十七回目
荒川先輩を倒してからも、しばらくは戦いが続いたが、力の差は徐々に開き、今では我々の方が確実に強くなっていた。
相手は受験生で、ゲームをする時間が少ない事、更にこちらは、親の買い物を手伝って、良いアイテムを常に集めている事が勝因だろう。
だから学校の後、家に帰ってからの冒険という名の徘徊も、なんだか最近楽しくなってきていた。
まずは情報を得る為に、交番に向かう。
安藤と一日一回喋らないと、どうも落ち着かない。
交番につくと、いつものように挨拶をかわす。
「うぃ~」
「おっ、きたな。今日も良い情報があるぞ」
俺が挨拶をすると、安藤は想い人に会ったかのような、爽やかな笑顔をした。
このおっさん、彼女とかいるのかな。
まさかゲイじゃないだろうな。
俺はちょっとだけ、体中に恐怖の痺れが走ったのを感じた。
「商店街の裏道あるだろ」
「ああ、あの人気の少ない」
商店街の裏道と言えば、人通りが少なくて、「痴漢にご注意」みたいな看板が出ている、ちょっと薄暗い感じのする道だ。
その道がどうかしたのだろうか。
「そうそう。その道にな、「ウンコ魔人」と、「ションベン女王」が出るらしいぞ」
いや、そんな怪しいのがでるんだったら、警察が捕まえろよ。
嬉しそうに笑顔で言う事じゃないだろ。
ほらみろ、通りすがりの幼稚園児が、怖がっているじゃないか。
つか安藤も、リアやれば良いのに。
アイテムショップが本拠地とか、なんか格好良いじゃん。
リアルの武器も持っているし、リアルとバーチャル、両方で世界を守る勇者になれよ。
まあでも、安藤の言うモンスターは、ちょっと倒したいな。
両方のモンスターを倒せば、なんか良いアイテムが貰えるとか、噂に聞くし。
俺は軽く安藤に手を挙げると、商店街の裏道へと向かった。
するとさっき、安藤の話に怖がっていた幼稚園児が、裏道の入り口で立ちつくしていた。
おいおい、マジで怖がっているじゃねぇか。
可哀相に。
俺は仕方なく話しかけた。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんがやっつけてやるから」
俺がそう言うと、幼稚園児は俺の手をつかんで、ひっついてきた。
ふむ、これは負けられないな。
俺はドキドキしながら、幼稚園児と共に、モンスターに立ち向かう。
なんだかそんな勇者、想像するとあり得ないが、まあこんな日もあっていいだろう。
俺はスマフォを取りだし、カメラ越しに道を見る。
そこには、しょぼい魔人と、しょっぱい女王が映されていた。
なるほど、ウンコとションベンの意味は、そういう意味だったのね。
どんなビジュアルなのか、一瞬期待しちまっていたぞ。
俺は確認を終え、スマフォをポケットにしまおうとした。
だけど、モンスターのビジュアルの上に、いつもは名前だけしか表示されていないはずなのに、それ以外に何かが書いてあったような気がして、もう一度確認してみた。
すると、この二体のモンスターには、ペアモンスターと表示されていた。
それは、両方倒さないとアイテムもモンスターも貰えない奴の事だ。
なるほど、誰も倒せずに残っているはずだ。
俺はゆっくりと、まずは「ウンコ魔人」に近づいていった。
人通りの少ない道なので、俺はスマフォを見ながら進む。
戦闘が始まった。
すぐに結果が出る。
ふぅ~、まずは勝利。
意外と簡単に倒せたと思ったら、「ウンコ魔人」は地属性だったようだ。
となると、「ションベン女王」は、きっと水属性か。
俺はそう予想し、その場で止まって、「うさ耳」を外す。
これで炎の魔法の威力は落ちるが、攻撃は主に「切れる中二病ソード」だから、大した問題はないだろう。
それよりも水属性だったら相性悪いし、無属性の方が良い。
俺は再び、幼稚園児の手を引いて、前に進んだ。
さあ、勝てるかどうか・・・
かろうじて、俺は勝利していた。
危なかった。
やはり予想通り、水属性だった。
まったく、嫌らしいペアだな。
どちらかに勝っても、もう一体は倒せないようにしていたわけだ。
俺は、横で不安そうな顔をしている幼稚園児に、スマフォの画面を見せてあげた。
「ほら、「ウンコ魔人」と「ションベン女王」は、お兄ちゃんが捕まえたから、もう大丈夫だよ」
すると幼稚園児は安心したようで、凄く喜んでいた。
「ウンコ、ウンコー!ションベン、ションベンー!」
いや、そんな大声で叫ばれると、お兄ちゃん恥ずかしいんだけど。
恥ずかしくてキョロキョロしていると、どうやら俺は挙動不審者と思われたようだ。
「誘拐よー!美沙子を返してー!」
えー!
俺、誘拐犯と思われてる?
「ママー!」
どうやら幼稚園児のお母さんのようだけど、俺、誘拐犯じゃなくて、勇者なんだけど。
近所の家から、人が出てきた。
おいおい、勘弁してくれよ。
結局、美沙子ちゃんの話と、警察官安藤のおかげで、俺の無実は証明された。
お母さんからは、「すみません」とか謝られたけれど、俺は別に怒っていないし、二体のモンスターをゲットして気分が良かったので、笑顔で美沙子ちゃんとバイバイをした。
その後俺は、ゲットしたアイテムをチェックした。
するとそのアイテムは、なんと!「闇の黒タイツ」だった・・・
いや、なんと言って良いのか。
効果としては、正直凄くうれしい。
俺に闇属性を付与する、超欲しかった効果がついている。
しかしこれを着て、勇者を名乗れと言うのか?
とりあえず着てみた。
防御力も何故か意外にあって、ビジュアル以外は最高なのに。
嫌がらせだ。
これは絶対に、ゲーム制作会社の嫌がらせだ。
だけど俺は、背に腹は代えられないと考え、仕方なくその装備をつける事にした。
まあ特にピンチにあっているわけではないから、背に腹を代えなくても、別にいいんだけどね。
とりあえず俺は、近くのポストに行って、今までつけていた装備は売らずに、倉庫に保存しておいた。
改めてステータス画面を見ると、そこに映る俺の分身は、とても勇者には見えず、ハッキリ言って変態そのものだった。




