の問題とかもあるから、此処は一応、ツッコミは入れないでおいておこう。
ホントこの制作会社は、ギリギリのところを攻める会社だな。
とにかく、「ベロのムチ」は風属性だったので、風属性持ちのさっちゃんが貰う事になった。
で、最後は宝箱からゲットしたアイテムだが、流石に下着売り場のアイテムだ。
なんともまあセクシーなビキニ「セクシービーキニ」だった。
これもちょっとツッコミ入れたくなるネーミングだが、そろそろ飽きてきたので、俺はスルーするー・・・
はい、ありがとう。
そんなわけで、「セクシービーキニ」を男が着るわけにもいかず、高橋が貰う事になった。
それにしても、今日の戦いは辛く苦しいものだった。
だが俺は負けない。
今まで、学校の女子に白い目で見られ、誘拐犯と間違えられ、今日も変態と思われただろうが、それらを無駄にしない為にも、俺たちには、前に進むしか道はないのだから。
うまくまとめて、今日の冒険は終了した。




