十回目
今日は、彼女のさっちゃんから、強力なモンスターを一匹、譲り受けていた。
くっくっくっ、このモンスターを、数学の授業中にリリースしてやるぜ。
奴の命運もこれで尽きるだろう。
教室に放たれたモンスターから、奴のキャラレベルは、だいたい予想している。
後は相性さえ悪くなければ、きっとイチコロだろう。
数学の授業が始まった。
俺は早速、机の下に隠したスマフォを操作して、モンスターを放った。
さあ、どうだ・・・
スマフォのカメラで確認しなければ、モンスターがどうなったのかすらわからねぇ。
結果は、授業が終わるまで待つしかないか。
と思っていたら、先生の顔色がどうも良くない。
これはきっと、先公のキャラは死んじゃったようだね。
教卓の下あたりを見つめて、凄くガッカリしているよ。
ざまあみろだ。
これで悪は去った。
しかし、いつも先生が放っているモンスターは、次の日にはいなかった事を考えると、誰かが退治しているって事だよな。
誰が退治しているんだろう。
俺は疑問に思い、三秒くらいは考えていた。
だけどすぐに数学の先公が、俺を当てて、問題を解くように言ってきた。
「坂本、この問題解け。分からなくてもいいから解け」
なんだか先生が怖かった。
おいおい、人にあたってるんじゃねぇよ。
だいたい教師が、授業中にゲームしてて良いのかよ。
教育委員会に訴えてやろうか。
なんて一瞬思ったが、これは俺と先生の戦いだ。
この宿命の対決っぽい雰囲気に、俺はなんだか楽しくなってきていた。
やってやる、真っ向勝負でな。
俺は、お互いが全ての力をぶつけあえる戦場を、期待していた。
俺は寝たフリをした。
この先生の言う事は、ばっくれても大丈夫だ。
なんせこれは、先生と俺のゲームなのだから。
さあ先生よ、廊下にでも立たせてみろ。
その時点で、俺の勝ちだ。
後ろのドアから出た所なら、ギリギリパーティは維持できるのだよ。
「坂本、廊下に立ってろ!」
勝った!
俺の勝ちだ!
そう思ったら、先公がニヤリと笑った。
「バケツ持ってな」
なんだと!
バケツとは、これは不覚だった。
バケツは、共用洗面所に行かなければ、手に入れる事ができない。
くそっ、もう手はないものだろうか。
って、先公のキャラ死んでるんだし、もうモンスターをリリースできないじゃないか。
俺は意気揚々と教室から出て行った。
そしてバケツを持って廊下に立った。
あれ?
だったら問題解いた方が、良かったんじゃね?
今日はなんとか生き残れたが、俺は負けた気分だった。




